40代で転職を考えている人もいるだろうが、気になるのは給与だ。40代が転職で給与アップを狙うのは難しいのだろうか。今回は40代の転職時の給与の増減や給与交渉の仕方について詳しく見ていこう。

40代の転職が難しいと言われる理由 希望と市場価値のギャップが大きい

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(画像=fizkes/Shutterstock.com)

日本の有効求人倍率は2009年を境に上昇し続けており、2018年は1.61倍と売り手に有利な市場だ。有効求人倍率の上昇に伴い、40代、50代の求人も増えていると言われている。

だが一般的には転職をするなら年齢が若いほうが有利とされており、40代での転職は難しいと考えられている。では、難しいとされる理由にはどのようなものがあるのだろうか。

求人サイト大手エン・ジャパンの調査では、転職が難しい人の特徴として「本人希望と転職市場での市場価値にギャップがあること」が一番にあげられている。(※エン・ジャパン「転職コンサルタントの本音 第54解転職が難しい人について」より)

40代の求人は20代や30代に比べ少ないと言われている。また転職者も大企業でのビジネス経験が長いと、次の転職先にも高い給与や条件を求めてしまうことが少なくない。こういったことで企業と転職者の間にギャップが生まれることもあるだろう。

また、企業が20代と30代、40代の転職者に求めるものはそれぞれ違っている。20代ではポテンシャルが求められる傾向があり、30代では即戦力としての経験やスキルが期待される。

40代では、リーダーシップやマネジメント能力を発揮して企業の業績に貢献することに加え、将来の経営幹部としての未来を見据えた視点を持てるかなどが必要とされる。

このように転職者の年代によって、企業が求めるものが違うことを理解していないと、自己アピールが的外れなものとなり内定獲得が難しいと考えられる。

40代の転職でも約4割の人の給与が上昇している

求人サイトdodaの調査によると、転職で年収がアップした人の平均年齢は31.1歳であった。年収アップ成功者の平均アップ額は「56.7万円」、最大アップ額は「440万円」となっている。

しかし、これは年収がアップした人だけを対象に調査したデータであり、転職をした全ての人が給与アップしているわけではない。

厚生労働省によると、転職により賃金が増加したと回答したのは全体の40.4%であり、反対に減少した人は36.1%であった。

年齢階級別では、以下のようになっている。

【年齢階級別転職者の労働賃金の変化】

年齢 増加 変わらない 減少
合計 3割以上 3割未満
1割以上
1割未満 合計 3割以上 3割未満
1割以上
1割未満
30~34歳 44.4% 9.4% 20.9% 14.2% 22.2% 32.9% 6.2% 17.4% 9.3%
35~39歳 43.3% 8.4% 18.6% 16.3% 22.2% 33.1% 9.4% 15.6% 8.1%
40~44歳 43.7% 10.0% 20.2% 13.5% 21.8% 33.0% 7.9% 16.7% 8.5%
45~49歳 36.2% 9.6% 17.5% 9.0% 23.7% 39.3% 10.8% 17.4% 11.2%
50~54歳 33.9% 11.7% 15.5% 6.8% 18.4% 46.6% 15.6% 21.4% 9.5%
55~59歳 28.4% 7.7% 13.5% 7.2% 25.2% 45.9% 13.2% 28.1% 4.7%
60~64歳 18.4% 5.2% 7.7% 5.5% 20.2% 59.9% 36.0% 20.9% 3.1%
65歳以上 29.2% 8.2% 13.4% 7.6% 14.9% 52.9% 19.9% 16.7% 16.3%

※厚生労働省「平成27年転職者実態調査の概況」より筆者作成

統計からは40代前半の43.7%、40代後半では36.2%が転職で賃金が上昇したと回答しており、30代と比べると40代後半以降から賃金が上昇した人の割合はやや減少していることがわかる。給与アップを目指して転職をする場合には40代前半までに転職するほうがやや有利であるといえるだろう。

しかし40代後半でも3分の1の人は転職により給与がアップしている。給与アップのポイントを押さえていれば、転職先での給与のほうが高くなることも十分にありえるだろう。

40代が転職で給与をアップさせるための4つのポイント 企業選びは入念な準備を

では40代が転職で給与をアップさせるためにはどのようなことに注意して企業選びを進めるべきなのだろうか。ここでは給与アップのためのポイントを4つ紹介しよう。

(1)大手企業や上場企業にこだわらない

大手企業や上場企業では多くの場合、しっかりとした給与規定が定められているため、より給与水準が高い企業に転職することで給与がアップできる可能性が高い。

しかし、自分が希望する大手企業や上場企業で必ずしも希望の給与条件で転職できるとは限らない。大手企業の求人数は限られており、多くの人が応募するからだ。新卒の求人においても、大企業の求人倍率は0.37倍、中小企業の求人倍率は9.91倍と差は歴然である。

大手企業よりも中小企業のほうが人材が足りておらず、役職や給与などの待遇面で勝る場合もある。転職先を検討する際には企業のネームバリューだけにこだわらず、業務内容や働き方などさまざまな側面を比較し、企業の選択肢を広げることも大切である。

(2)実力重視の評価制度やインセンティブがある会社に転職する

年功型の給与体系を採用する企業に転職する場合、勤続年数では転職者のほうが不利となるため年収アップにつながらないケースがある。実力重視の評価制度やインセンティブがある企業に転職することで40代でも給与アップを目指すことができる。

(3)これまでのスキルや経験が活かせる職種・業界を選ぶ

厚労省の調査によれば、今後3年間に転職者を採用する予定の転職者の職種は、「専門的・技術的な仕事」とする事業所割合が 45.1%で最も高い。

dodaの調査でも、専門性の高い職種では転職後に給与アップしやすくなっている。転職は新たなチャレンジではあるが、これまで積み上げたスキルや経験、資格などを活かせる職種や業界を選ぶことで給与アップはしやすくなる。

自分のスキルや経験を面接でもしっかりアピールできるようにキャリアの棚卸しをしておくことも必要だ。

(4)転職エージェントを利用する

在職のまま転職活動を進める場合、日常の業務に追われてなかなか業界研究や企業研究、応募企業との連絡などの時間が取れないといったことがある。そのような場合には、「転職エージェント」を利用するのも一つの方法だ。

転職エージェントは、応募者に代わって給与や待遇などの条件の交渉や面接の日程の調整などを企業と行ってくれる。また転職サイトなどでは公開されていない求人情報も持っており、自分では探せない高待遇の求人に出会えるのも魅力だ。

自身の市場価値についてもアドバイスを行ってくれるため、転職経験が少ない人は活用するのもよいだろう。

転職で給与アップしやすい業界は?商社、金融、建設など

ここまで40代が転職で給与アップするためのポイントを見てきた。では40代の転職で給与がアップしやすい業界はあるのだろうか。dodaが調査した「業種別平均金額アップ率ランキング」の結果は、以下の通りであった。

【業種別平均金額アップ率ランキング】
1位:専門商社……15.0%(62.9万円)
1位:人材サービス/アウトソーシング/コールセンター……15.0%(57.2万円)
3位:金融……14.9%(58.3万円)
4位:建設/プラント/不動産……14.6%(59.8万円)
5位:総合商社……14.3%(55.4万円)

※dodaエージェントサービス「転職で年収アップするのはこんな人 年収アップ成功者に見る傾向と対策」より

また給与アップした人の転職前の業種を調べたデータでは「メーカー」に努めていた人が一番多く23.0%を占めた。

ほとんどの商社やメーカー系の企業では、給与規定が明確に定められており、役職や年齢、勤続年数などによってある程度給与が決まる。同じ業界でも給与水準のより高い会社を選んで転職することで、給与アップしやすいと推測される。

今回挙げた業界は給与アップがしやすい一例だが、他の業界でも給与水準のより高い企業へ転職できれば給与アップできると考えられる。

転職で給与アップしやすい職種は?専門職が有利だが営業もアップしやすい

それでは業界だけでなく職種でも給与アップしやすいものはあるのだろうか。dodaが調査したデータの「職種別平均金額アップ率ランキング」の結果は、以下の通りである。

【職種別平均金額アップ率ランキング】
1位:金融関連専門職種……20.6%(92.6万円)
2位:医療系専門職種(医療/介護/福祉)……15.0%(67.6万円)
3位:技術系職種(建築/土木/プラント/設備)……14.9%(65.2万円)
4位:営業職……14.7%(59.5万円)
5位:技術系職種(素材/化学/食品/その他)……14.2%(58.9万円)

※dodaエージェントサービス「転職で年収アップするのはこんな人 年収アップ成功者に見る傾向と対策」より

また、年収アップが最も多かった転職前の職種は「営業系」で32.0%であった。「営業職」の場合には実績や成果で評価されることに加えて、インセンティブの有無などによっても給与に大きな差が生まれるため、実力・実績が収入の差に直結しやすいといえる。

「営業職」以外の上位は、専門性の高い職種であり、転職で重視されるスキルや知識、資格などが豊富なためより良い条件で転職できているものと考えられる。

40代で転職する際におすすめの転職エージェント3選

転職エージェントにはさまざまな会社があるがそれぞれの会社が持つ求人には特徴がある。そのなかでも今回は40代でも給与アップが期待できるハイクラスの求人を紹介する転職エージェントを3つ紹介しよう。

(1)JAC Recruitment

「JAC Recruitment」は、管理職や専門職、技術職など高収入層に特化した転職エージェントだ。30~50代の転職を中心に扱っており、取引先企業には東証一部上場の大手企業や有名企業、外資系企業が多い。また、一人の担当者が企業側と応募者側の両方を担当するため、求人の詳細や企業の情報を知ったうえで求人を紹介してくれる。

(2)ビズリーチ

「ビズリーチ」は、管理職や専門職などハイクラスに特化した転職エージェントである。経営幹部などプロフェッショナル向けの求人を多く扱い、年収1,000万円を超える求人が扱いの3分の1以上である。また、外資系企業や海外勤務などグローバルな求人も多く扱っている。

(3)CAREERCARVER

「CAREERCARVER」は、リクルートが運営するハイクラス向けのヘッドハンティングサービスで年収800~2,000万円の求人を多く扱っている。他の転職エージェントとは異なり、登録されている約600名のコンサルタントから自身の担当者を指名することができるといった特徴がある。

40代での転職はこれまでのスキルを活かしてよりハイレベルを目指そう

一般的に転職では、20~30代前半までの若いうちが有利と言われている。しかし、40代でも転職によって給与をアップさせることは可能である。これまで積み上げてきた経験やスキルを活かして、ハイレベルな企業への転職を目指すとよいだろう。

文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES

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