営業戦略の立案は、ポイントさえ押さえれば実に簡単だ。営業戦略をしっかり立てなければ売上や利益の伸長は望めず、事業が衰退してしまう。ここでは、営業戦略の重要性と営業戦略の立て方について解説する。

営業戦略とは?立場によって変わるもの

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(画像=PIXTA)

営業戦略には、企業が販売する製品やサービスを売り込む「会社目線の営業戦略」と、顧客に自社の製品やサービスを選んでもらうための「お客様目線での営業戦略」がある。

この2つはまったく別のものだが、どちらも重要だ。

戦略1. 会社目線の営業戦略

会社目線の営業戦略は、競合他社の製品・サービスに対する自社製品・サービスの優位性をアピールするものだ。入社希望者が、採用面接で自分を売り込むことをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。

小規模な中古車販売店が、大手チェーンの様に社名だけで商品を売ることは難しいはずだ。しかし大手企業は認知度や信用度が高いので、社名だけで商品を売ることができる。

では、中小企業はどのような戦略を取るべきだろうか。たとえば、「大手より高く買い取り安く売る」をアピールすれば販売実績が上がり、顧客が顧客を連れてくるようになるかもしれない。

このように、競合他社よりも優れていることをアピールするためには、会社目線の営業戦略が欠かせない。

戦略2. お客様目線の営業戦略

お客様目線の営業戦略では、いかにして自社製品やサービスを選んでもらうかが重要だ。たとえ大企業であろうと、お客様に「他社のほうがいい」と思われたら、それを変えるのは容易ではない。

携帯キャリアのお客様目線の営業戦略を見ると、昨今は格安SIM業者が台頭しており、大手キャリアのドコモ・au・ソフトバンクはユーザー数が減少している。

なぜ、このような状況になっているのだろうか。格安SIM業者や地域によって差はあるものの、大手3社から格安SIMに変更しても一定レベルの通信速度があるため、不便を感じることが少ないからだ。音声通話でも大手3社の回線を使っているため、音質に差はない。

現在は大手3キャリアの寡占が強いため売上を保っているものの、お客様の目線が格安SIMへ向くと経営は厳しくなるだろう。

このように、お客様が「何を必要としているのか、何を求めているのか」を明確にすることで、お客様目線の営業戦略が有効になるのだ。

営業戦略と営業戦術の違い

営業戦略だけでなく営業戦術も、会社を経営する上で重要だ。似たような言葉ではあるが、役割は異なる。ここでは、営業戦略と営業戦術の違いについて解説する。

営業戦略…大まかな方向性を決める

営業戦略とは営業上の「ゴール」や「目的」を設定し、「新規顧客開拓したい」のか「商品・サービスを継続利用させたい」のかなど、おおまかな方向性を決めることだ。

営業手法については各営業マンが理解していたとしても、「ゴール」や「目的」が曖昧だと思うような成果を上げられなかったり、社員間の意思疎通が上手くいかなかったりすることがある。

営業戦術…具体的な方法を決める

営業戦術とは、営業戦略で立てたゴールや目標を達成するための具体的な営業方法のことだ。

営業戦略は中長期的な視点で営業の目的やゴールを設定するものだが、それを達成するために何をすればいいかわからなくなることがある。そのため、中長期的な目標を持ちつつも、その目標に向かうための段階的なゴール(=営業戦術)の設定が必要になるのだ。

営業戦略の立て方4ステップ

営業戦略を立てること重要性がわかったところで、次は営業戦略の立て方のポイントを見ていこう。

ここでは、営業戦略を設定することで成果が変わることや、ポイントを押さえることの重要性を解説する。

ステップ1. 市場の環境を理解する

営業戦略の立案において最初に行うことは、市場環境の調査だ。

市場環境は営業戦略において重要であり、市場環境を確認しないまま営業戦略を立案すると、まったくの見当はずれになってしまう可能性がある。

たとえば小規模の飲食チェーン店を展開していて、競合他社がほとんどおらず、お客様の満足度が高ければ、ビジネスの規模は小さくても市場環境は良好と言えるだろう。

しかし、外食産業では同じような製品を扱う競合他社がなくとも、「外で食事をしたい」というニーズを満たすだけならば、どの飲食店も競合となりうる。

いくら現在の自社の利益が上がっていても、市場調査の結果で、一時のブームで利益が上がっていることがわかれば、ブームが過ぎ去る前に次の一手を考えないとたちまち倒産に追い込まれる。市場環境の把握は、営業戦略において非常に重要な要素なのだ。

ステップ2. 自社の営業状況を分析する

市場環境を把握したら、次は自社の営業状況を分析する。自社の営業状況は、内部状況と外部状況に分類できる。

内部状況の分析では、「自社の製品やサービスがお客様のどのようなニーズにマッチしているか」「自社の経営状況」「どのような人材を確保できているか」などを分析する。

外部状況の分析では、「今後自社の製品やサービスが置かれている環境(業界)でどのような動きが想定されるか」「競合他社がどのような動きをするか」などを分析する。

自社の営業状況を要素ごとに分析しておかないと、問題点を浮き彫りにすることができない。その結果競合他社に出し抜かれ、お客様が離れてしまうかもしれない。

ステップ3. 分析によって浮き彫りになった問題を把握する

内部状況と外部状況を分析したら、浮き彫りになった問題点を把握しよう。問題が明確になっていないと、お客様のニーズをつかむ営業はできない。

たとえば、「競合他社よりも料金が高い」という問題点が浮き彫りになった場合、料金を下げるか、競合他社にはないサービスを付加して利用価値を高めるといった対策が考えられる。

携帯最大手のドコモは、「ギガホ」「ギガライト」プランの加入促進と他社への流出防止のため、2019年12月よりAmazonプライムの会員権を1年間使えるサービスを付加している。

これは、2019年9月13日に始まったNetflix ベーシックプランの料金を含むauの「auデータMAXプラン Netflixパック」を意識していると思われる。Amazonというスマホ利用者の多くが利用しているサービスとタッグを組むことで、auや格安SIMへの流出を防ごうとしているのだろう。

このように、自社サービスを分析して問題点を把握すれば、自社にとって必要な施策を打つことができるだろう。

ステップ4. 目標を設定する

最後に、目標設定について触れておく。目標が曖昧だと、調査をしたところで何をすればいいのかわかりにくい。目標は、一言で言い表せるくらいシンプルなものが望ましい。たとえば「売上を前年比50%アップする」などだ。

最終的な目標をわかりやすく設定することで、会社の上層部だけでなく、末端社員まで目標を共有することが可能だ。注意したいのは、目標をいくつも同時に掲げないことだ。複数の目標を達成する方法は、それぞれ異なる。目標がいくつもあると優先順位がわからなくなり、混乱してしまうおそれがある。

営業戦略立案の3つのポイント

ここでは、営業戦略の立案方法を3つ紹介しよう。

ポイント1. 何をするのかを明確にする

ここまでで何度か述べてきたが、何をするのか明確にすることが営業戦略の立案では大切なポイントになる。営業戦略が曖昧だと、中長期的視点でどのような成長ができるのか、競合他社と渡り合えるのか、予測できないからだ。

「売上を伸ばしたい」「顧客の数を増やしたい」「商品・サービスのリピート率を上げたい」など、目標によって「やらなければならないこと」も変化する。

ポイント2. 成功と失敗の本質を見極める

何をするのかが明確になっても、必ず成果が出るとは限らない。たとえば、「売上を前年比30%伸ばす」ことを目標としたが、20%しか伸びなかったとする。これを単なる失敗だと捉え、改善をやめてしまうと、本質を見過ごしてしまう可能性がある。

営業戦略を立て実行したら、必ずその結果から何が成功要因で、何が失敗要因であったかを分析しよう。戦略が成功した場合は、成功要因を分析することで再度施策を打つ際に成功しやすい立案をすることができる。反対に失敗要因を分析することで、次の施策はより成功確率が高いものとなるはずだ。

ポイント3. 誰がどのように行動をするのか決める

営業戦略が固まったら、次は目標達成のために「誰がどのように行動をするか」を決める必要がある。

目標が決まっていても、「誰がやるか」が決まっていないと責任の所在が不明確になり、それによって進行が遅くなってしまう可能性が高くなる。営業戦略を決めるだけでなく、「誰がどのようにやるか」まで決めることが大切だ。

営業戦略は経営の要、周囲と話し合って戦略立案を

営業戦略は経営の要であり、これをしっかり立てておかないと、倒産の危機を招きかねない。短期的な結果にとらわれることなく、中長期的な視野で戦略を練ることで、将来自社がどのような発展を遂げるのか、自社をどのように発展させたいのか、明確なイメージを持つことができるはずだ。闇雲に行動するのではなく、しっかりとした営業戦略を練ってから、仕事に取りかかることが大切だ。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部