不動産投資を行う場合はさまざまな税金がかかるため、不動産投資にかかる税金の種類を知っておけば最終的に手元に残るお金を見積もることが可能です。本記事では購入時・保有時・売却時に発生する税金や不動産投資の税金のメリットについて詳しく解説します。
1.不動産投資で購入時・売却時・保有時にかかる税金
不動産投資をすると数多くの種類の税金が発生します。タイミング的には収益物件の購入時、売却時、保有時で課税され、それぞれに税金の内容が変わってきます。各フェーズでどのような税金がかかるのかチェックしてみましょう。
1-1. 不動産投資で購入時にかかる税金
不動産の購入時に発生する税金は「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」です。
(1)不動産取得税
売買や贈与など相続以外の方法で不動産を取得したときにかかるのが「不動産取得税」です。不動産取得税は、原則として土地建物の評価額に4%をかけて計算します。しかし2021年3月末までは土地と住宅用建物は3%という低い税率が適用され土地が宅地であれば評価額をさらに半分にすることが可能です。
(2)登録免許税
不動産を登記する際には「登録免許税」がかかります。司法書士に登記を依頼している場合は、司法書士報酬のなかに登録免許税も含まれていることがほとんどです。登録免許税は、原則として土地建物の評価額に2%をかけて計算します。
(3)印紙税
不動産の売買契約書や借り入れにまつわる書類など、一定の要件を満たす書類を作成する場合、「印紙税」を支払わなければなりません。印紙の金額は文書の種類や記載されている金額によって決められています。例えば1億円の不動産の売買契約書には、3万円(軽減措置額を表示2020年3月31日まで)の印紙を貼る必要があります。
1-2.不動産投資で売却時にかかる税金
不動産の売却時に発生する税金は、「譲渡所得税」や「住民税」です。
(4) 譲渡所得税
譲渡所得は、売却価格から購入価格や購入時にかかった手続き費用を差し引いて計算します。そのため、購入金額よりも高く売れた場合にしか「譲渡所得税」は発生しません。譲渡所得が発生した場合、確定申告で譲渡所得の申告書を提出します。所得税は、所得金額が増えるほど税率が高くなりますが、譲渡所得税の税率は所得金額の影響を受けません。
その代わり保有している期間によって税率が変わります。5年以内に譲渡した場合、短期譲渡所得となり所得税率は30%、住民税率は9%です。5年を超えて譲渡した場合、長期譲渡所得となり所得税率は15%、住民税率は5%です。(どちらも復興所得税は含んでいません)譲渡までの期間によって税率がまったく変わるため、譲渡のタイミングには注意しましょう。
(5)住民税
一般の所得税と同様、譲渡所得税とセットで「住民税」も課税されます。なお、譲渡所得税と住民税は、給与や年金など他の所得とは区別して計算します。
1-3.不動産投資で保有時に発生する税金
不動産の保有時に発生する税金は、「固定資産税・都市計画税」および「所得税・住民税」です。
(6)固定資産税・都市計画税
毎年1月1日時点で不動産を保有している限り「固定資産税・都市計画税」を負担しなければなりません。固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税の標準税率は0.3%です。都市計画税は自治体によってない自治体もあります。標準税率は地方税法で定められていますが、地方公共団体によって必要性があれば変更可能です。
固定資産税と都市計画税の納付書は、毎年5~6月ごろに不動産の所在する自治体から送られてきます。不動産を保有しているだけでは、所得税や住民税は発生しません。しかし家賃収入が入ればそれを不動産所得として申告することが必要です。
(7)所得税・住民税
不動産所得は、家賃収入から不動産の維持管理にかかる経費を差し引いて計算します。不動産所得は、給与や年金など他の所得と合算。「所得税」は、所得をすべて合算した金額に応じて所得税率をかけて計算することが必要です。所得税率は、所得の金額に応じて5~45%まで設定されており所得が大きくなるほど所得税率も高くなります。
不動産所得を申告するため確定申告をすると住民税にも不動産所得の分が上乗せされます。住民税を概算で知りたいときは、不動産所得に10%をかけることで簡易的に求めることができるでしょう。
2.不動産投資における税金の7大メリット
不動産投資にまつわる税金の仕組みを理解し、適切にコントロールすれば所得税や相続税の節税効果もあるといわれます。それぞれの内容をチェックしてみましょう。
2-1.不動産投資による確定申告時のメリット
(1)損益通算
損益通算は、不動産投資の大きなメリットの一つです。個人事業主として不動産投資をしている場合、家賃収入から経費を差し引いた利益には、所得税(それに伴って住民税)がかかります。例えば不動産所得が赤字、他の所得(給与所得や他の事業所得など)が黒字の場合、黒字と赤字を相殺することで課税対象となる最終的な所得を圧縮することが可能です。
特に収益物件を取得した初年度は計上できる経費項目が多くなりやすいため、不動産投資の赤字が発生しやすいといわれます。ただしその後不動産所得が黒字になれば当然ながら所得が増えるわけですから課税所得が膨らむ点は留意したいところです。
(2)青色申告特別控除
不動産投資では、一定の経営規模になると「社会通念上、事業として行われている」と認められ青色申告が可能になります。青色申告の大きなメリットは最高65万円の青色申告特別控除が受けられることです。一定規模の目安は「5棟10室以上」で、貸家ならおおむね5棟以上、アパートやマンションならおおむね10室以上が対象になります。
なお駐車場は5台分でアパート1室と換算されるため50台以上の駐車スペースが対象と考えられます。
(3)青色事業専従者の給与控除
上記の(2)内で紹介した「5棟10室以上」という基準をクリアした場合は、青色事業専従者の給与控除のメリットも使えます。これは自営業者の事業に携わっている(生計を同一にしている)家族への報酬を控除できる制度です。ただ設定できる報酬額は具体的に定められておらず客観的に見て妥当性のある額とされます。
税務署から見て妥当性がないと判断された場合、税務調査時に否認されるリスクがあるので注意しましょう。
(4)損失の3年間繰り越し
同じく「5棟10室以上」の基準をクリアしている場合、不動産事業の損失をその年度だけでは相殺できないときには損失を3年間繰り越せることもメリットです。これにより、このとき計上した赤字と直近3期の黒字を相殺が可能になります。
2-2.不動産投資による相続税対策時のメリット
賃貸物件を含む不動産は、預貯金や貴金属などと比べて課税される評価額が圧縮できる点がメリットです。例えば預貯金で資産を保有していれば額面がそのまま相続税評価額になりますが、不動産に変えて保有すれば評価額を大幅に下げることができます。具体的な仕組みは次の3つです。
(5)建物の相続税評価額の圧縮
不動産を購入したり新築した場合、建物の相続税評価額は「固定資産税評価額で算定」されます。一般的に建物の固定資産税評価額は建築費の50~60%程度です。そのため例えば1億円の現金で建物を購入すれば相続税評価額は6,000万円程度まで大幅圧縮できるということになります。さらに賃貸用の建物は、資産として自由度がないことから30%割引することが可能です。(これを借家権割合という)
つまり6,000万円程度まで圧縮された評価額から30%割引となるため、最終的な評価額は4,200万円程度まで下がります。
(6)土地の相続税評価額の圧縮
土地の相続税評価額は、路線価をもとに算定されます。この路線価は土地取引の目安となる公示地価の8割程度のため、自ずと資産を土地に変えただけで相続税評価額が圧縮されます。なお路線価がない土地の場合は固定資産税評価額と地域ごとの倍率をベースに算定します。合わせて、賃貸用の土地は、相続税を一定割合割り引くことができます。(これを借地権割合という)
どれくらい割り引けるかはエリアによって異なり、おおむね30〜90%程度で設定されています。
(7)小規模宅地等の特例
不動産の相続において、よく使われている制度に小規模宅地等の特例があります。要件にあてはまれば、限度面積までの土地は相続評価額が大幅減額されます。賃貸住宅用に貸し出されている土地の特例は「限度面積200㎡、減額割合80%」となっています。
3.経費になる税金と経費にならない税金
不動産投資で発生する税金にはさまざまな種類がありますが、経費にできる税金とできない税金があります。経費にできる税金は、「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」「固定資産税・都市計画税」です。一方、所得税や住民税は経費にすることができません。誤って経費計上してしまうことがないよう注意しましょう。
4.まとめ-最終的な利益は税金を差し引いて決まる
ここでは、不動産投資をしたときにかかる税金の種類とメリットについて解説してきました。振り返ってみましょう。まず不動産投資の税金については、フェーズごとにかかる税金が異なりました。
・購入時……不動産取得税、登録免許税、印紙税
・売却時……譲渡所得税、住民税
・保有時……固定資産税、都市計画税、所得税、住民税
そして、不動産投資の税金の7大メリットは次の項目でした。
- 損益通算
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者の給与控除
- 損失の3年間繰り越し
- 建物の相続税評価額の圧縮
- 土地の相続税評価額の圧縮
- 小規模宅地等の特例
最終的に、不動産投資によって受け取られる利益は、税金によって大きく変わります。そのため、必ず税引き後の利益で十分なリターンがあるか否かを判断しましょう。合わせて、7大メリットを勘案しながら全体の経営計画をプランニングすることも重要です。ポイントとしては、不動産の投資判断をする前には、発生する税金を見積もり、手元に残る資金を正しく予測するようにしましょう。
不動産会社の営業マンが事業計画やキャッシュフロー計算書を作成してくれた場合は、税金に関する項目に抜けや漏れがないかを自分の目で見て確認することが大切です。(提供:YANUSY)
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