(本記事は、麻野 進氏の著書『イマドキ部下のトリセツ』=ぱる出版、2019年12月13日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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年上バブル世代〝部下〟のトリセツ
バブルのピークは1990年でしたが、その前後までに入社した社員は50代の半ばくらいになっています。多くの社員は役職者になったり、気概のあるものは社外に出たり、ないものは整理されたりしていますが、やはり要所要所には残っているわけです。
彼らの最大の特徴は「根拠なき自信」の持ち主だということです。
バブル期の求人難で、就職学生は選り取り見取りで、能力的に無理な大企業にも楽々入れたりしました。空前の活況で仕事もあふれるほどやってきて、本来ならクビものの大失敗をしでかしても、次があるさ、とばかりにおとがめなし。経費は使い放題で、使わなければ逆に怒られるという時代を経験しています。
就職氷河期をくぐり抜けたロスジェネ世代は、デジタル化にどっぷり浸かり、シミュレーションオタクの色が強く、根拠があるから自信が持てると考えています。
しかし、バブル世代は根拠のない自信で乗り切ってきました。「やればなんとかなる」という楽天的な考え方なのです。
会社人生の中では世代にかかわらず、根拠のあるなしにかかわらず、決断しなければならないことはたくさんあります。
基本的には過去の実績や成功事例を根拠に決断するのですが、最近のように変化の激しい時代では過去の成功体験が決断の根拠としては役に立たないこともたくさんあります。
たとえば、重要で難度の高い部署の管理職を打診された場合、ロスジェネ社員だったら、仕事のハードさに比べて報酬が少ないなど「割に合わない」と判断して躊躇することが多いのですが、バブル世代はやっていく自信はなくても、「頑張ります」と受け容れる傾向があります。
まさに根拠なき自信の現れで、その前面に出る姿勢が、会社を実質的に動かしている幹部社員となって出世して大活躍しているのですが、出世が止まった社員、あるいは出世しなかったバブル世代は会社のお荷物になりかけているのです。
そうなりながらも、根拠なき自信は持ち続けていますので、彼らを部下に持った年下上司はやりにくくて仕方ないのです。
肩書きを外されたとたんやる気が失せる処遇に困る元管理職〝部下〟のトリセツ
多くの企業が役職定年制を導入しています。50才~55才前後になると、肩書きが外され、一般社員として降格されたり、配置転換や子会社への出向となります。
そのとたん、モチベーションが下がるケースが多いようです。
たとえば、その会社でいちばんの稼ぎ頭の部署のやり手管理職だった社員が、肩書きを外され、他部署に異動したとたん、給料は20%程度下がりましたが、モチベーションは70%も下がっているという話をよく聞きます。
むろん、年齢的な原因ではありません。50代半ばはまだまだ働き盛りのはず。
なぜこんな現象が起こるかというと、管理職時代に問題があったと考えられます。
つまりその部署には優秀な部下が集まっていて、管理職の社員は優秀な部下に丸投げしていればよかったのではないか。ムードメーカーで彼らを気分よく働かせていただけで、管理職個人の能力はさほどでもなかった。別の部署に行ったことでそれが露呈したということでしょう。
あるいは管理職として、部下に厳しく発破をかけていたのかもしれません。それもマネジメントの一つではありますが、もっと下世話な言い方をすれば、部下の手柄を自分のものにしていたのかもしれません。
降格して一般社員と同じ実務をすることになって、パソコンもまともに使えなかったことに周りが初めて気づいたというケースもあります。エクセル操作ひとつできなかったそうで、それまで部下の社員に丸投げしていたことがわかります。
また、そういう人に限ってプライドが高く、過去の実績をひけらかす。あるいはリタイア気分になって何もしない。こういうローパフォーマーの中高年の部下を持つことになった若い管理職のやりにくさは想像するに余りあります。
年上部下の困るところは無責任に〝職場を混乱させる〟こと
年上部下のいちばん困るのは、いろんな意味で仕事に対して「無責任」であるということです。もう出世の見込みはなく、定年も目に見える時期に来ていればモチベーションが上がらないのは当然なのですが、それが投げやりにいなってしまっては、その課全体の仕事に波及しかねません。
たとえば、自分が経験者で業務の内容についてはすべて知り尽くしていると自負している場合、しばしば上司の指示を聞かない。自分のやり方を通すわけです。
若い上司の指示に対し、「ここはこのやり方でいいんだ。俺はずっとそうやってきたんだ」
と頑固に主張して譲らない……。
「だけど、それじゃ他の課との整合性がとれません」といっても、「そんなの知ったことか」と独断専行を貫いてしまいます。あるいは「そのやり方じゃだめだ」と自分の主張を通して課員を混乱させる。これが仕事に対して無責任だということです。 50代半ばといえば、老け込む年ではないはずですが、彼らの想像以上に時代の流れは速いのです。自分の経験がなんの役にも立っていないことに気付かないことが会社の業務遂行の邪魔になっているケースもあるのです。
取引先へのプレゼンで、「こういう資料をそろえてほしい」と伝えても、「わかりました」と調子のいい返事はしますが、実際には自分勝手な資料しか持ってこない。
耳が遠いわけでもないのに、上司の指示を半分も聞かない。あとは自分の経験でカバーできるとでも思っているのでしょうか。
勝手な判断をするのは、なまじ自分が管理職という偉い立場にいたため、わからないことを人に聞くことがなくなった名残だろうと思います。プライドかもしれませんし、もはや何がわからないのかもわからなくなっているのかもしれません(そんな大げさと思われる方もいるでしょうが、時代の流れはあっという間に古い知識を押し流してしまうのは、若い人でも、スマホの高機能化などの早さなどでおわかりでしょう。
まして生き馬の目を抜くビジネス社会ではちょっとでも情報収集を怠ると、あっというまに置いていかれるのです)。
わからないことは聞いて確かめる、この当たり前のことができないのは仕事に対して無責任だからという他はありません。
麻野 進
組織・人事戦略コンサルタント。1963年大阪府生まれ。株式会社パルトネール代表取締役。あさの社会保険労務士事務所代表。大企業から中小・零細企業など企業規模、業種を問わず、組織・人材マネジメントに関するコンサルティングに従事。人事制度構築の実績は100社を超え、年間1,000人を超える管理職に対し、組織マネジメント、セルフマネジメントの方法論を指導。入社6年でスピード出世を果たし、取締役に就任するも、ほどなく退職に追い込まれた経験などから「出世」「リストラ」「管理職」「中高年」「労働時間マネジメント」「働き方改革」を主なテーマとした執筆・講演活動を行っている。
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