投資信託で利益が出たら税金を払う必要がある。何もしなければ源泉徴収で完結する人も多いが、確定申告をしたほうが得することもある。税金を抑えつつ有利に投資するため、投資信託の税制にはどのようなものがあるのかみていこう。

投資信託の税金は譲渡所得と分配金に対して課税される

投資信託,税金
(画像=William Potter/Shutterstock.com)

税金の取り扱いは「株式投資信託」と「公社債投資信託」により異なる部分もあるが、ほとんどは変わらない。投資信託にかかる税金には以下の2パターンがある。

・売却や償還による「譲渡所得」にかかる税金
・「分配金」にかかる税金

「株式投資信託」とは、ポートフォリオに株式を組み込める投資信託のことだ。あくまでも組み込めるというだけで、公社債(債券)を中心に運用していても株式投資信託と呼ぶこともある。一方、「公社債投資信託」は株式を組み込まず、公社債で運用する投資信託のことだ。代表的な商品としてMRF(マネー・リザーブ・ファンド)があり、証券会社で預金口座代わりに使われることもある。

一般的には株式投資信託の販売が多いが、気になった商品は投資信託説明書の表紙や約款などで確認しておこう。

株式投資信託と公社債投資信託の税金は取り扱いの異なることがあるものの、利益の種類に関わらず20%の税金がかかる。2037年までは2.1%の復興特別所得税も追加的に課税され、税率は20.315%となっている。

  株式投資信託 公社債投資信託
譲渡所得 20%
(所得税15%+住民税5%)
分配金
復興特別所得税 所得税に対し2.1%
合計 20.315%

(※2019年12月時点の税制をもとに筆者作成)

投資信託にかかる税金は確定申告が必要か

投資信託の税金に関して確定申告が必要かどうかは原則的に所得の種類により異なるが、利用する税制口座によっても異なる。

投資信託の譲渡所得にかかる税金は原則として確定申告の対象

投資信託の売却などによる「譲渡所得」を得た人は、損失の場合を除き確定申告が必要だ。

譲渡所得はほかの所得と分離して税金を計算する申告分離課税となっており、基本的には確定申告が必要である。一般口座や源泉徴収なしの特定口座で取引する人が対象だ。それらの口座でも給与以外の所得が20万円以下の会社員などなら確定申告は必要ない。源泉徴収ありの特定口座による取引も自動的に税金が徴収されるため、確定申告は不要だ。

税制口座の種類 確定申告の必要有無
特定口座(源泉徴収あり) 不要
特定口座(源泉徴収なし) 必要
(給与以外の所得が20万以下の人は不要)
一般口座

(※筆者作成)

どの税制口座を利用するかは自由だが、一般的には特定口座(源泉徴収あり)を選択する人が多い。確定申告の手間を省けるのはメリットなので、普段は特定口座で税金を源泉徴収するのがいいだろう。

投資信託の分配金にかかる税金は原則として源泉徴収の対象

投資信託の分配金にかかる税金は原則として源泉徴収の対象だが、普通分配金は課税対象で、特別分配金(元本払戻金)は非課税である。受け取る分配金がどちらに当たるかは、投資信託の基準価額と個別元本で判断される。

個別元本とは投資家ごとの投資信託の買値を指す。同じ投資信託を複数回購入した場合は、購入した口数や基準価額をもとに個別元本が変更される。分配後の基準価額が個別元本を上回っているなら利益として普通分配金になり、下回っているなら元本払戻金として特別分配金になる。このうち課税されるのは、収益と見なされる普通分配金だ。

分配金は基本的に源泉徴収の対象だが、利用したい税制によって確定申告が必要なこともある。

投資信託にかかる税金で確定申告するのがよいケースとは

投資信託にかかる税金はどちらも源泉徴収により確定申告をせず終了できるが、あえて確定申告をする3つのケースを紹介したい。

確定申告をしたほうがよいケース(1)……複数口座の投資信託などを損益通算する

投資信託など金融商品は譲渡益や分配金による利益に対して課税されるが、損失が出た場合は利益から差し引いて税金を減らせる。その仕組みを損益通算と呼ぶ。例えば50万円の利益と20万円の損失がある場合、何もしなければ約10万円の税金(50万円の20%)だが、損益通算すれば約6万円の税金(30万円の20%)で済む。

同じ特定口座(源泉徴収あり)内なら損益通算は自動的に行われ確定申告は不要だが、異なる金融機関の取引を損益通算するためには必要だ。損益通算できる金融商品は投資信託以外も対象になる。NISA口座で取引した投資信託などの金融商品は損益通算の対象外になることは注意しよう

損益通算できる金融商品の例
・株式投資信託
・公社債投資信託
・上場株式
・ETF(上場投資信託)
・ETN(上場投資証券)
・J-REIT
・公社債

(※筆者作成)

確定申告をしたほうがよいケース(2)……投資信託などの損失を繰越控除する

投資信託のなどの金融商品を損益通算すると利益を圧縮できるが、損失が利益を上回る場合は確定申告により繰越控除できる。

繰越控除は、損益通算しても控除しきれない損失を翌年以後3年間にわたって利益と相殺できる制度だ。仮に30万円の損失を2019年に繰越控除して翌年の2020年に10万円の利益が出た場合、それらを損益通算して税金を減らせる。余った20万円の損失も2021年に繰越控除し、利益と相殺できる。

繰越控除は1つの取引口座しかなくても損失があれば確定申告で利用できるが、注意したいのは、繰越控除を継続するには確定申告を毎年しなければならない。損失の繰越は最大3年間だが、途中で確定申告しない年があると繰り越した損失は消滅する。繰越控除の適用を継続させるには、面倒でも確定申告を行うようにしよう。

確定申告をしたほうがよいケース(3)……投資信託の分配金などの配当控除を受ける

投資信託の分配金は源泉分離課税が原則であり、利益に対し所得税15%と住民税5%の税金が源泉徴収される。これを確定申告時に配当控除を利用することで税金を減らせる可能性がある。

配当控除とは、投資信託の分配金や株の配当について総合課税として確定申告すると所得税と住民税から一定額が控除される制度だ。分配金でも公社債投資信託のものは対象にならない。

投資信託の配当控除率は以下であり、所得税と住民税の税率が適用に応じて引き下げられる。課税総所得金額等が1,000万円を超える人はカッコ内の控除率が適用される。

  株式組入割合
50%超 25%超
50%以下
25%以下






50%以下 所得税5%(2.5%)
住民税1.4%(0.7%)
所得税2.5%(1.25%)
住民税0.7%(0.35%)
適用なし
50%超
75%以下
所得税2.5%(1.25%)
住民税0.7%(0.35%)
所得税2.5%(1.25%)
住民税0.7%(0.35%)
適用なし
75%超 適用なし 適用なし 適用なし

(※日本証券業協会『個人投資家のための証券税制Q&A(2019年版)』より筆者作成)

ただし、通常なら所得税15%と住民税5%だが、総合課税を選択すると所得税は所得に応じて5〜45%、住民税は一律10%が適用される。そのため、配当控除で一定額が控除されても税率によって所得税は得になっても住民税は高くなることがある。

回避策として所得税と住民税の課税方法を別々に選択する方法がある。まず確定申告で総合課税を選び所得税の配当控除を受け、住民税は市役所など自治体で別途申告書類をもらい提出する。

この方法で住民税が高くなることは避けられるが、所得税の配当控除が有利かどうかは所得によって異なる。確定申告することで扶養控除などに影響する可能性もあるので、利用する時にはメリットの有無を慎重に検討しよう。

投資信託にかかる税金とどう付き合えばよいか?

投資信託の収益には税金がかかってしまうが、通常は特定口座(源泉徴収あり)を選んでおけば、確定申告の手間を省ける。投資にかかる税金はパフォーマンスの押し下げ要因にもなるため、NISAやiDeCoといった非課税投資制度も優先的に利用したい。

投資信託にかかる税金は分かりづらいイメージもあるが、税制を上手に活用して賢く資産形成していこう。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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