管理部門がエリート化すると、会社はおかしくなりやすい

先にも述べましたが、総務や人事というのは、法律などに詳しく、論理的で頭のいいタイプが行く傾向があります。

さらに大きな組織の場合には、各部署間の調整を行ったり、会社の今後の戦略を考えたりする部門、経営企画室のような部署があり、そこには頭のきれる人が回されていきます。

そうすると、次第に管理部門がエリート化していくということがあります。

頭の良い優秀な人材を集めた部署ができることそのものは悪くないのです。優秀な人たちがそこで切磋琢磨することで、会社を伸ばしていく知恵がいろいろ出るでしょう。

しかし、現場の経験をしておらず、ずっと人の管理をすることばかりを仕事にしてきた人は、大事なことが欠落しがちです。お客さまに接するには何が大事か、現場で働く人は何に困っているのか、といった大切なことが分からない。事業の本質の部分が見えないのです。

頭脳明晰で、現場を知らずに管理畑一筋でやってきた人が、社内でうまく立ち回って出世し、経営戦略を考えたり人を動かしたりするようになると、会社はどこかおかしくなります。頭で考えたように会社を動かせる、人を動かせる、と思ってしまうからです。

ですから、企画部門だとか管理部門が社内で幅を利かせ、偉そうにしている会社というのは、ちょっと危ないです。自分たちが会社を動かしているかのように勘違いしている可能性があります。製造や営業の現場などお客さまにかかわっている部署が活躍してくれているから自分たちがいられるのだ、という基本的なことが分かっていないと思われます。そうなると現場は反発し、お客さまからも見放されることとなりかねません。

優秀な人を、いずれは経営を担う人材として育てていこうとするならば、営業や製造の第一線の現場でしっかりと経験を積ませる。その後で企画などの管理部門に回すことです。

良い会社、将来をしっかり考えている会社は、そうやって俯瞰的な視点を持つ、どちらの立場も分かる人を育てています。そうすると、人材は「人財」になるのです。

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表
1957年、大阪府生まれ。1981年、京都大学法学部を卒業後、東京銀行に入行。1986年、米国ダートマス大学経営大学院でMBAを取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務や国際コンサルティングを手がける。1993年には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1996年、〔株〕小宮コンサルタンツを設立。『小宮一慶の1分で読む!「 日経新聞」最大活用術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。(『THE21オンライン』2019年12月10日 公開)

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