10月3日、ソフトバンク株式会社が米国レジェンダリー・エンターテインメント(以下、レジェンダリー)に対し、2億5,000万米ドルの出資を行う発表をした。レジェンダリーは、ハリウッド版ゴジラの製作やハングオーバーシリーズなどを手がけるメディア業界のリーディングカンパニーである。この出資により、ハリウッド映画やテレビ番組へのアクセスを獲得するほか、米通信・メディア業界でのプレゼンス拡大へとつながる。
9月28日には米国を代表するエンタテインメント情報誌のTHE Hollywood REPORTERより、ソフトバンクによる米ドリームワークス・アニメーション(以下、DWA)の買収交渉を検討していることが伝えられた。DWAはアニメ映画史に残る大ヒット作「シュレック」や「マダガスカル」などのシリーズの製作を手がけており、ソフトバンクのメディア業界への積極進出が伺える。
記憶に新しいのがソフトバンクのスプリントを通じた米携帯大手Tモバイルの買収断念だ。これにより同社の米国進出は難しくなるという懸念が広がる一方で、同時に孫社長の次の一手が気になるところであった。直近のTモバイル買収失敗、DWAの買収交渉、レジェンダリーへの出資の動きから孫社長の狙いがみえてくるのではないだろうか。つまり、米T-Mobileの買収断念により直接無線事業の拡大は難しくなったが、メディア業界でのプレゼンスを高め独占的コンテンツを拡充することにより米大手キャリア2強のAT&T及びVerizon Communicationsに対抗するための競争力の獲得だ。
孫社長は5月の決算説明会で、「紆余曲折があっても、あきらめない限り別の道が必ず見つかる。チャンスは必ずやってくる」と語っており、今後の米国進出の新たな手がかりとしてのメディア戦略には引き続き要注目である。