相続税対策にはさまざまな方法がありますが、不動産の活用は特に大きな節税効果を得られます。場合によっては、現預金でそのまま相続するケースと比べて相続税評価額を7割以上圧縮できることも可能です。しかしなぜ不動産を活用すると相続対策に効果的なのでしょうか。本記事ではその理由と活用事例を紹介します。

目次

  1. 1.不動産投資が相続税対策になる3つの理由
    1. 1-1.そもそも不動産は現預金より評価額が低い
    2. 1-2.借地ならさらに評価額が下がる
    3. 1-3.小規模宅地等の特例を受けられる
  2. 2.不動産の相続税評価額を計算する4ステップ
    1. ステップ1.路線価から土地の評価額を出す
    2. ステップ2.固定資産税評価額から建物の評価額を出す
    3. ステップ3.賃貸住宅の評価額を計算する
    4. ステップ4.小規模宅地等の特例を適用する
  3. 3.不動産投資で相続税対策をする際の3つのリスクと対策
    1. 3-1.財産の分割が難しい
    2. 3-2.不動産ばかりだと納税資金が不足する
    3. 3-3.賃貸経営がうまくいかず収益が上がらない
    4. 3-4.相続人が不動産投資に興味がない場合も
  4. 4.まとめ

1.不動産投資が相続税対策になる3つの理由

不動産,相続税対策
(画像=focal point/Shutterstock.com)

相続税対策というと贈与を思い浮かべる人が多いかもしれません。毎年少しずつ子どもに資産を移転していく贈与は、長い目で見れば確かに効果的です。しかし資産が一定規模を超えていると贈与だけではとても相続税対策をしきれなくなります。また「時間をかけずに一気に対策したい」といったケースには、贈与はあまり向いていません。

そんなときは、不動産を用いた相続税対策を検討しましょう。不動産であれば時間をかけずとも一気に相続税対策を進めることが期待できます。なぜ不動産は相続税を節約できるのでしょうか。それは相続税評価額の計算上、不動産は時価(市場で売買されている価格)よりも評価額のほうが大幅に低くなるからです。

相続税の計算では、相続財産の評価額が高くなるほど税率が上がり納税額が増えます。したがって相続財産を圧縮することが相続税の節税に直結するのです。時価よりも大幅に相続税評価額を低く計算できる不動産は、現預金や株式などと比べて相続税対策に優れた資産といえるでしょう。不動産の相続税評価額が低い理由は、大きく分けると以下の3つです。

1-1.そもそも不動産は現預金より評価額が低い

現預金や有価証券などは、現在の価格がそのまま相続税評価額になり、その評価額に対して相続税がかかってきます。しかし不動産の場合、時価がそのまま相続税評価額にはなりません。土地であれば時価の80%前後、建物であれば時価の70%前後の評価額となることが多いでしょう。例えば現金で1億円を持っていたら相続税評価額は1億円です。

しかし現金を不動産に替えておけばそれだけで相続税評価額が7,000万円前後になることもあります。

1-2.借地ならさらに評価額が下がる

アパートなどの賃貸物件の場合、権利が制限されるとみなされるため、土地や建物の相続税評価額をさらに下げることができます。

1-3.小規模宅地等の特例を受けられる

事業用または居住用の土地を相続した場合、一定の面積までの部分については、相続税評価額を大幅に減額することができます。減額の幅は、自宅用の土地の場合80%、貸付事業用地(アパート、駐車場などの土地)の場合50%です。

小規模宅地等の特例の適用条件

相続する土地の種類限度面積減額される割合
自宅などの土地400平方メートル80%
アパート、駐車場など(貸付事業用宅地)400平方メートル80%
事務所や店舗などの土地(特定事業用宅地)200平方メートル50%

2.不動産の相続税評価額を計算する4ステップ

不動産,相続税対策
(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

土地や建物など不動産の相続税評価額を計算する際は、以下のようなステップで計算します。

ステップ1.路線価から土地の評価額を出す

まず土地の評価額です。土地は路線価を用いて相続税評価額を算出します。路線価とは、道路に面した土地の1平方メートル当たりの評価額です。国税庁のホームページもしくは一般財団法人 資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」で確認でき、土地の形によって多少微調整が必要な場合があります。

一般的には路線価に土地の面積をかけることで簡易的に土地の相続税評価額を算出可能です。このようにして計算すると土地の相続税評価額は時価(市場で売買されている価格)よりも2割程度低くなります。

ステップ2.固定資産税評価額から建物の評価額を出す

固定資産税評価額は、毎年5月ごろに各市区町村から送られてくる固定資産の課税明細で確認できます。建物の相続税評価額は、固定資産税評価額をそのまま用いることが一般的です。

ステップ3.賃貸住宅の評価額を計算する

人に貸している「貸家建付地」の場合、自分で使う自用地よりも評価額が下がります。計算式は以下の通りです。

・貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

一般的に土地を人に貸した場合の「借地権割合」は、都市部の住宅地では60%か70%になります。正確な数値は路線価と一緒に国税庁のホームページで確認することが可能です。建物を人に貸した場合の「借家権割合」は全国一律で30%となっています。例えば借地権割合70%の土地に賃貸住宅を建てて全戸を賃貸に出した場合は、「1-0.7×0.3×1」となり、自用地よりも約2割評価額が下がるのです。

ステップ4.小規模宅地等の特例を適用する

小規模宅地等の特例の適用を受ければ貸家建付地としての評価額からさらに50%評価を減額できます。

3.不動産投資で相続税対策をする際の3つのリスクと対策

不動産,相続税対策
(画像=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)

上記のようなステップで不動産を評価していくと時価の3割前後まで相続税評価額を圧縮できることがあります。つまり評価額が7割引になるということです。評価額が圧縮されれば、それだけ相続税は少なくて済みます。不動産がいかに相続税対策として有利か理解できたのではないでしょうか。しかし一方で不動産を利用した相続税対策には以下のような4つのリスクもあります。

3-1.財産の分割が難しい

不動産は実物財産であり同じものが世界に2つとありません。複数の相続人で複数の不動産を完全に公平に分割することは困難です。そのため相続人間で遺産分割を巡ってトラブルに発展することもあります。対策としては、できるだけスペックの同じ不動産を相続人の数だけ用意することが挙げられますが、現実的には難しいケースも多いでしょう。

そこで有効な手段は、不動産を法人で所有しておくことです。法人所有であれば、相続人は法人の株式だけを相続することになります。株式ならば均等に分割しやすくトラブルに発展しにくいといえるでしょう。

3-2.不動産ばかりだと納税資金が不足する

財産が不動産ばかりで現預金がほとんどないケースもあります。その場合に困るのが納税資金の不足です。いざ相続税を納税しようと思っても現金がないと不動産を換金しなければならなくなり手間や時間がかかります。相続税の納付は原則被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。対策として相続を見越して納税資金もある程度確保していくことが大切になります。

3-3.賃貸経営がうまくいかず収益が上がらない

賃貸住宅は相続税対策として有利とはいえ、どんな物件でもいいわけではありません。もし賃貸需要の弱いエリアに買ってしまえば空室率が高くなり収益が得られないお荷物物件となりかねません。対策としては、通常の不動産投資における考え方と同じで物件を厳選することです。不動産投資の対象として優れた物件を買うことが自分も相続人も利益を享受できる条件といえます。

3-4.相続人が不動産投資に興味がない場合も

相続人のためを思ってアパートやマンションを残してあげたとしても「相続人が不動産投資にまったく興味がない」というケースもあります。対策としては、相続人とよく話し合い「どのような財産を残してもらいたいか」について希望を聞いておくことです。場合によっては不動産ではなく生命保険を活用するなど別の形で残してあげることも検討してみましょう。

4.まとめ

特に賃貸不動産の購入は、一般の不動産よりも相続税評価額を割引して計算できるため、非常に効果的な相続税対策となります。ただし賃貸物件は本来、長期的に家賃収入を得るために購入するものです。「被相続人・相続人の資産形成」「相続税の節税」といった両方を実現するために資産価値が下がりにくく競争力の高い物件を購入することを心がけましょう。(提供:YANUSY

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