近年、ビル経営において従来の「施設管理」にとどまらないサービス「プロパティマネジメント」が注目を集めています。「プロパティマネジメント」とはどのようなサービスなのでしょうか。
この記事ではプロパティマネジメントの概要とその重要性、ビルオーナーにとってプロパティマネジメント担当をつけるメリットについて解説します。また、ビルに関わる似た管理運営業務(ビルマネジメント・アセットマネジメント・ファシリティマネジメント)との違いについても説明します。

目次

  1. 1.不動産の価値を高めるプロパティマネジメントの重要性
    1. 1-1.プロパティマネジメントとは
    2. 1-2.プロパティマネジメントの主な業務
    3. 1-3.プロパティマネジメントがもたらすメリット概要
  2. 2. ビル経営でプロパティマネジメント担当者をつける具体的なメリット7つ
    1. 2-1.ハード面におけるメリット3つ
    2. 2-2.ソフト面におけるメリット4つ
  3. 3.他のビル管理サービスとプロパティマネジメントの違い
    1. 3-1.ビルマネジメント(略称:BM)とは
    2. 3-2.アセットマネジメント(略称:AM)とは
    3. 3-3.ファシリティマネジメント(略称:FM)とは
  4. 4.まとめ

1.不動産の価値を高めるプロパティマネジメントの重要性

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(画像=Indypendenz/Shutterstock.com)

この章では、プロパティマネジメントとはどのようなサービスなのか、導入することでどんな効果があるのかを解説し、プロパティマネジメントを利用することの重要性を見ていきます。

1-1.プロパティマネジメントとは

プロパティマネジメント((Property Management、略称PM)とは、ビル経営など不動産(おもに事業用収益物件)に関わるさまざまな業務全般を、オーナーに代わって行ってくれるサービスです。円滑なビル経営・運営業務を行いオーナーの負担を減らします。またプロの知見を用いて事業を最適化・効率化することが可能です。
高いプロパティマネジメントのスキルを持った専門家が管理することにより、オーナーが気付かない建物の劣化などが見つかることもあります。主治医が常に体調を管理してくれるようなものと考えれば、わかりやすいかもしれません。

1-2.プロパティマネジメントの主な業務

プロパティマネジメントは、ソフト面である賃貸管理からハード面であるメンテナンス業務までをカバーし、オーナーをビル管理の煩雑な日常業務から解放してくれます。その他、以下のようなさまざまな業務を担っています。

1 経営に関わる業務
サブリース、不動産売買、開発業務委託、店舗オペレーション事業など
② テナントの募集
審査、オフィス仲介、誘致(リーシング)
③ テナント管理・賃貸管理
賃貸借の一連の流れの管理と実行、各種工事施工、苦情処理など
④ 環境維持と危機管理
ビル全体のメンテナンスほか

※上記サービス内容は一例であり、サービス提供会社によって多少異なる場合があります。

1-3.プロパティマネジメントがもたらすメリット概要

プロパティマネジメントの最大のメリットは、不動産に「付加価値」を与えられることです。適切な物件管理を行い、資産価値を維持あるいは向上させることが可能です。

物件は所在地などの環境、その物件の特性など状況によって適した管理方法が異なります。例えば商業用ビルならばテナントを募集し、継続的に入居利用してもらうことが重要な課題となってきます。またあらゆる状況に応じて最適な提案を行い、不動産経営において高い利益を生み出します。

近年のプロパティマネジメントは、従来の「施設管理」にとどまらず、入居テナントの募集、交渉や契約書作成、入居中の相談対応やクレーム対応、退去時には原状修復工事まで請け負います。
その他、プロパティマネジメントを行う会社は商圏調査によって蓄積されたデータを持っており、その商用ビルに最適なテナントを紹介したり、テナントの営業状態を活性化させるために役立つ施策を提案したりというサービスも用意している場合があります。これにより、例えば「テナント料金を割り引いてほしいと言われた」というような、オーナーだけでは入居者に対しはっきりした賃貸額の根拠が示せず交渉が難しい場合でも、商圏データから導き出された明確な賃料を提示できます。

このようにビルの価値を高め、単なる「施設管理」「物件管理」にとどまらず、事業用収益物件の運営すべてに関わるサービスを用意・提供できます。
プロパティマネジメントが近年重要性を増しているのは、このような理由によります。

2. ビル経営でプロパティマネジメント担当者をつける具体的なメリット7つ

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(画像=Thampapon/Shutterstock.com)

この章ではビル経営においてプロパティマネジメント担当者をつける具体的なメリットを、ハード面とソフト面、両方からわかりやすく紹介します。

2-1.ハード面におけるメリット3つ

PMのハード面のメリットは、建物を適切に管理できることです。具体的には以下のようなものになります。

(1)保守管理を任せられる
建物の資産価値を維持するには、保守管理が欠かせません。単一オーナービルには管理組合が存在しないため、それをオーナーが自ら行う必要があります。ビル管理の資格を持っていなければ、個人で対応することは難しいでしょう。プロに任せることで、保守管理の心配がなくなります。

(2)修繕工事プランや適切な工事費用案を作成してくれる
保守管理によって修繕・改修が必要な箇所が見つかれば、具体的な修繕工事のプランもPM担当が作成してくれます。工事業者の選定においてもPM担当が交渉することで、適正な工事費用が算出されるので安心です。内外装のデザイン変更や設備更新、耐震補強が必要な場合も適切な工事が施されるため、新築同様に生まれ変わることもあるといいます。

(3)原状回復工事の手間を負担してくれる
マンションのオーナーが頭を悩ませるのが原状回復工事ですが、ビルでもテナントの退去時には同じ問題が発生します。この場合もPM担当者がテナントとの協議や工事内容の策定を行うため、オーナーの精神的な負担は軽くなります。

2-2.ソフト面におけるメリット4つ

建物だけでなく、ソフト面のメリットが多いのもPMの特徴です。

(1)「空室リスク」への対策
ビルのオーナーにとって最も不安なことは「空室リスク」でしょう。例えばローンを組んでビルを購入した場合、主な返済原資は毎月の賃料です。空室が発生して賃料収入が減ればその分返済に余裕がなくなり、資金繰りが立ちいかなくなることがあります。PM担当はテナント募集を行うほか、近隣からの問い合わせや物件の情報流通、図面の作成まで幅広く対応してくれるため、空室リスクの減少には極めて有益なサービスと言えます。

(2)トラブル対応をはじめとした管理業務などを代行
PM担当は、テナント企業に対してトラブル対応をはじめ、契約管理業務、更新手続き、滞納家賃の督促業務など面倒な業務を代行してくれます。これにより、オーナーは自分の本業に専念できます。

(3)初心者オーナー、事業承継したばかりのオーナーへのアドバイス
特に初めてビルを所有するオーナーにとって、PM担当は心強い味方と言えるでしょう。法人オーナーの場合、自社社員にPM担当を任せる方法もありますが、資格を持った社員が退職してしまえば、後任を探さなくてはなりません。サービス会社にPMを委託していれば、その心配はいりません。自分の仕事に専念することで資金を蓄え、2棟目、3棟目と賃貸ビル経営を発展させることも可能です。

(4)複数ビル所有オーナーへの一元管理とレポート報告
PMサービス提供会社は、一般的にどのビルでも同じサービスを提供できるよう業務の基準を設けています。したがって、信頼できるサービス会社に委託していれば、新たなビルを保有した場合も一元管理ができることになります。

3.他のビル管理サービスとプロパティマネジメントの違い

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(画像=Sergii Molchenko/Shutterstock.com)

プロパティマネジメントと似た言葉に「ビルマネジメント」「アセットマネジメント」「ファシリティマネジメント」というものがあります。これらの言葉は「プロパティマネジメント」と同じくビルオーナーに役立つサービスですが、それぞれに領域が異なります。ここではそれぞれのサービスの内容と、プロパティマネジメントとの違いについて簡単に説明します。

3-1.ビルマネジメント(略称:BM)とは

「ビルマネジメント」とは、おもに建築物に対する総合的なマネジメント業務を指します。

略称が同じ「ビルメンテナンス」は清掃、設備の管理、警備システムの提供などを主として行いますが、「ビルマネジメント」は物件(ビル、収益物件)の「建築物」としての領域全てを管理運営します。例えば改修工事やリフォームなどの提案を行います。

*プロパティマネジメントとの違いは?*
プロパティマネジメントがテナントへの誘致や請求業務なども含めた業務を行うのに対し、ビルマネジメントのサポートする領域はビルそのもの、すなわち「建築物」へのマネジメントが主体となります。

3-2.アセットマネジメント(略称:AM)とは

「アセットマネジメント」は、本来は不動産に限らず株式等の「金融資産」全般の管理代行業務を指しています。これを不動産に特化している「アセットマネジメント」は、投資用不動産の資産価値を維持し、さらに向上させるために資産運用計画をオーナーに提示し、実行します。
例えば売却や資産価値の評価、財務分析、投資のためのポートフォリオの組み替えなどが主な領域となります。

*プロパティマネジメントとの違いは?*
プロパティマネジメントはオーナーの所有する「物件」の管理運営が主な業務ですが、アセットマネジメントは物件を資産ととらえ、投資・運用してさらなる利益を生み出すことに主眼を置いていることが異なります。

3-3.ファシリティマネジメント(略称:FM)とは

従来の「施設管理」と同義ととらえられることも多い「ファシリティマネジメント」ですが、従来の施設管理でメインとなる「建物の維持と保全、管理」ではなく「施設の活用の最適化」が目的となります。
例えば、ある物件が飲食店のテナントばかり入居させていた場合、本当にその地域にそのテナントの選択でよいのかどうか、経営戦略をいちから練り直し、ビルの価値を高めるためによりよい利用の仕方を考えるのがファシリティマネジメントといえます。
また、物件や建物だけではなく固定資産すべてを経営戦略のターゲットとし、最適な活用方法をマネジメントします。

*プロパティマネジメントとの違いは?*
プロパティマネジメントにもテナント誘致段階から商圏調査をして経営戦略的にアプローチするサービスもあります。そのため、プロパティマネジメントとファシリティマネジメントはある領域では重なる部分があるといえます。

4.まとめ

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(画像=Sergii Molchenko/Shutterstock.com)

プロパティマネジメントについてお分かりいただけたでしょうか。ビル経営を行うオーナーは本業を持っている場合も少なくありません。プロパティマネジメント担当者をつけることで日々の煩わしい管理運営業務から解放されます。所有する事業用物件の価値を最大限に高めるためにも、プロパティマネジメントの利用を考えてみてはいかがでしょうか。(提供:ビルオーナーズアイ