日本経済を牽引する自動車メーカーを、販売台数、売上、年収などの5つのランキングで紹介する。総合力ではトヨタが圧倒的1位だが、見方を変えると他メーカーが首位となることも……。現在の自動車業界全体の実情にも触れつつ、解説していこう。

目次
1,日本の自動車市場の現況
2,日本の自動車メーカー各社の特徴
3,販売台数ランキング
4,売上高ランキング
5,海外販売比率ランキング
6,時価総額ランキング
7,自己資本比率ランキング
8,平均年収ランキング
9,自動車メーカーは今後どうなるのか?

1,日本の自動車市場の現況 売上規模の推移、販売台数、輸出地域など

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(画像=r.classen/shutterstock.com)

2019年11月、トヨタ自動車の2019年9月中間決算における売上高と最終利益が、中間決算としては過去最高となったことが報じられた。2018年から低迷する中国の乗用車市場においても、トヨタ自動車とホンダのハイブリッド車の販売は好調で、中国の自動車市場における日本の自動車メーカーの存在感が増している。

近年の日本の自動車メーカーの堅調ぶりを、業界規模や販売台数の推移などの観点で可視化してみよう。

本稿で取り上げる「日本の自動車メーカー」とは、以下の完成車組み立てメーカー9社を指す。

トヨタ自動車 <7203>
本田技研工業(四輪事業) <7267>
日産自動車 <7201>
スズキ(四輪車) <7269>
マツダ <7261>
SUBARU <7270>
三菱自動車 <7211>
いすゞ自動車(車両) <7202>
日野自動車 <7205>

業界売上規模の推移――概ね順調に拡大を続ける

日本の自動車業界の業界規模を、日本の自動車メーカー9社の売上高合計で算出する。2015~2019年3月期までの5年間における業界規模の推移は以下のとおりだ。

自動車業界規模の推移

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(※著者制作)

直近5年間の自動車業界規模の推移を見ると、2017年3月期を除いて右肩上がりであり、国内市場・海外市場ともに、日本の自動車メーカーの業績が全体的に好調であることがわかる。2017年3月期は、SUBARUといすゞ自動車は前年比でプラスだっだが、他の7社は為替差損などによって前年割れとなったことが影響し、全体としても前年を割った。

世界販売台数の推移――販売実績は世界レベルでは好調

2015年3月期~2019年3月期の5年間における、日本の自動車メーカー9社のグローバル販売実績(国内販売と海外販売を合算)は、以下のとおりだ。

日本の自動車メーカー9社による世界販売台数の推移

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※日本の自動車メーカー9社のホームページから、2015年3月期~2019年3月期の世界販売台数(グローバル販売台数)を引用し、各期の販売台数を合計してグラフを作成した
※9社グローバル販売台数の2015年3月期と2016年3月期には、いすゞ自動車の輸出による車両販売台数は含まれていない

世界的に見ると、日本の自動車市場は拡大を続けている。OICA(国際自動車工業連合会)の統計によれば、2008年のリーマンショックに端を発した金融危機の影響で、2008年と2009年の世界の自動車新車販売台数は2年連続で前年割れとなった。2010年に前年比プラスに転じ、2019年まで概ね右肩上がりを維持している。

これに伴って、日本の自動車メーカーの世界販売台数も前年比増を継続。世界最大の市場である中国で自動車販売台数の伸び率が鈍化する中でも、トヨタやホンダのような日本のトップ自動車メーカーは、2019年3月期もハイブリッド車の販売台数を順調に伸ばしている。

近年インドやアセアン市場での販売が堅調であるスズキや、タイでの小型商用車とインドネシアにおける軽量トラックの販売が好調ないすゞ自動車も、日本車のグローバル販売台数の伸長に寄与している。

地域別完成車輸出台数の推移――40%が北米市場、うち9割がアメリカへ

自動車は日本の主要輸出品目だが、日本車の地域別輸出台数はどのように推移しているのだろうか。

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(単位:千台)
  2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
北米 1,662 37.22% 1,749 38.21% 1,898 40.98% 1,925 40.91% 1,929 40.06%
欧州 744 16.66% 737 16.11% 818 17.67% 864 18.37% 885 18.39%
中近東 625 14.01% 684 14.96% 500 10.80% 443 9.43% 476 9.88%
アジア 560 12.55% 529 11.56% 586 12.67% 601 12.78% 635 13.18%
大洋州 375 8.41% 390 8.54% 393 8.49% 434 9.23% 438 9.10%
その他 497 11.14% 486 10.62% 435 9.40% 436 9.27% 452 9.39%
海外輸出台数 4,465 100.00% 4,578 100.00% 4,634 100.00% 4,705 100.00% 4,817 100.00%

※上記「輸出地域別完成車輸出台数の推移地域別販売台数」(グラフ、表)は、JAMA(日本自動車工業会)ホームページ「四輪車の仕向地別輸出台数推移」から輸出台数を引用して作成した

完成車の輸出先の筆頭は、およそ40%を占める北米(そのうち9割は米国)市場である。2016年以降、欧州市場に次いで輸出台数が多いのは、中国や新興国を中心としたアジア市場となっている。

2,日本の自動車メーカー各社の特徴 トヨタ、ホンダ、日産など10社を紹介

日本の完成車組み立てメーカーは9社で、トヨタ自動車の完全子会社であるダイハツ工業を入れると合10 社だ。それぞれの特徴を簡単に紹介しよう。

トヨタ自動車 <7203>――販売台数世界第2位の巨大企業

言わずと知れた、世界でもトップクラスの自動車メーカー。2018年(暦年)の世界合計販売台数は95,055千台(OICAによる統計数値)、そのうちトヨタの世界連結販売台数は10,593千台で11.14%のシェアを誇る。世界の販売台数ランキングでは、1位のフォルクスワーゲンに次いで第2位だ。

ダイハツ工業は完全子会社、日野自動車は50.2%出資の連結対象会社であり、SUBARUやマツダとも資本提携関係にある。また、スズキとも資本提携に関する合意書を締結している。日本の自動車メーカーの要と言っていいだろう。

本田技研工業 <7267>――2019年3月期に過去最高の販売台数を記録

トヨタに次ぐ日本の大手自動車メーカー。2018年の世界販売台数ランキングでは、第8位にランクインしている。

主に二輪事業、四輪事業、パワープロダクツ事業を展開している。2019年3月期の販売台数は、二輪事業20,238千台、四輪事業5,323千台、パワープロダクツ事業6,301千台で、いずれも前年比100%超えと好調だ。同期の四輪事業は、新型車の投入などによって過去最高の販売台数を記録した。

ベトナムやインドネシアを中心とするアジア市場での二輪事業も堅調だ。

日産自動車 <7201>――世界販売台数2位も、大幅減益

日産自動車とルノー、三菱自動車のアライアンスは、2018年の世界販売台数ランキングで第2位。自動運転時代を見据えた「ニッサン インテリジェント モビリティ」を軸とする新商品や新技術の開発に注力している。

2019年3月期は、米国や欧州での販売台数の減少によるグローバル販売台数の前年割れや、元代表取締役会長の会社法違反(特別背任罪)での起訴、2018年12月における完成検査に関する国土交通省からの業務改善指導、原材料価格の上昇などの影響を受け、大幅減益となった。

厳しい経営状況を改善すべく、現在日産自動車ではガバナンス改革、組織改革、事業改革の3本柱からなる事業構造改革を推進中。

スズキ <7269>――販売台数過去最高を更新!インド市場でも存在感を増す

スズキの2019年3月期の四輪事業は、生産台数、販売台数ともに過去最高を更新した。インド市場でも、同期の四輪車販売台数は過去最高を記録した。

スズキの四輪事業における世界販売を牽引するのは、インド市場だ。インド乗用車市場の半数近くを占めるのは、スズキとインド政府の合弁会社であるマルチ・スズキ・インディアで現地生産される小型車である。

日本国内での販売が好調な四輪車は、8割超がジムニーやハスラーなどの軽自動車(2019年3月期実績)。

二輪車についてもインド、インドネシア、フィリピンなどアジアでの販売が好調で、インドにおける販売実績は、2019年3月期に過去最高を記録した。

マツダ <7261>――日本国内は好調、海外販売がやや減

広島に本社を置く1920年創立の老舗自動車メーカー。現在は、トヨタ自動車と資本提携関係にある。

2019年3月期は、日本国内では販売が増加したが、市場規模の大きい中国や米国、オーストラリアでの販売台数が減少したため、グローバル販売は前年比マイナスとなった。改良モデルを投入したクロスオーバーSUVの販売は、好調を維持している。

「ロードスター」に象徴される、独創性の高いデザインやコンセプトのクルマづくりを得意とする。コンパクトカーからハイエンドモデルまで、全グレードに先進安全技術を標準搭載しているのもマツダの特徴と言えるだろう。

SUBARU <7270>――米国での販売比率が6割以上

2019年3月期の連結完成車の世界販売は、前年比6.3%減の1,000千台となった。世界販売台数の66%を米国市場が占めている。自動車事業と航空宇宙事業を2大事業としており、ボーイングの旅客機製造への参画やヘリコプター製造も手掛けるが、連結売上高における自動車部門の割合は、95%超だ。

飛行機や戦闘機を製造した中島飛行機製作所が前身であり、現在も水平対向エンジン搭載車の製造にこだわりを持っている。運転支援システム「アイサイト」や、歩行者保護エアバッグの採用といった安全技術にも強みがある。

現在全社を挙げて、組織風土改革や品質改革、コーポレートガバナンスの強化を推進している。

三菱自動車工業 <7211>――会社単体でも前年を上回る実績

2018年は、三菱自動車とルノー、日産自動車による3社アライアンスで世界販売台数10,757千台を記録し、世界第2位となった。三菱自動車の2019年3月期の世界販売台数は、全市場で前年を上回っている。

「Small but Beautiful」のコンセプトのもと、強みのあるアセアン市場や、販売好調な日本市場の軽ハイトワゴン「eKワゴン」「eKクロス」、刷新を予定している「RVR」などの人気モデルに経営資源を集中し、身の丈に合った収益性の向上と持続的な成長を目指す。

アライアンスを活かし、異業種とも協力しながら、次世代技術や新しいビジネスモデルに取り組む。

いすゞ自動車 <7202>――過去最高の売上高と営業利益を更新!

2019年3月期は、タイでの販売が堅調であったことや、アジアやアフリカ市場の回復による販売増で、過去最高の売上高と営業利益を達成した。

創業以来、大型・中型・小型トラックや大型バスなどの商用車(CV)、小型商用車(LCV)、ならびに自動車用と産業用ディーゼルエンジンを主力製品に位置付けている。

海外仕様のトラックについては、特にアジア市場での中型トラックや、中国と香港市場での大型トラックが好調。オーストラリアとニュージーランドでは、いすゞの大型トラックはトップシェアを誇る。

日野自動車 <7205>――トラックとバス部門の業績が光る

2019年3月期は、国内は小型および大型トラックの需要増によって、日野ブランドのトラックとバスの販売が伸び、シェアも過去最高となった。海外では、インドネシア市場の需要増で販売台数が過去最高となり、米国とタイ市場の販売台数も好調。初めてグローバル販売台数が20万台を超えた。

前身は、1910年設立の「東京瓦斯工業」。その後、純国産トラックやバスの製造を手掛け、トラックとバスの商用車メーカーとしての礎を築いた。

急激な事業環境の変化によるさまざまな課題に対処するため、「Challenge2025」を策定。高度運転支援車両の開発や省燃費運転支援、効率化された物流システム構築などによる価値提供、ビジネス基盤の強化に注力している。トヨタグループ内の協業だけでなく、さまざまな企業との戦略的協業も進めている。

ダイハツ工業――トヨタ自動車の完全子会社となった大阪発メーカー

ダイハツ工業は、「日本の真の工業化には内燃機関の国産化と普及が不可欠」という信念に賛同する学者や、大阪の財界人によって1907年に創業された。

日本初の純国産発動機を開発・製造し、1930年にエンジンメーカーから自動車メーカーに転換して、三輪自動車の生産を開始した。以後「世界中の人々に愛されるスモールカーづくり」にこだわり、軽自動車の国内シェアは13年連続第1位(2019年3月期実績)を誇る。

トヨタグループ内で、トヨタの受託生産ならびにトヨタとSUBARU向けのOEM供給(車両、エンジン)にも積極的。今後は低燃費を極めた軽自動車用エンジンや、スマートアシストのような先進技術を採用した良品廉価の小型車を追求する。

3,自動車メーカーの重要指標「販売台数ランキング」

ここからは、日本の自動車メーカー9社の2019年3月期販売台数(国内および海外)ランキングを見ていこう。

世界販売台数ランキング(2019年3月期実績)

順位 会社名 販売台数(千台) シェア
1 トヨタ自動車 8,977 31.93%
2 日産自動車 5,516 20.07%
3 本田技研工業 5,323 19.37%
4 スズキ 3,327 12.11%
5 マツダ 1,561 5.68%
6 三菱自動車工業 1,244 4.53%
7 SUBARU 1,000 3.64%
8 いすゞ自動車 648 1.94%
9 日野自動車 203 0.74%
合計 27,799 100.00%

※各社ホームページの決算説明会資料、あるいは業績ハイライトなどから連結グローバル販売台数を引用して、ランキング表を作成した
※トヨタ自動車の販売台数は、連結子会社の日野自動車とダイハツ工業の販売台数を含む

販売台数ランキングのトップは自動車メーカーの巨人、トヨタ自動車。日本国内での地位は、揺らぐことはないだろう。販売不振に陥った際も、迅速に立て直すことで業績への影響を最小限に留めている。

2016年3月期と2017年3月期は、米国市場の主力車種であったセダンや・ハイブリッドカーの販売不振や為替差損、諸経費の増加によって2期連続の減収減益となったが、その後売上高や純利益は過去最高を更新した。北米市場に投入した新型SUV「RAV4」などの販売が好調であること、また市場が低迷する中国市場においてもハイブリッドカーが堅調に伸びたことが要因だ。

海外市場の変化に追いつき、世界販売レベルでの販売台数を早期に回復できるトヨタの底力が、販売台数第1位の理由と言えるだろう。

4,自動車メーカーの事業規模がわかる「売上高ランキング」

販売台数同様、どれだけ売れているかを単純に測ることができる売上高ランキング。販売台数との違いも確認しておきたい。

連結売上高ランキング(2019年3月期実績)

順位 会社名 売上高
1 トヨタ自動車 30兆2,256億円
2 本田技研工業 15兆8,886億円
3 日産自動車 11兆5,742億円
4 スズキ 3兆7,572億円
5 マツダ 3兆5,647億円
6 SUBARU 3兆1,605億円
7 三菱自動車工業 2兆5,146 億円
8 いすゞ自動車 2兆1,491億円
9 日野自動車 1兆9,813億円

※各社ホームページの2019年3月期決算短信から連結売上高を引用して、ランキング表を制作

順位は「世界販売台数ランキング」とほとんど同じだが、唯一違うのは第6位と第7位だ。販売台数では三菱自動車が6位、SUBARUが7位だったが、売上高では逆になっている。これは、2社の主力車種の価格帯が違うからだろう。

三菱自動車の国内販売台数の半数以上は、比較的低価格で人気のあるeKシリーズをはじめとする軽自動車。2019年3月期の販売実績を見ると、登録車4万6,674台に対して、軽自動車は5万7,822台となっている。

一方でSUBARUの国内販売は、インプレッサやフォレスターを中心とする登録車が10万9,704台、OEMモデルの軽自動車は2万5,615台である。

5,日本国内の依存度の低さを示す「海外販売比率ランキング」

日本の自動車産業は、2018年の輸出総額が16.7兆円、完成車の輸出額だけでも12.3兆円に上る輸出型産業である。国内と海外を合わせた完成車販売台数における、海外販売比率を見てみよう。

海外販売比率ランキング(2019年3月期実績)     (単位・千台)

順位 会社名 世界販売台数 海外販売台数 海外販売比率
1 三菱自動車工業 1,244 1,139 91.56%
2 日産自動車 5,516 4,919 89.18%
3 いすゞ自動車 648 565 87.19%
4 SUBARU 1,000 865 86.50%
5 本田技研工業 5,323 4,604 86.49%
6 マツダ 1,561 1,347 86.29%
7 スズキ 3,327 2,602 78.21%
8 トヨタ自動車 8,977 6,750 75.19%
9 日野自動車 203 131 64.53%
合計 27,799 22,922 82.46%

※各社ホームページの決算説明会資料、あるいは業績ハイライトなどから連結グローバル販売台数と連結海外販売台数を引用して、ランキング表を作成した
※トヨタ自動車の販売台数は、連結子会社の日野自動車とダイハツ工業の販売台数を含む

海外販売比率が高い日本の自動車メーカーの2トップは、ルノーとアライアンスを組む三菱自動車と日産自動車だ。

三菱自動車のパジェロをはじめとするSUVは海外で根強い人気があり、日本国内での不祥事の影響などによる長引く販売不振を補っている。日産自動車についても、元会長の起訴などによって国内販売が不振だが、需要減の中国市場でも販売は好調、結果として海外販売比率増につながっている。

いすゞは、国内では乗用車の販売を終了しており、現在生産しているピックアップトラックやSUVは海外向けだ。海外では、現在も人気・評価ともに高い。

6,自動車メーカーの価値と規模がわかる「時価総額ランキング」

次は、企業の規模を表す指標である時価総額のランキングだ。販売台数や売上高ランキングとどのような違いがあるか、また何が読み取れるだろうか。

時価総額ランキング

順位 コード 会社名 1/17終値 発行済株式数 時価総額(百万円)
1 7203 トヨタ自動車 7,695 3,262,997,492 25,108,766
2 7267 本田技研工業 3,059 1,811,428,430 5,541,160
3 7201 日産自動車 635 4,220,715,112 2,679,310
4 7269 スズキ 5,027 491,067,800 2,468,598
5 7270 SUBARU 2,858 769,175,873 2,197,920
6 7202 いすゞ自動車 1,215 848,422,669 1,030,834
7 7211 三菱自動車工業 457 1,490,282,496 681,059
8 7205 日野自動車 1,120 574,580,850 643,531
9 7261 マツダ 1,008 631,803,979 636,858

※Yahoo!ファイナンスの「時価総額上位」ランキングから、対象の自動車メーカー9社のデータを抽出して、ランキング表を作成した。

時価総額においても、トヨタ自動車は文字通り「桁違い」だ。ここで注目したいのは、マツダの順位である。マツダは時価総額では第9位で最も規模が小さいが、販売台数・売上高では第5位となっている。

意匠性が高く、外観や内装にこだわり、走る歓びを追求したクルマづくりを続けるマツダ。この姿勢が一定の評価を得ていることが大きな理由と言えるだろう。

7,株を購入する際に見ておきたい日本の自動車メーカー「自己資本比率ランキング」

次は、投資判断においてチェックされることが多い自己資本比率のランキングだ。他のランキングとどのような違いがあるだろうか。

自己資本比率ランキング

順位 会社名 自己資本比率 有利子負債自己資本比率
1 SUBARU 52.89% 9.23%
2 いすゞ自動車 43.63% 30.78%
3 三菱自動車工業 43.37% 27.27%
4 マツダ 4.81% 49.85%
5 スズキ 40.93% 27.95%
6 本田技研工業 40.49% 83.03%
7 日野自動車 40.32% 40.93%
8 トヨタ自動車 38.21% 101.44%
9 日産自動車 27.98% 150.75%

※SBI証券のスクリーニング機能で、「東証一部上場、輸送用機器、自己資本比率、時価総額6,000億円以上」の条件で抽出して、ランキング表を作成した

自己資本比率は資本構成の安全性を表す指標のことで、「自己資本÷総資本」で求められる。つまり、総資本に占める株主資本の割合だ。

自己資本比率上位の自動車メーカーは、他人資本(借入金など)の割合が低い。有利子負債自己資本比率では、SUBARUが9.23%、いすゞは30.78%、三菱自動車は27.27%であり、自己資本に対する有利子負債の割合も相対的に低い。

中堅自動車メーカーは大手メーカーに比べて企業規模や信用力が若干劣ることも、自己資本比率に影響していると考えることができる。

8,転職の際にチェックしておきたい「平均年収ランキング」

日本の自動車メーカーの平均年収は、会社の業績などと相関性があるのだろうか。平均年収ランキングを見てみよう。

平均年収ランキング

順位 会社名 平均年収 売上高ランキング
1 トヨタ自動車 850万円 1
2 本田技研工業 818万円 2
3 日産自動車 815万円 3
4 いすゞ自動車 766万円 8
5 三菱自動車工業 741万円 7
6 スズキ 680万円 4
7 マツダ 675万円 5
8 日野自動車 667万円 9
9 SUBARU 651万円 6

※Ulletの業種「輸送用機器」ランキングから指標「平均年収」を引用して、ランキング表を作成した

平均年収ランキングの上位3社は、売上高でも1~3位にランクインしている。売上高と平均年収には、少なからず相関があると言えるだろう。売上高8位のいすゞ自動車と7位の三菱自動車は、平均年収ではそれぞれ3位と4位だ。

いすゞ自動車は国内では生産・販売をトラックとバスに限定し、タイを拠点とした世界中でピックアップトラックのような貨客兼用車と商用車の販売に力を入れている。得意分野のディーゼルエンジンを柱とした経営戦略が、高い平均年収の理由だろう。

三菱自動車は選択と集中を徹底しており、海外で人気のあるSUV系の車種を集中的に販売、アジア市場へのシフトなど、会社の規模に頼らない戦略を取っている。また三菱グループの一角であることも、平均年収が高い要因の1つと考えられる。

9,自動車産業の中心的存在、自動車メーカーは次世代の社会基盤を構築する

完成車組み立てメーカーは、現在も日本の基幹産業である自動車産業の中核を担っている。

日本の自動車メーカー各社は需要の変化を見極めるだけでなく、100年に一度の自動車業界大変革時代に向けて、

・自動運転技術や安全技術
・環境問題・エネルギー問題への対応
・物流システムの再構築
・新たな交通インフラサービスの展開

など、これまでの自動車メーカーの枠に留まらないアクションが求められている。

今後は、本稿の各ランキングの上位に名を連ねるトヨタ自動車だけでなく、ホンダや日産、スズキ、マツダなど、それぞれの強みを活かした事業展開に注目していきたい。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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