お金に関する不安や心配事は、所得水準に関わらず誰にでもあるものだ。
経済的なストレスとなる要因「ファイナンシャル・ストレッサー(Financial Stressor)」との上手な付き合い方を知ることにより、ストレスを軽減し健全な経済状態を維持することが可能になるという。
ファイナンシャル・ストレッサーとは?
衣食住のための生活費から、子どもの教育費、ローンの返済、老後の貯蓄まで、生きていく上でお金は必要不可欠な存在だ。不可欠な存在であるがゆえに、「必要な額が手元にない」といったトラブルや、「もしも、手持ちのお金がなくなったらどうしよう」といった不安に悩まされることになる。 こうした金銭面から生じるストレスの要因を、ファイナンシャル・ストレッサーという。
約7割が「お金のストレスを感じている」
ファイナンシャル・ストレッサーは、年齢や性別、職業を問わず、世界中に蔓延している。
米保険企業ジョン・ハンコックが2019年、3000人以上の労働者を対象に実施した調査では、68%が「経済的な不安がストレスになっている」と答えた。2014年の同社の調査と比較すると、2ポイント増えている。
興味深いのは、家計が改善されているにもかかわらず、経済的な不安は増しているという事実だ。「経済的にある程度・非常に余裕がある」と感じている回答者は64%と9ポイント増えた一方、「(将来的に)経済的に不安にならないか心配」と感じている回答者は11ポイント増え、71%に達している。
この調査結果から、現在の経済状況にかかわらず、多くの人がお金の不安を抱えている事実が分かる。
純資産1000万ドル以上でも、「お金の不安を抱えている」
それでは、ミリオネアクラス(純資産100万ドル以上)の富裕層になると、経済的な不安が消えるのかというと、決してそうではない。
米ウェルスマネジメント企業ブライトン・ジョーンズの金融教育部門ヴァイス・プレジデント、マニシャ・タコール氏いわく、「純資産1000万ドル以上を保有する顧客ですら、お金の使い方に気をつけていると同時に、将来に対する経済的な不安を抱えている」という。
医療費が高額な米国の調査であるため、老後の医療費や介護費への懸念も大きいものと推測される。同国における特別養護老人ホームの平均費用は、個室ならば1カ月8365ドル、年間10万ドルを超えている。単純に計算すると、10年間で100万ドル以上が必要だ。
介護保険もあるが、年齢とともに掛け金が上がる上、保障期間が通常3~5年に限られていたり、補償額が1カ月最高5000ドルに限られていたりする商品もある。長期間にわたる介護が必要になった場合、財産を相当食いつぶすことになる。
また、財産が多ければ多いほど、潜在的なインフレなどが財産に及ぼす影響も心配だろう。
ファイナンシャル・ストレッサーが心身に及ぼす悪影響
過度なストレスが生産性や集中力の低下、鬱、睡眠不足など、心身に様々な悪影響を与えることは、数々の調査から明らかになっている。 ストレス・マネジメント関連の著者である米ウェルネスコーチ、エリザベス・スコット氏は、特に経済的なストレスによる症状は深刻である点を指摘している。