「アイデア社長」はなぜいけないか

「アイデア社長は会社をつぶす」と喝破したのは一倉定先生です。

会議で独演会をやるような社長は、思いつきでいろいろなことを言います。

「こんなのどうだ、いいアイデアだろう」「どうしておまえたちはこういう発想ができないんだよ」などと、自分のアイデアがさも素晴らしいものであるかのように言います。

部下にもアイデアはあるのですが、言わないだけなのです。そういうワンマン社長の前でアイデアを言って、変に責任を取らされたくないのです。

社長であっても、どんな人のアイデアも、仮説です。ビジネスでは何が当たるか当たらないかはやってみないと分かりません。ただ、そのアイデアが通用しそうなものかどうかの仮説検証をやることで、失敗の確率を下げることはできるわけです。

しかし、社長が出したアイデアは仮説検証しようとは部下は言いにくく、客観性の乏しい思いつきが突っ走ることになります。これは社長が自覚していないといけないことです(中には、自分が出したアイデアを忘れてしまって、部下だけがその後右往左往する会社もあります)。

社長のアイデアも、一般社員のアイデアも、みんな同列で同じように俎上に上げられて議論されるのであればいいのですが、自分でアイデアを次々出して、それを社員にやらせようとする社長はワンマンですから、なかなかそうはならない。そんなアイデア社長の会社は危ない、つぶれるよ、というわけです。

社員から意見、アイデアが出やすくするためには、方針をきちんと示した上で、

・上の立場の人はできるだけ聞き役に回ること
・トップは、意見を最初か最後など、決められた時間(数分間)だけ話すこと
・すべてのアイデアを同列に「仮説」だと考えること
・どんな案にも否定的なことは言わないこと

などをルール化することです。

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント、小宮コンサルタンツ代表
1957年、大阪府生まれ。1981年、京都大学法学部を卒業後、東京銀行に入行。1986年、米国ダートマス大学経営大学院でMBAを取得。帰国後、経営戦略情報システム、M&A業務や国際コンサルティングを手がける。1993年には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1996年、〔株〕小宮コンサルタンツを設立。『小宮一慶の1分で読む!「 日経新聞」最大活用術』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。(『THE21オンライン』2019年12月24日 公開)

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