アメリカのカジュアルブランドとして人気を博した「アメリカンイーグル」。日本では紳士服大手の青山商事が展開していたが、昨今の販売不振は深刻で2020年の年明けを待たずに日本国内の全店舗を閉店する。欧米カジュアルブランドが姿を消していく流れは今後も続くのか。
本体への店舗引き継ぎはかなわず
欧米カジュアルブランドの撤退といえば、アメリカ発のファストファッションブランド「フォーエバー21(FOREVER21)」が記憶に新しい。同ブランドは2019年10月末までに日本国内に展開していた全店舗を閉鎖。1号店オープン時には大行列ができ、一世を風靡した外資系アパレルの凋落は業界関係者だけでなく、消費者にも大きな衝撃を与えた。
そんな中、米アメリカンイーグルアウトフィッターズとフランチャイズ(FC)契約を結び日本事業を展開していた青山商事も、販売不振を理由にアメリカンイーグル事業を2019年12月末で終了することを決めた。国内店舗をアメリカの本体へ引き継ぐ方法を模索するも道は絶たれ、日本事業譲渡については協議が続いているようだ。
足を引っ張る事態になったアメリカンイーグル事業
青山商事は連結子会社のイーグルリテイリングがフランチャイズ権を獲得する形で事業を展開。決算上は青山商事の「カジュアル事業」に内包され、その業績は四半期ごとに発表されてきた。
直近の決算である2020年3月期の第2四半期(7〜9月)の数字をみると、カジュアル事業の売上高は前年同期比で10.4%減となる62億9,000万円に留まっており、営業損失は実に前年同期比で約2倍となる10億6,600万円を計上している。
青山商事はビジネスウェア事業やカード事業、総合リペアサービス事業、雑貨販売事業なども展開しているが、第2四半期で売上高の前年同期比が最も悪かったのがカジュアル事業だ。つまりそのカジュアル事業の中で足を引っ張っていたアメリカンイーグル事業から手を引く決断をしたということになる。
消費者の趣向が「原点回帰」傾向に
こうした海外ブランド事業や外資系アパレルの日本撤退は2019年に始まったことではない。2015年以降、トップショップやイーランド、ウィークデイ、オールドネイビーなどといった有名ブランドが日本市場で幕引きをする事例が相次いだ。
特に最近の潮流として注目したいのが、海外のファストファッションブランドの販売が振るわない一方で、流行などに大きな影響を受けない「スローファッション」という志向を取り入れるユニクロなどが好調なことだ。
ファッションというものが機能性やローカルな文化に根付いているものとするならば、消費者の趣向がこうした原点に回帰し始めたとも考えられる。事実、日本国内のアパレル市場は縮小しているわけではない。
外資系アパレル撤退のドミノ倒しは起こるのか
青山商事がアメリカンイーグル事業から撤退するというニュースは、見方によっては同社の経営計画における一側面でしかない。青山商事は、不採算部門から手を引くことでほかのコア事業に注力し、デジタル対応やEC部門の売上強化などで業績を向上させることを目指している。後退ではなく、むしろ「攻め」のための一手だ。
しかし外資系アパレル業界にとってこのニュースのインパクトはかなり大きい。特にアメリカ事業が不調なGAPは戦線恐々としているだろう。GAPは原宿店と渋谷店を閉鎖し、先行きの不透明感が拭えない。過去に傘下のオールドネイビーを日本から撤退させたこともあり、今後の動向に注目が集まる。
外資系アパレル業界は撤退のドミノ倒しが起こりかねない状況だとも言えるが、EC対応などに力を入れることで業績が好転する可能性も十分に秘めている。2020年も外資アパレル業界から目が離せない。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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