アメリカの有名ハリウッドスターが自家用ジェットで来日したり、カルロス・ゴーン前日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)が自家用ジェットに隠れて国外逃亡したりと、富裕層にとって自家用飛行機を保有して世界を飛び回るのはステータスの1つ。そこには富裕層ならではの趣味と実益を兼ねた資産運用の一環という側面もありそうだ。
大空を自由に飛び回るという贅沢は、「夢のまた夢」と思っていないだろうか。しかし日本でも自らパイロットになり小型飛行機を手に入れることは可能だ。大阪府の八尾空港に拠点を置き、小型飛行機やヘリコプターを運航し、操縦訓練や遊覧飛行などの事業を行っている第一航空株式会社によると、「自家用操縦士技能証明」の免許を取得すれば、個人の趣味としてフライトを楽しむことができると言う。商業用で金をもらうことはできないが、無償であれば、パイロットとして、友達や家族を乗せて空を飛ぶことができるのだ。
では、実際に小型飛行機を保有するためにかかる費用はいくらになろうだろうか。
訓練コース料金、国内で500万円超
第一航空の訓練コースの参考料金は、国内で自家用固定翼が100時間で約557万円、自家用回転翼(ヘリコプター)が100時間で約654万円。高額だが、ある程度稼いでいる人ならば全く手が届かないという訳でもない。
一方、アメリカであれば、英語の能力が必要だったり、別途に渡航費・滞在費がかかるものの、自家用固定翼が約130万円、自家用回転翼が約190万円と約3分の1ですみ、約2か月程度で取得できるという。若い人なら海外留学などの機会に資格の1つとして免許を取得すると得かもしれない。
第一航空は、「個人差はあるが、アメリカの方が日本よりもコストが安く、短期間で取れるし、天候も訓練をやりやすい面がある。アメリカで免許を取る場合は、日本の免許へ書き換える手続きなども行っている」と説明した。
免許を取得した後は、非常に高価なイメージが強い飛行機の購入になるが、いったいいくらぐらいなのか。小型飛行機の世界3大メーカーは、1位がセスナ社、2位がパイパー社、3位がビーチクラフト社となっている。インターネットで中古市場を調べてみると、人気のセスナ機はさすがに高く、1980年製のセスナP210(6人乗り)の中古価格は、約1億431万円(94万5000米ドル)。1966年製のセスナ310Kが約1045万円(9万4900米ドル)。
自家用小型飛行機、実物資産としての価値も
最も戸建て・マンションなどの不動産、高級車・船舶、美術品、宝飾品・時計・貴金属などと並び、自家用小型飛行機は実物資産としての価値があるとの意見がある。実物資産は、インフレ上昇に強く、貨幣の価値が下落する局面にも対応できるメリットがあり、転売できるため、分散投資の一環にもなるからだ。
航空機売買・整備などを行う株式会社ジャプコン(岡山県岡山市)は、「ビジネスジェットは、中古機市場が確立されており、使用年数が経過しても価値が下がりにくいため、数年経っても高値で売却でき、資産価値が高いのもメリット」と指摘する。
東京都内で開業医をしている田中正明氏(仮名、60代半ば)は、「パイパー社の小型飛行機を調布飛行場に保有していたが、アメリカ人に売った。中古でもアメリカ人なら買ってくれる人がいる。人気のセスナ機などは、かなり古くても高値が付くようだ。また調布飛行場は、駐機場代が月2万円程度と安く、都内の駐車場代(3万円程度)と大きく変わらなくて便利」と語った。
ただ調布飛行場によると、「飛行機の駐機場代は、東京都営空港条例で決まっており、重量によって変わる」と言う。現実的には、飛行機の整備・点検などの維持費や燃料代などを考慮すれば、1人で所有するより、同じ趣味の仲間による共同所有で楽しむという選択肢もありだろう。