(本記事は、三木 雄信氏の著書『孫社長のYESを10秒で連発した 瞬速プレゼン』すばる舎の中から一部を抜粋・編集しています)

「瞬速プレゼン」は〝HOW〟よりも〝WHAT〟

孫社長のYESを10秒で連発した 瞬速プレゼン
(画像=PIXTA)

孫社長がトランプ氏と会談したエピソードから、わかることがあります。

それは「『どう伝えるか』より、『何を伝えるか』が大事である」ということです。

孫社長が相手のイエスを即座に勝ち取れるのは、口がうまいからでも、トークスキルが特別に優れているからでもありません。

勝因はただ一つ、「相手が求めることを話す」だけです。

そもそも、海外の要人を相手にプレゼンするとき、使うのは英語です。

孫社長はアメリカに留学経験がありますが、それでもネイティブに比べれば英語は流暢(りゅうちょう)ではありませんし、使う語彙や表現も限られます。

それでも、どんな大物からも短時間で了承をとりつけてしまうのですから、話し方そのものがうまいかどうかは二の次だということです。「瞬速プレゼン」では、「HOW」よりも「WHAT」が重要である。

これがコミュニケーションを高速化する大前提です。

普段の仕事で 「なかなか相手に承認してもらえない」という人は、「相手が求めることを伝えていない」というのが最大の原因です。

とくに問題なのは、「情報のレベル」がずれていることです。

相手がどんな情報を欲しがるかは、その人の立場によって変わります。

たとえば、会社全体を見て判断しなくてはいけない社長と、自分のチームが関わる範囲のことを判断したい課長とでは、欲しがる情報は当然違ってきます。

ところが多くの人は、「自分のレベル」の情報をそのまま相手に伝えてしまいます。

現場の社員が課長に報告する場合、伝えるのはたいてい「担当レベル」の情報だけです。

しかし課長は、課全体のことを判断するための情報を求めています。つまり「管理職レベル」の情報を欲しがっているのです。

そこで「担当レベル」の情報だけ伝えられても、「これだけで課全体のことを決められるはずがない」と結論づけるしかありません。

なかなか上司の承認をもらえないのは、そのためです。

孫社長への報告には「数字」が必須

ソフトバンクでは、孫社長が経営幹部やマネジャーたちに、数字に裏づけられた論理的な説明をするよう徹底して求めます。「今月の新規顧客獲得数は1万人です」と伝えるだけでは不十分。それは「現場レベル」の情報でしかありません。

「なぜ1万人なのか?」
「2万人に増やすにはどうすればいい?」
「3万人は狙えないのか?だとしたらその理由は?」

こうして孫社長にどんどん突っ込まれ、その場で答えられなければ即刻退場です。

しかし、それも当然のこと。

孫社長が求めるのは「社長レベル」の情報だからです。

それを提供できない人間が、「来月の新規顧客獲得数も、目標は1万人でいいでしょうか」と聞いたところで、孫社長からイエスをもらえるはずがありません。

「情報のレベル」のズレを解消しない限り、コミュニケーションを高速化することはできないということです。

また、「行動に結びつく情報が含まれていない」のも、承認をもらえない大きな理由です。

コミュニケーションとは「次のアクションを引き出すこと」です。

上司や取引先の承認をもらうのも、「自分や会社が次にどう動けばいいか」を決めることが目的のはずです。

しかし、相手が次の行動を判断するには、それに見合う情報が必要です。

そのポイントを外していたら、いくら情報をたくさん伝えても、相手は決断のしようがありません。

逆に「これさえ揃っていれば、相手はゴーサインを出すしかない」という情報を伝えれば、こちらが思う通りに承認をもらえるわけです。

これもやはり、「HOWよりWHAT」がカギになります。

とはいえ「社長や部長がどんな情報を欲しがっているかわからない」という人も多いでしょう。

相手に合わせて、どのように「情報のレベル」を変えていけばよいか。

その具体的な方法は、次で説明します。

ここではまず「何を伝えるか」の重要性をしっかりと認識してください。

孫社長のYESを10秒で連発した 瞬速プレゼン
三木 雄信 (みき・たけのぶ)
1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所㈱を経てソフトバンク㈱に入社。ソフトバンク社長室長に就任。孫正義氏のもとで、マイクロソフトとのジョイントベンチャーや、ナスダック・ジャパン、日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)買収、およびソフトバンクの通信事業参入のベースとなった、ブロードバンド事業のプロジェクトマネージャーとして活躍。2006年に独立後、ラーニング・テクノロジー企業「トライオン株式会社」を設立。1年で“使える英語"をマスターする「One Year English プログラム」“TORAIZ"を運営し、高い注目を集めている。自社経営のかたわら、東証一部やマザーズ公開企業のほか、未公開企業の社外取締役・監査役などを多数兼任。プロジェクト・マネジメントや資料作成、英語活用など、ビジネス・コミュニケーション力向上を通して、企業の成長を支援している。多数のプロジェクトを同時に手がけながらも、ソフトバンク時代に培った「瞬速プレゼン」を駆使し、現在は社員とともに、ほぼ毎日「残業ゼロ」。高い生産性と圧倒的なスピードで仕事をこなし、ビジネスとプライベートの両方を充実させることに成功している。著書には、『頭がいい人の 仕事が速くなる技術』(すばる舎)、『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA』(ダイヤモンド社)、『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』『【新書版】海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる』(ともに、PHP研究所)、『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』(東洋経済新報社)など多数。

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