40代での転職を成功させるための第一歩は、志望動機の書き方にある。志望動機は応募者と募集企業の希望がマッチしているか表しているためだ。これまでキャリアを積んできた40代、転職するにあたってどのように志望動機を構成すればよいのだろうか?
企業が40代の転職者に求める3つのこと キーワードは「即戦力」
昨今は経験豊富な40代を欲している企業もあり、望んだ形で転職を成功させることも不可能ではない。実際、求人サイト大手エン・ジャパンの調査でも約6割の転職コンサルタントが35歳以上のミドル層の求人は2020年も増えていくと回答している。(※エン・ジャパン「「2020年『ミドルの求人動向』調査」より)
一方で企業側から考えると40代の転職者を受け入れるには、若い世代よりも給与などのコストが高くなるなどのリスクが伴う。同調査によれば、企業がミドル層の転職者に求めるものは「高いレベルでの業務遂行能力」や「業界に適応できる高い専門性」であった。企業としては即戦力になりうる人材を求めていることがわかる。
企業が応募者に対して「即戦力となる人材」であるかどうかを判断する点としては、主に以下の3つがある。
1,会社のことをよく理解したうえで、応募してきているか
応募者が入社後自身の経験やスキルを活かして活躍できるかは、会社と応募者の求めているものが合致していることが肝要だ。そのため応募者は会社の業務内容や求めている人材像をよく理解する必要がある。本当にこの会社で働きたいと希望しているのか、具体的にどのような業務をしたいかが明確か、などが1つのチェックポイントとなる。
2,会社にメリットをもたらせるような経験や実績があるか
採用は会社と応募者双方にメリットがあることが基本。会社側としては、応募者が自社にメリットをもたらしてくれるような専門知識やスキル、経験を有しているか、今まで培った経験を活かして会社でも活躍できるかをチェックする。
ミドル層は経験に見合った責任のあるポジションでの活躍を期待されているケースが多く、マネジメント経験があるかなども重要視される。
3,周囲と協調して働けるコミュニケーション能力があるか
40代であれば一般的には経験豊富で、ポジションも高いケースが多い。年下に尊大な態度を取ったり、新しい職場に自分からなじもうとしなかったりするケースが見受けられるようだ。
100名以上の転職コンサルタントに聞いたエン・ジャパンのアンケートの結果を見てみよう。「転職が難しい」と思う理由の第3位は「人柄が転職に向かない」(40%)であった。人柄が転職に向かない人にはどのようなケースが多いかという質問に対しては、「謙虚な姿勢に欠ける」という回答が70%を占める。
どういう人がこれに当たるか具体例を見てみると「自分のスキル・経験を面接で高圧的に話す方」「自己過信の傾向」などが挙げられた。40代の転職の場合、自分の経験をアピールするのはもちろんだが、伝え方や周囲との協調性など、コミュニケーション能力についても厳しくチェックされていると考えるべきだ。
成功する志望動機を作成するための3つのステップ 作成の前に企業と自身の分析を
企業の視点を意識しつつ、魅力的な志望動機を作成するためには準備として以下の4つのステップがある。
ステップ1,希望する求人と自分の相性を知る
応募先企業と自分の属性の組み合わせによって、転職が成功しやすいケースと、慎重になる必要なケースがある。どれに当てはまるのか知ったうえでの対策をしよう。
・同業種・同職種の場合
応募先が現在と同業種・同職種であれば、過去の経験やスキルをそのまま活かすことができる。応募先企業にアピールしやすく、転職の成功率も高まるだろう。自分のこれまでの経験を魅力的に語れるようにキャリアの棚卸しをしておきたい。また同業他社はライバル会社となることもありうるため、現在の会社とのトラブルにならないように注意が必要だ。
・異業種・同職種の場合
応募先が現在の所属先とは異業種になるが、募集職種は同じため、スキルや経験を応用して活躍できる可能性がある。例えば、マーケティング職で小売業界からメーカーへ転職する場合がこれに当たる。扱う商品やサービスの違いをどこまでフォローできるかで転職の成功率が変わるだろう。転職の際は志望動機として、なぜその業種に興味を持ったのかを明確にしておきたい。
・同業種・異職種の場合
転職者にとっては同じ業種であれば、業界のことは理解している安心感はあるだろう。ただ、今までと異なる職種への応募ゆえに経験も実績もないため、転職の難易度はさらに上がる。たとえば、小売業界の販売職からマーケティング職への転職などがこれに当てはまる。
希望職種に近しい経験や資格などで評価される可能性もあるため、転職前から希望職種につながる経験を得られるように副業やセミナーに参加するなどして取り組んでおきたい。また、異職種を希望していても面接などで現在と同職種を提案される可能性もある。
・異業種・異職種の場合
応募先が現在の所属先とは異なる業種で、さらに職種も今までと違うものに応募するとなると転職にはかなり慎重を要する。即戦力となる裏付けが乏しいため、企業もミドル層の採用には積極的でないだろう。
リスクを取ってでも異業種・異職種で転職したい場合は、これまでの経験や実績を別の職種でも活かせることを採用担当者にうまくアピールすることが必要だ。
ステップ2,企業分析を行う
転職をするには、自分が本当に転職したいと思う企業かどうかの判断や、人材募集における企業側のニーズや背景を把握する必要がある。目安として以下のようなことは調べておきたい。
・応募先の会社の概要的情報
資本金、従業員数、組織(全国または海外の拠点、グループ会社)、創業年数、企業理念などは多くが公式サイトの会社概要や採用ホームページで確認できる。
こういった情報からは企業の歴史や事業規模、転勤の可能性などをイメージできる。また企業理念からは企業の文化や重要視する価値観が読み取れるだろう。自分の働き方や価値観と親和性が高いか見極めたい。
・具体的な業務内容や業績、商品
製品やサービス内容の種類や内容、特色(他社製品・サービスとの違い)、ターゲット層、導入実績(販売数や導入先企業名)、株価など。公式サイトのサービス内容や四季報などでも確認できる。
応募先企業がどのようなサービスや製品を扱っているかを理解しておくと、自分の経験を活かすイメージがしやすい。基盤となる商品・サービス、新規事業、競合の情報などまで調べれば企業の強みや将来性を理解できるだろう。
・求められている人物像
上記情報と募集内容から求められている人物像を分析する。募集内容については採用ホームページや人材募集ページで確認できるはずだ。会社全体の事業方針に照らし合わせれば、なぜそのポジションが募集されている背景や求められている人材が深く理解できるだろう。
その他にも社員に対する福利厚生や働き方改革への取り組み方針、会社の動向がわかる報道資料やインタビュー記事、企業の評判などの情報もあるとなおいいだろう。
どのような事業が自分にとって魅力があるのか、どのような福利厚生や待遇であればよいかなど、可能な限り詳細にイメージできるようにしたい。さらには企業の人材ニーズや人材募集の背景も分析しておくことで転職の成功率は上がる。
ステップ3,自己分析を行う
企業分析ができたら、次は自分が企業のニーズに応えられる人材か判断するために、自己分析を行おう。自己分析は以下の3つを行う。
(1)キャリアの棚卸しをする
まず必要なのはキャリアの棚卸しだ。40代であればこれまでの経験や実績も豊富だろう。これまでの仕事を時系列で振り返り、以下のような項目を思いつく限り挙げてみよう。
・職歴(職種経験・業務経験)
・スキル(技能・知識・技術など)
・経験(海外出張・研究開発ほか)
・実績(表彰・トップセールスなど)
(2)自分の強みを言語化する
これまでのキャリアを棚卸ししたら分析を行う。自身の価値観、能力・スキルの傾向を見出すことができれば、それが転職における強みとなるだろう。志望動機でアピールするべきなのは下記のような項目だ。
・協調性・チームワーク力
・プレゼンテーション力
・目標指向性・達成意欲
・忍耐力
・論理的思考力
・分析力
(3)具体的なエピソードを交えて整理する
最終的に自分の強みを言語化したらそれを裏付けるようなエピソードを用いて成果をアピールしたい。
採用担当者にも伝わるような筋の通った説明ができれば志望動機の作成も容易になるだろう。書類選考で応募者が企業に対して最も自由にアピールできるのは志望動機だ。ステップ1〜3までを活かして応募先企業への思いを自分の言葉で表現した志望動機を作成しよう。
40代転職の志望動機でNGな3つのポイント 具体性、必然性、謙虚さを意識
ここまで志望動機を作成するためのステップを見てきたが、実際に書いてみると思わぬ落とし穴があることもある。ここからは転職に失敗してしまう志望動機に共通するポイントを見ていこう。これらに気をつけることで、より成功しやすい志望動機が書けるはずだ。
NGポイント1,自分の経験や実績があいまいで伝わりづらい
失敗してしまう志望動機に共通するのが、自身の経験や実績についてあいまいな情報しか書かれていないことだろう。
具体性をもたせるためには、数字を使うことが効果的だ。マネジメントであればチームの人数や部署の成長率、プロジェクト成果であれば参画前後の売上の推移など。企業にもイメージが持ってもらいやすいだろう。
特に同業種・同職種以外の場合は未経験部分がどうしても含まれるため、企業としては採用に不安がある。経験や汎用的なスキルをそのまま活かせる部分だけでなく、今までと異なる部分においてはどう応用・フォローしていくのかなどを具体的に伝え、不安感を軽減させることが重要だ。
NGポイント2,応募する企業への必然性がない
応募する企業への必然性がないことも、失敗する志望動機に共通する点だ。
自身の経験やスキルを活かせることをアピールするのも重要だが、なぜその企業に応募するのかは明確でなければならない。理由があいまいであれば、採用担当者に他の企業でもよいのでは、と評価されてしまう。
応募企業のIRやプレスリリースなどをチェックし、最新の情報を把握し、企業の今後の方向性を分析しよう。新規事業の展開や新たなサービスの提供、アライアンス先など、その企業の独自性が見えると必然性についても書きやすい。
分析した方向性に基づき、なぜそれをやりたいのかを自身の体験を踏まえて説明すればより説得力のある志望動機となるだろう。
NGポイント3,実績のアピールばかりで学ぶ姿勢がない
志望動機では自信を持ってアピールするほうがいいが、40代では強すぎる自己アピールは周囲とのコミュニケーション能力に疑問を持たれてしまうかもしれない。志望動機を客観視し、自信と謙虚さのバランスが取れているか意識することも大切である。
志望動機で自身の実績について書いたあとは、新しい仕事も積極的に学ぶ姿勢があると言及しよう。不安であれば提出前に転職エージェントにチェックしてもらうのもよい。
これらのポイントを意識して志望動機を作成することでより説得力のある志望動機になるだろう。
40代男性が転職する際は転職エージェントを使おう
40代の転職では、入念な企業分析や自己分析をしなくてはならず、志望動機もどう書けばいいか頭を悩ませる人も多いかもしれない。また40代向けの募集は非公開となっていることもあるため、自分に合いそうな企業を自力で探すのは簡単ではないだろう。
無理に一人で探すよりも、転職の専門家である転職エージェントを使うほうがチャンスも広がり有意義な転職活動が可能だ。
未経験職種を希望している人が転職エージェントを活用するメリットとしては、主に以下の3つがある。
メリット1,選考対策アドバイスをしてくれる
選考対策として、自分の市場価値や企業側が求めているもの、他での成功例の情報などを転職エージェントからアドバイスを受けることができる。未経験職種なら今までの経験をどう活かすのかなど、アピール内容の精度を上げていくことができ、志望動機をブラッシュアップすることが可能だ。
メリット2,企業との交渉代理をしてくれる
転職エージェントが自分と企業の間に立ってくれるため、給与交渉など直接交渉しにくいことも代理でやってもらえるのはメリットだ。また求人探しや面接の日程調整などもお任せできるため、自身の手間は省けるだろう。
メリット3,短期間でスピーディーに転職できる
自分のみで転職活動をすると条件に合う企業を探すのに時間がかかるが、転職エージェントを活用すると自分に合った案件を紹介してくれる。アドバイスや応募先企業との調整も行ってくれるため、転職が長期化することなくスピーディーに進められる。
40代男性が転職する際に使いたいエージェント3選
転職エージェントといっても各社特徴がある。40代の男性におすすめの転職エージェントを3つ紹介しよう。
1,JAC Recruitment……外資系企業の転職実績が豊富
外資系企業や海外進出企業への転職実績が豊富で、グローバル転職のサポートに強いのが特徴だ。
独占求人も多数あり、幅広い業界・職種の豊富な求人案件を保有している。各業界や職種に特化したコンサルタントが650名ほど所属しており、各業界出身者も多いことから高い専門性を持っている。
希望する職種に関して専門的なアドバイスを希望する人、英語が得意などグローバル転職に強みのある経験やスキルがある人におすすめだ。
2,ビズリーチ……ヘッドハンターがサポート
ハイクラスの求人に特化しており、ヘッドハンターが求職者の職務経歴書を確認し、スカウトするビズリーチ。年収1,000万円以上の求人が3分の1以上を占める。
ヘッドハンターがキャリアの選択肢を提案してくれるため、自分では想像していなかったオファーが来ることもある。自分の可能性を限定しなくて済み、ヘッドハンターが登録した経歴やスキル、企業からの条件などを確認したうえでスカウトしてくれるため、成功率の高い転職が可能だ。
ハイキャリアで異職種を希望する人だけでなく、異業種への転職を希望する人にも向いているだろう。ただ、ビズリーチでは企業やヘッドハンターとの面談や面接が確約されたスカウトには無料で返信ができるが、通常のスカウトへの返信や求人への応募には有料会員になる必要がある。会員料金は月額3,278円(税込)からとなっている。
3,CAREERCARVER……リクルートが運営、ハイクラス求人に特化
リクルートが運営しているハイクラス求人に特化した転職サービスで、大手企業の年収800万〜2,000万円の案件が充実している。ヘッドハンター型の転職サービスだが、自分でヘッドハンターを指名することも可能。転職者の匿名のレジュメをもとスカウトが来るため、自分では探せない意外な企業と出会える可能性がある。ビズリーチと異なり全てのサービスが無料で受けることができる。
CAREERCARVERでは通常のスカウトとは別に「顧問求人スカウト」が存在する。専門知識が豊富な場合は、業務委託として企業の顧問のスカウトを受け取ることも可能だ。
40代の転職で複数のエージェントを使い分けるのが賢い
40代は20代や30代と比べ求人数は限られるがよりハイクラスでの案件が増えてくると考えられる。より自分の希望にあった求人を見つけるためには、複数のエージェントに登録し多くの案件に目を通すことが重要だろう。
前述のように転職エージェントもそれぞれで特色に違いがある。外資系企業やグローバルでの求人を探す場合、年収の高い案件を探す場合など求人の種類によって使い分けるのが得策だろう。
文・渡邊全美(ITコンサルタント・経営者)/MONEY TIMES
【関連記事 MONEY TIMES】
40代で転職に失敗する人の5つの特徴
35歳以上で転職した人の52%が年収アップ!うち4割は100万円以上も増加
就職ランキングで人気の「三菱UFJ銀行」の平均年収はいくら?
「35歳転職限界説」が定説である理由 アラフォー転職の見えない壁
転職時に必要な保険証の手続きとは?病院へ行く場合はどうなる?