五輪イヤーである2020年が幕を開けた。本特集では、自身の資産をさらに増やし、人生を加速させていこうと考える読者に向け、金融や経済など各テーマ別に2020年の展望を解説していく。新年一発目の本稿では、第一生命経済研究所の経済調査部・首席エコノミストの永濱利廣氏に、2019年の振り返りを含め、2020年の日本の経済と株式市場の動向について話を聞いた。

永濱利廣
永濱利廣(ながはま・としひろ)
第一生命研究経済調査部・首席エコノミスト
1995年に早稲田大学理工学部工業経営学科を卒業し、第一生命保険に入社。1998年より日本経済研究センターに出向、2000年より現任の第一生命経済研究所経済調査部に所属、2016年より現職。2005年には東京大学大学院経済研究科の修士課程を修了。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師なども兼任している。「エコノミストの父が、子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話」(ワニ・プラス)ほか著書多数。

日本経済は“さほど悪くない”という先入観が生まれた理由

2020年、どうなる?金融・経済
(画像=PIXTA,ZUU online)

株式相場を見ている人であれば、2018年12月、米アップルの業績大幅下方修正で株式市場が暴落したことを記憶しているだろう。いわゆる“アップルショック”である。投資家は2019年の新年相場に若干の不安を持って臨むこととなったわけだが、投資家の不安をよそに、相場は反発した。日経平均株価は大発会の寄り付き価格1万9655円から、年末の12月17日には2万4091円まで上昇。バブル後最高値である2万4448円を視野に入れる動きとなっている。果たして2020年、日本の相場はこのまま株高が続くのか。そして、消費増税後の日本経済の行く末はどうなのか。

2020年を占ううえで、まずは永濱氏に2019年の日本経済、株式市場を振り返ってもらった。

「2019年の株式市場にとって、最も影響が大きかったのはやはり米中の通商摩擦。摩擦が大きくなると不安が大きくなって日本株が売られ、摩擦が小さくなると買われるという1年だったと思います。米中の通商摩擦以外では、主要国の金利動向が印象的でした。2018年まで、日銀のマイナス金利政策などによって日本の長期金利(10年物国債の利回り)は世界でも最低水準でしたが、2019年はユーロ圏の長期金利が日本よりも低い水準で推移しました。つまり、マイナス金利はすでに日本固有の問題ではないということです。世界的にも長期金利は低水準にありますが、もはやこれは世界の経済や金融にニューノーマル(新常態)的な構造変化が起きていると言っていいでしょう。この引き金を引いたのが、米中の通商摩擦だと思います」(永濱氏)

このような状況の中、日本経済は2019年10月に消費増税を迎えたわけだ。ところが、日経平均株価は下がるどころか10月半ば頃から上昇を開始。2万1500円から2万4000円台まで値を上げた。これを見ると、日本の株式市場は国内の状況ではなく、海外要因(主に米中の通商協議)に左右されているように見える。実際の日本経済は増税が行われた10月以降、“さほど悪くはない”状況と言えるのか。