2019年も残すところあとわずかとなった。本特集では新たな年のはじまりを前に、金融業界の各テーマごとに、この一年を振り返っていきたい。

第4回のテーマは「アメリカ株」。マネックス証券の岡元兵八郎氏に寄稿いただいた内容をお届けする。

岡元兵八郎
岡元兵八郎
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー。上智大学を卒業後、ソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)入社、東京、ニューヨーク本社勤務を含め26年間同社にて一貫して外国株式のマーケティング、外国株式関連商品業務に携わり、 外国株式部の上級管理職として機関投資家相手の外国株式ビジネスの拡大に努める。その後、SMBC日興証券株式会社で、エクイティ部、投資情報部にて米国株式市場・企業情報の情報収集、分析、顧客向け資料作成業務の責任者として、個人投資家向けに米国株式投資の啓蒙活動を行うなど米国株式仲介事業の拡大に貢献。 著書:『日本人が知らない海外投資の儲け方』(ダイヤモンド社) Twitter:@heihachiro888

史上最高値を更新!米国市場好調の背景

Stuart Monk/ shutterstock, ZUU online
(画像=Stuart Monk/ shutterstock, ZUU online)

2019年、米国株式市場を代表するS&P500株価指数は年初から28.5%上昇し、3221と史上最高値を更新しました。(12月20日現在)。

この背景には、米国経済の7割を占める個人消費の堅調さや来年の企業業績の回復に対する期待感があったと思います。

米国の失業率は50年来の低レベルですし、12月頭には民間セクターの8割を占める平均時給が前年同期比で3.8%上昇していると発表されています。FRB(連邦準備理事会)による3回にわたる保険的な利下げのお陰で個人の住宅ローンやカードローンの金利負担も減っています。金利が下がったこともあり、今回発表された時給の上昇率は1972年来初めて住宅ローンの金利を超えたそうで、アメリカ人の家計を助けています。

ミシガン大学の消費者マインド指数も徐々に改善していることに加え、株価の上昇も資産効果を生み出していると思います。今年の企業業績は前年同期比で1.6%の増益とほとんど増えていないものの、多くの企業は収益の事前予想値を上回る決算発表を行いました。来年については、現時点でS&P500の収益は前年同期比9%の増益が期待されています。

その一方、株式市場には一年半を超える米中間の貿易戦争という「不確実性」が存在し、市場にはもやもや感がありました。特にトランプ大統領のツイッターによる中国に対するコメントに株式市場は一喜一憂といいますか、ハラハラドキドキさせられてきました。

株式市場は不確実性を嫌がります。世界のリーダーである米国の大統領の不確実性に株式市場は振り回されてきました。その事が株式市場の重石になっていたと思います

ですが、12月に入り、ついにその不確実性も、米中間の第一段階の合意に加え、米国、カナダ、メキシコを相手にしたUSMCAも締結される事が発表されて、ポジティブな方向性が見えてきました。それにより市場には安堵感が漂い、今回の高値を更新するきっかとなりました。

まさに今回の貿易協定の合意は、市場にとってのクリスマスプレゼントとなりました。

債券と比べても魅力的な株式の配当利回り

史上最高値を更新したこともあり、株式市場は一見割高に見えますが、必ずしもそうではありません。下図は1970年末から今までの米国10年債の利回りと、S&P500の配当利回りの比較をしたものです。

マネックス証券
(画像=マネックス証券)

歴史的には、株式の配当利回りが10年債の利回りを超えることはなかなかありませんでした。 このような状況になっている理由としては、債券の利回りが下落したこともありますが、株式市場では増配が継続して行われたこともあげられます。

今の状況はというと、インカムを求める投資家にとって、株式の配当利回りが債券の配当利回りより魅力的であり、債券に投資をする代わりに米国株を買うという投資行動をとってもおかしくありません。

「米国株はなじみがないので投資しにくい?」

私は10月からマネックス証券のお客様に米国株の投資をしてみませんかという啓蒙活動的なお話をさせて頂いています。その過程で、お客様から頂いたアンケートの回答の中に、「米国株は銘柄もよくわからない」ですとか、「なじみがないので投資しにくい」、「わからないのでなんとなく投資するのにはハードルが高い」という意見を複数、目にしました。

「なるほど」と、私も一旦はそう思ったものの、よく考えてみると本当にそうなのか疑問を持ったのです。 なぜならば、毎日の私たちの生活には多くの米国企業の製品やサービスとの接点があるからです。

例えば、社会人であれば、朝会社に行き最初にすることと言えば、パソコンの立ち上げでしょう。電源を入れて目にするロゴはマイクロソフトのWindowsですね。そのパソコンの中には、昔CMでよくやっていた「インテル入っている」のインテルの半導体が入っている訳です。

私の会社が入っているビルの一階にはスタバがあり、そこは必ずと言っていいくらい列ができています。会社のIP電話はシスコシステムズ製ですが、これも米国企業です。出かけるときに忘れちゃいけないのは(少なくとも会社はそう宣伝していますね)、アメリカンエクスプレスのクレジットカードです。もはや、財布より落としてはいけない重要な情報が入っているものはアップルのiPhoneです。

ついに日曜夜の日本を代表するテレビ番組の一つである「サザエさん」のスポンサーにもなり、会員になるとオリジナル番組が無料で見られ、早ければその日のうちに注文した商品を無料で配達してくれるアマゾンなどなどもある。こうやってじっくり考えてみると、既に米国企業の製品やサービスは私達の生活の一部になっていますよね。

岡元流「私たちの生活に親しみのある米国株ポートフォリオ」

そういった企業全体の株価のパフォーマンスはどうなのか興味を持ち、思いつくままに頭に浮かんだ米国企業10社の株価を指数化してみたのが以下のチャートです。

マネックス証券
(画像=マネックス証券)

私が独自で選んでみた「私たちの生活に親しみのある米国株ポートフォリオ」のリターンは2015年の頭から今年11月22日までの約5年間でなんと235%上昇(配当は含まず)しており、同期間のS&P500の151%のリターンを大きく上回った結果となったのです。