2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されてから、まもなく1年。“働きすぎ”の日本人を休ませるべくして始まったのが、年次有給休暇の義務化だ。簡単に言えば、「10日以上年休がある人に、必ず5日以上休みを取らせる」ことを会社側に求めるというものだが、浸透しているとは言い切れないのが現状だろう。そこで、海外や成功者の事例から休むことのメリットを探った。

年休の取得が「強制的に」

海外から学ぶ休暇の取り方
(画像=Schira/Shutterstock.com)

さて、「働き方改革関連法」による改正内容は細部まで含めればいろいろあるのですが、全体像を概観すると、以下の三つの方向性に分けられます。

(中略)
また、年次有給休暇(年休)の取得率を高めるための改正も行われました。具体的には、1年間に新たに10日以上の年休を取得できる労働者に対し、そのうち5日の年休については、会社側が時季を指定して取得させることが義務化されました。つまり、強制的に年休を取らせなくてはいけなくなったのです。

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4月1日より施行!「働き方改革関連法」で何がどう変わる?(2019/03/31公開)

休みの時季は働く側が指定可能

とはいえ、「会社に勝手に休みの時期を指定されるのは困る」という人もいるでしょう。今回の法改正では、使用者がこれらの規定に基づき年休を与える場合は、あらかじめ、労働者に対して年休の取得時季に関する意見を聴取し、聴取した意見を尊重するように努めることが省令で定められています。

つまり、会社側が一方的に「○月○日に休んでください」と決めるのではなく、事前に社員の意見や予定を聞いた上で「ではこの日に休んでください」とするのも、時季の指定となります。また、年休をすでに5日以上取得している社員に対しては、時季指定は不要です。

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年休取得がついに「義務化」。4月1日から休み方はこう変わった!(2019/5/12公開)

有給取得率の現状は世界“最下位”

今回は世界各国の有給取得率に着目し、日本人が本当に働きすぎなのか解説します。

旅行・宿泊予約サイト大手の米エクスペディアが、世界における有給休暇取得率の2018年版データを公表。日本やアメリカを含む19ヵ国・地域のデータが紹介されているのでランキング形式で見ていきます。

残念ながら19ヵ国のうち日本は最下位でした。日本の最下位は3年連続で、公表されている2008年以降のデータでは、2008年から2013年も最下位です。2014年と2015年には下から2位と最下位は脱出したものの、2016年からはまた最下位でした。

日本では働き方改革が推進され、時短勤務に関する意識も変わりつつありますが、まだまだ他の国に比べると有給休暇の取得率が低いことがわかりました。しかし本記事で取り扱ったデータは2018年度版のデータであるため、働き方改革の有給取得5日制度が2019年からスタートしたことを鑑みると、今後改善される余地が十分にありそうです

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日本が最下位?有給所得率の最新国別ランキング(2020/02/05公開)

海外に学ぶ休みづらさ解決のヒント

日本人が「休み下手」なのは、そもそも仕事や人生に対する考え方が、海外の一流のビジネスパーソンたちと違うからだと、長年、外資系企業でエグゼクティブたちの秘書を務めてきた能町光香氏は話す。なぜ、海外のビジネスパーソンは休暇を重視しているのだろうか?

「日本人は、休むことにとかく罪悪感を覚えがちです。しかし外国人は、休みを必要不可欠なものだと捉えています。

働き方改革が叫ばれる中でさえ、「休みづらさ」が払拭されない日本。その最大の原因は、日本人が長期休暇の「真のメリット」を知らないことにあると能町氏は指摘する。「そのメリットとは、創造性が湧いてくることです。創造性もまた、日本人が弱点とする部分ですね。海外のエグゼクティブは、まとまった休みを取ることでクリエイティビティが格段に増すことを、経験則として知っているのです」実際、休暇直後には上司から「アイデアのシャワー」を浴びせられることが常だったそうだ。

休息や休暇がもたらすものは、本人の創造性だけではない。「リーダーが休むと、部下が育ちます。上司が不在の間のオペレーションを考え、他部署と連携して意思決定する。その中で、次代を担う人たちのリーダーシップが磨かれるのです」もちろん、それができるようにするためには、日頃からの業務内容の透明化・合理化が欠かせない。

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海外の一流の「休み方」は、日本人とどこが違うのか?(2019/07/21公開)

自分の人生を生きるための休暇

経営コンサルタントといえばハードワーカーというイメージがあるが、マッキンゼーなどで活躍した世界的コンサルタント・大前研一氏は30代の頃から計画的に長期休暇を取り、数多くある趣味を楽しんでいる。ビジネスパーソンが休みを取る意義とは?

しかし、現実には、自分の都合で有給休暇を取るのは気が引けるという人が多いのではないだろうか。「世界の有給休暇消化率を見てみると、ブラジル、フランス、スペイン、香港は100%。イタリアや米国も70%以上。これに対し、日本は50%と極端に低くなっている。有給休暇というのは労働者の権利なのだから、『ここは休もう』と決めたら、理由の如何にかかわらず、堂々と休んでいいはずなのである。それなのに休めないのは、皆が働いているときに休むのは良くないことと思い込んでいるからだ。さらに、『自分だけでなく、上司も同僚もそう思っているに違いない』と勝手に忖度して、身動きが取れなくなってしまっている。周囲にどう見られているかばかりを気にして、肝心の自分の人生を生きていない。そういうムラ社会のメンタリティを持った人が、日本の会社には実に多い。

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有給休暇を遠慮せず使って、やりたいことを「今すぐ」やれ!(2019/08/27公開)

新たなライフスタイルの提案も

休暇の間に旅先で仕事をする「ワーケーション」や、出張の前後にレジャーを楽しむ「ブリージャー」など、新たなライフスタイルに注目が集まっています。長時間労働の是正や柔軟な働き方の推進を目指す「働き方改革関連法」が2019年4月に施行され、こうした多様なワークスタイルが生まれている中、働き方改革の具体的な実現方法として、実施の上での条件や環境整備について考えます。

ワーケーションは、「ワーク」(仕事)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた米国発の新しいワークスタイルです。主に自宅で働く在宅勤務やリモートワークとは異なり、場所にとらわれず、旅行地や帰省先などで休暇を過ごしながら仕事をすることが認められます。有給休暇の取得を促す動きが活発化している日本でも、このような働き方が注目されるようになりました。

ワーケーションは、日本航空やマイクロソフトが導入して話題となり、大手企業やIT企業にも広がっています。地方自治体で受け入れを推進する動きもあり、地方創生につながるとの期待も高まっています。

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休暇の合間に仕事 新ライフスタイルで進む働き方改革(2019/11/15公開)

人生を輝かせるための時間に

年次有給休暇という労働者に与えられた権利をどのように使うのかは、あくまでも自分次第だ。自分の人生をより輝かせるための時間として、周りの目を気にすることなく、有効に使ってほしい。