インカムゲインとキャピタルゲインは、不動産投資の重要キーワードです。意味の正しい理解はもちろんのこと、両者の相関関係、それぞれにかかる税金などの知識も必須です。ここでは、インカムゲインとキャピタルゲインに関して、総合的に学んでいきます。
目次
1.インカムゲインとは
インカムゲインは投資の世界でよく使われる言葉ですが、金融商品や不動産投資などカテゴリが違えばニュアンスが変わってくる点に注意が必要です。
1-1.不動産投資におけるインカムゲインとは
インカムゲインとは、資産を保有することで定期的に得られる運用益のことです。1回あたりのリターンは大きくありませんが、毎年あるいは毎月など定期的に受け取れることが魅力です。インカムゲインにあたる運用益としては、銀行預金の受取利息、上場株式の配当金、投資信託の分配金などがあります。不動産投資におけるインカムゲインは、賃料収入です。
1-2.不動産投資のインカムゲインのメリット
住居用の収益物件のインカムゲインは、不況時でも落ち込みが少ないため、比較的安定していると言われています。そのため、長期的な資産運用に向いています。ただし、賃料は基本的な考え方としては建物の傷みとともに平均年1%程度下落していく傾向があり、これを折り込んで経営計画を立てることが大切です。
1-3.インカムゲインを得やすい収益物件とは
不動産投資においてインカムゲインを安定的に得るためには、「空室率を下げること」および「賃料下落をなるべく抑えること」がポイントになります。空室・賃料下落リスクを回避する物件例は、以下のとおりです。
・人口が増加・安定しているエリアにある
・再開発などによって人気が高まっているエリアにある
・乗降客数の多い主要駅の駅近などの好立地にある
2.キャピタルゲインとは
キャピタルゲインという言葉は、インカムゲインとともに投資の世界でよく使われる言葉です。インカムゲインとセットで用いられることもあります。
2-1.不動産投資におけるキャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、保有資産の値上がりによって得られる売買益のことです。キャピタルゲインが得られる投資対象は、上場株式、債券、貴金属、ゴルフ会員権などがあります。不動産もキャピタルゲインが得られる投資の代表です。ちなみに、購入時よりも値下がりした物件を売却し、損失が発生することをキャピタルロスといいます。
2-2.不動産投資のキャピタルゲインのメリット
不動産投資のキャピタルゲインの魅力は、投資金額が大きいため、まとまった額の利益を得られる可能性があることでしょう。たとえば1億円で購入した物件が10%値上がりすれば、1,000万円の売却益が発生します。
2-3.キャピタルゲインを得やすい収益物件とは
とはいえ現状を考えると、国内ではキャピタルゲインを前提にして収益物件を取得するのは難しい面もあります。マイナス要因は、人口減少が進んでいること、東京オリンピック開発が一段落したことなどです。そのため、現実的には「融資の残債と売却額との差額を取りに行く」考え方が大事です。キャイタルゲインを得やすいな物件の条件は、以下のとおりです。
・再開発や大型施設の誘致が進んでいるエリアにある
・経済成長が著しい先進国の海外不動産
・インバウンド(訪日外国人)が好調なエリアにある など
インバウンドを挙げたのは、訪日外国人が大挙するエリアは地価動向が好調になる傾向があるからです。ただし、感染症や世界経済の減速などの影響で、訪日外国人が大幅に減少するリスクもあります。
3.インカムゲインとキャピタルゲインの合算で不動産投資を考える
ここまでは、インカムゲイン(賃料収入)とキャピタルゲイン(売却差益)を分けて解説してきましたが、収益物件を経営していく場合は、これらを合わせて考えることが重要です。プランニングの軸は、以下の3つです。
3-1.インカムゲインとキャピタルゲインの基本的な考え方
不動産投資では、インカムゲインを重視して物件を取得するのがセオリーです。なぜなら、キャピタルゲインは経済・市場・エリアなどの動向に左右され、読みにくい面があるからです。一方、インカムゲインは不景気でも安定感があり(住居用物件の場合)、長期的なリターンが見込めます。
3-2.インカムゲインとキャピタルゲインに共通する法則
インカムゲインを高めれば、キャピタルゲインも自然に向上するのが不動産投資の法則です。インカムゲインが安定している物件の条件は、稼働率が良く賃料の下落率が低いことです。これらの条件を満たす物件は好立地にあり、管理が行き届いていることが多いため、有利な価格で売買しやすいです。つまり、入居者ニーズを満たす物件は、取得物件を探している投資家のニーズも満たすというわけです。
3-3.最終収支はインカムゲインとキャピタルゲインの合算
最終的な収支は、インカムゲインとキャピタルゲインの合算で考えることが大切です。融資を受けて物件を購入した場合、毎月の返済の原資は入居者からの家賃収入です。売却時には、ローンの残債を差し引いた金額が手元に残ります。そのため、ローンを加味してインカムゲインとキャピタルゲインを考え、トータルで利益を得ることが重要です。
端的に言えば、いくら家賃収入で十分なリターンを得ても、売却価格が安ければその不動産投資は失敗ということです。また、いくら十分な売却差益を得ても、稼働率が悪く修繕費の負担が重ければ、これも最終的に失敗ということになります。
4.インカムゲインとキャピタルゲインの税金
インカムゲインとキャピタルゲインで発生した利益には、税金がかかります。ただし、税金の種類や税率が大きく異なります。概要は以下のとおりです。
4-1.インカムゲインにかかる税金
インカムゲイン(賃料収入)の税金は、賃料から経費や減価償却費を差し引いた利益に対して課税されます。収益物件を所有しているのが個人であれば所得税、法人であれば法人税がかかります。税率は所得税の場合5~45%、法人税の場合は15~23.2%です。
4-2.キャピタルゲインにかかる税金
キャピタルゲインは、仮に短期間で評価益が出ていたとしても、すぐに売却しないほうがいいでしょう。なぜなら、5年以下の短期所有と5年超の長期所有では、負担する税率が倍以上も違うからです。
不動産を売却したときの売却差益(譲渡所得)の税金は、事業所得や給与所得などの所得と分けて計算するのがルールです。これを分離課税といいます。譲渡所得は、売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いて算出します。注意したいのは、不動産の所有期間によって以下のように税率が大きく変わることです。
・長期譲渡所得(税率15%):譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える
・短期譲渡所得(税率30%):譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下
※長期譲渡所得には住民税5%、短期譲与所得には住民税9%が加算されます。
5.まとめ-導き出される不動産投資を成功させる条件
ここまで、大きく3つのテーマを解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。
・インカムゲインとは?キャピタルゲインとは?
インカムゲインは定期的に得られる賃料収入で、1回あたりのリターンは大きくないものの毎月入ってくる魅力があります。キャピタルゲインは不動産の値上がりによって得られる売買益で、まとまった額の利益を得られる可能性があるのが魅力です。
・インカムゲインとキャピタルゲインは合算して考える
不動産投資は、インカムゲインを重視して物件を取得するのがセオリーですが、インカムゲインの高い物件は結果的にキャピタルゲインが高くなります。また、最終的な収支はインカムゲインとキャピタルゲインを合算して考えることが重要であることに触れました。
・インカムゲインとキャピタルゲインにかかる税金
経費を差し引いたインカムゲインには所得税または法人税がかかり、その年度の利益の大きさによって税率が大きく変わります。また、キャピタルゲインには譲渡所得税がかかり、長期保有と短期保有とでは税率に大きな差があります。
これらを踏まえると、不動産投資を成功させるには、専門的なアドバイスをくれるパートナーの存在が欠かせません。具体的には、インカムゲインでは、将来のリスクを想定し綿密な計画を立ててくれる専門家が必要です。また、キャピタルゲインでは、地価の変動を見越して将来売却益を得られる物件を見抜く力を持つ人のアドバイスが重要です。
インカムゲインとキャピタルゲインの合算で不動産投資を考えるなら、さまざまなシミュレーションが不可欠です。したがって、信頼できる専門家を見つけ、二人三脚で不動産投資に向き合うことが、不動産投資を長期的に成功させる秘訣と言えるでしょう。(提供:YANUSY)
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