営業戦略をしっかり立てているはずなのに、なぜか売上や利益が伸びず事業が衰退してしまうなどと悩んでいる経営者はいないだろうか。

そもそも営業戦略の意味を正しく理解していなかったり、戦略を立てるための大切な要素が欠けていたりすると適切なアクションも取れなくなってしまう。そこで本記事は、営業戦略の重要性と営業戦略の立て方、戦略を立てる際のポイントなどについて解説する。

目次

  1. 営業戦略とは?
  2. 経営戦略や営業戦術との違い
    1. 経営戦略…会社を運営するための方向性を決める
    2. 営業戦略…大まかな方向性を決める
    3. 営業戦術…具体的な方法を決める
  3. 営業戦略の立て方
    1. ステップ1. 目標を設定する
    2. ステップ2. 市場の環境を理解する
    3. ステップ3. 顧客を分析する
    4. ステップ4. 競合を分析する
    5. ステップ5. 自社の営業状況を分析する
    6. ステップ6. 分析によって浮き彫りになった問題を把握する
  4. 営業戦略立案に使えるフレームワークや分析方法
    1. 3C分析
    2. SWOT分析
    3. 4P分析
    4. 4C分析
  5. 営業戦略立案の3つのポイント
    1. ポイント1. 何をするのかを明確にする
    2. ポイント2. 成功と失敗の本質を見極める
    3. ポイント3. 誰がどのように行動をするのか決める
  6. 営業戦略は経営の要、周囲と話し合って戦略立案を

営業戦略とは?

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(画像=PIXTA)

営業戦略とは、事業活動において営業がなすべき目標を定め、その目標を達成するために必要な施策やアクションを筋道立てて計画していくことである。事業計画などでは「X年までに売上高を○億円に伸張させる」「Y年にはアカウント数を△に到達させる」など目標設定するのが一般的だ。しかし、これが営業戦略ではない。

営業戦略は、この目標の実現に向けて必要となる施策やツール、社内のリソース配分などをゴールまでのストーリーを描き、決めていくことである。ストーリーを描くときには企業が販売する製品やサービスを売り込む「会社目線」と、顧客に自社の製品やサービスを選んでもらうための「お客様目線」で検討する必要がある。

例えば、会社目線では、競合他社の製品・サービスに対する自社製品・サービスの優位性をアピールするための道筋を立てる。製品・サービスが同じであれば、一般的に中小企業は大企業のように社名だけで商品を売ることは難しい。大手企業は認知度や信用度が高いので、社名だけで商品を売ることができる。

では、中小企業はどのような戦略を取るべきか。例えば、「大手より高く買い取り安く売る」をアピールすれば販売実績が上がり、顧客が顧客を連れてくるようになるかもしれない。

お客様目線では、いかにして自社製品やサービスを選んでもらうかが重要だ。企業規模にかかわらず、お客様に「他社のほうがいい」と思われたら、それを変えるのは容易ではない。

そのため、お客様が「何を必要としているのか、何を求めているのか」を明確にし、選んでもらうための道筋を立てることが大切だ。

経営戦略や営業戦術との違い

先述したような「売上高」や「アカウント数」などといった数値目標を立てることをしばしば営業戦略と捉える人もいるかもしれない。しかし、まずは会社を経営するうえで重要となる目標・戦略・戦術の整理が重要である。

経営戦略…会社を運営するための方向性を決める

経営戦略とは、会社(事業)の存続・発展を図るために中長期的な事業目標を定め、目標を達成するための道筋、施策、リソース配分などを決めていくことである。そのなかの一つとして立てる「X年までに売上高を○億円に伸張させる」といった目標が営業目標だ。その達成に向けて立案する戦略が営業戦略となる。つまり営業戦略は、経営戦略を達成するための一つの手段である。

営業戦略…大まかな方向性を決める

営業戦略とは営業上の「ゴール」や「目的」を設定し、「新規顧客開拓したい」のか「商品・サービスを継続利用させたい」のかなど、大まかな方向性を決めることだ。営業手法については各営業パーソンが理解していたとしても、「ゴール」や「目的」が曖昧だと思うような成果を上げられなかったり、社員間の意思疎通が上手くいかなかったりすることがある。

営業戦術…具体的な方法を決める

営業戦術とは、営業戦略で立てたゴールや目標を達成するための具体的な営業方法のことだ。営業戦略は中長期的な視点で営業の目的やゴールを設定するものだが、それを達成するために何をすればいいかわからなくなることがある。そのため、中長期的な目標を持ちつつも、その目標に向かうための段階的なゴール(=営業戦術)の設定が必要になるのだ。

営業戦略の立て方

ここからは、実際に営業戦略の立て方を見ていこう。あわせて各ステップで押さえるべきポイントも解説していく。

ステップ1. 目標を設定する

まずは、ゴール目標を設定する。ここでいう目標とは「何を」「いつまでに」「どれくらいのレベルで」というものだが、一言で表現できるくらいシンプルなものが望ましい。例えば「来期の売上高を今期比で50%増やす」「3年後の売上を10億円にする」といった具合だ。

目標達成となるゴールをわかりやすく設定することで、それまでにやるべき施策が決めやすい。また、目標達成に向けて進捗を確認しやすくなるだろう。なお、目標設定後の営業立案は営業部役員や管理職が行うとしても、目標は全従業員に共有するのがよい。これにより、達成に向け一丸となって取り組めるようになるだろう。

ステップ2. 市場の環境を理解する

目標を設定できたあとは、具体的な営業戦略の立案に向け、市場環境の調査を行う。例えば現在の自社の利益が上がっているとして、「その要因が一時的なブームなのか」「中長期的にこのトレンドが続くのか」についてわからなければ、採用する施策やアクションが変わってくる。

まったくの見当はずれになってしまわないように、自社を取り巻くビジネス環境を分析し、市場の状況や経済動向を予測することが大切だ。

ステップ3. 顧客を分析する

市場環境を把握したあとは、自社の顧客を分析する。自社の顧客は、自社の標品・サービスをすでに選択してくれた人たちと認識するだけでなく、以下のようなことを顧客の属性(年齢・性別・地域・役職・業種など)とともに分析する。

  • なぜ購入(契約)に至ったのか
  • なぜ自社の製品やサービスに興味を持ってくれたのか
  • 顧客が抱えているニーズは何だったのか

自社を取り巻く市場環境のなかで自社を選んでくれた人たちを理解することで、自社の強み、競合他社との差違を把握でき、営業戦略立案に活かせるはずだ。

ステップ4. 競合を分析する

市場環境や顧客の理解ができたあとは、競合他社の商品やサービスの動向を分析する。競合他社の強みや弱みを発見し、自社が勝っている点、これから勝てそうな領域、補完すべき部分などを理解していく。

ステップ5. 自社の営業状況を分析する

次は自社の営業状況を分析する。自社の営業状況は、内部状況と外部状況に分類できる。内部状況の分析では、「自社の製品やサービスがお客様のどのようなニーズにマッチしているか」「自社の経営状況」「どのような人材を確保できているか」などを分析する。

外部状況の分析では、「今後自社の製品やサービスが置かれている環境(業界)でどのような動きが想定されるか」「競合他社がどのような動きをするか」などを分析する。

自社の営業状況を要素ごとに分析し、問題点を浮き彫りにすることは具体的な施策を考えるうえで重要になるため、欠かせないステップである。

ステップ6. 分析によって浮き彫りになった問題を把握する

内部状況と外部状況を分析したら、浮き彫りになった問題点を把握しよう。問題が明確になっていないと、お客様のニーズをつかむ営業はできない。

例えば、「競合他社よりも料金が高い」という問題点が浮き彫りになった場合、料金を下げるか、競合他社にはないサービスを付加して利用価値を高めるといった対策が考えられる。

自社サービスを分析して問題点を把握すれば、自社にとって必要な施策を打つことができるだろう。

営業戦略立案に使えるフレームワークや分析方法

営業戦略を立案するときに役立つフレームワークを紹介しておこう。なかには、主にマーケティング分野で使われるものもあり、どれを使うか、そもそも使う必要があるかは決まりがない。自社の事業内容や状況に応じて活用を検討するといいだろう。

3C分析

「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」をそれぞれ分析することで、外部環境や競合・市場における自社の立ち位置を理解し、成功要因を導き出すためフレームワークである。

SWOT分析

自社が置かれた環境を内部環境と外部環境に分け、自社の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」、自社にとっての「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」を分析するフレームワーク。営業戦略の立案において、主に市場環境、競合、自社分析のステップで活用できる。

4P分析

「Product:製品」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つのPを分析し、どんな製品をいくらで、どこで、どのように売っていくかを決めていくフレームワーク。自社製品を顧客に提供するメリット、価格の妥当性など、競合他社と比較し自社の優劣を分析し、営業戦略に活かすことができる。

4C分析

「Customer Value(顧客にとっての価値)」「Cost(顧客にとってのコスト)」「Convenience(顧客にとっての利便性)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」という顧客視点での4つの要素を分析するフレームワーク。冒頭で述べた「お客様視点での営業戦略」を検討する際に役立てられる。

営業戦略立案の3つのポイント

ここでは、営業戦略の立案方法を3つ紹介しよう。

ポイント1. 何をするのかを明確にする

ここまでで何度か述べてきたが、何をするのか明確にすることが営業戦略の立案では大切なポイントになる。営業戦略が曖昧だと、中長期的視点でどのような成長ができるのか、競合他社と渡り合えるのか、予測できないからだ。

「売上を伸ばしたい」「顧客の数を増やしたい」「商品・サービスのリピート率を上げたい」など、目標によって「やらなければならないこと」も変化する。

ポイント2. 成功と失敗の本質を見極める

何をするのかが明確になっても、必ず成果が出るとは限らない。例えば、「売上を前年比30%伸ばす」ことを目標としたが、20%しか伸びなかったとする。これを単なる失敗だと捉え、改善をやめてしまうと、本質を見過ごしてしまう可能性がある。

営業戦略を立て実行したら、必ずその結果から何が成功要因で、何が失敗要因であったかを分析しよう。戦略が成功した場合は、成功要因を分析することで再度施策を打つ際に成功しやすい立案をすることができる。反対に失敗要因を分析することで、次の施策はより成功確率が高いものとなるはずだ。

ポイント3. 誰がどのように行動をするのか決める

営業戦略が固まったら、次は目標達成のために「誰がどのように行動をするか」を決める必要がある。

目標が決まっていても、「誰がやるか」が決まっていないと責任の所在が不明確になり、それによって進行が遅くなってしまう可能性が高くなる。営業戦略を決めるだけでなく、「誰がどのようにやるか」まで決めることが大切だ。

営業戦略は経営の要、周囲と話し合って戦略立案を

営業戦略は、経営戦略の一つとして重要な意味を持つ。これをしっかり立てておかないと、会社や事業の存続が難しくなるといっても過言ではない。短期的な結果にとらわれることなく、中長期的な視野で戦略を練ることで、将来自社がどのような発展を遂げるのか、自社をどのように発展させたいのか、明確なイメージを持つことができるはずだ。

今回紹介したステップ、各ステップで活用できるフレームワークを参考にしっかりと営業戦略を立案し、業績拡大に取り組んで欲しい。

文・THE OWNER編集部

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