(本記事は、いっちー氏の著書『鋼のメンタルを手に入れる ゴリラ式メタ認知トレーニング』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)

じつは身近な「メタ認知」

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(画像=(写真=Kirill Savenko/Shutterstock.com))

皆さんは、漫画の枠の外で、作者がキャラクターにツッコミを入れているような表現、あるいは漫画内のキャラクターが、まるで自分が漫画キャラであることを認識しているような発言をしているのを見たことがありませんか?
こうした、本来知りえないはずの情報をもとにした発言を「メタ発言」と言います。メタ発言ができるということは、それだけ自分の置かれている立場や状況について、客観的に把握できているということになります。
もともと「メタ」とはギリシャ語で「高次の~」とか「超~」といった意味を持つ接頭語です。「メタ〇〇」と言うときは「〇〇」について一段高い次元から客観的に認識することを表します。

メタ認知

上の漫画の例では、漫画というフィクション内のキャラクターが、その漫画について客観的な発言をしているので「メタフィクション発言」、略して「メタ発言」というわけです。つまり漫画キャラが読者目線を持っているような表現です。
このように第三者としての視点を持てる能力が「メタ認知」なのです。

わたしたち現実世界の人間も、無意識のうちに同じようなことをしています。
「自分は文章を書くのは得意だけど、人前で話すのは苦手だ」
「重要なところは付箋を貼って、あとで読み返そう」
といったように、過去の経験から自分の能力について評価したり、来るべき未来のために計画を立てて自分の行動を決めたりする考え方もメタ認知です。
そして、そのようにしてわたしたちの行動を左右する、メタ認知のために使われる経験や知識のことを「メタ認知的知識」と言います。

「メタ認知的知識」は、わたしたちが意思決定を行う際に日常的に使われています。
たとえば「自分は忘れ物が多い人間だ」と考えたとしましょう。そう考えたのも、自分が忘れ物をした過去の記憶をメタ的視点で捉え、他人と比較することで得られた知識、つまり「メタ認知的知識」があったからです。
こうしてわたしたちは、無意識に過去からの知識や経験を積み重ねて、自分の未来を毎日修正しています。

循環
(画像=(写真=seisai.h/Shutterstock.com))

この「メタ認知的知識」をもとに、自分の行動を修正していく活動のことを、「メタ認知的活動」と言います。

「メタ認知的活動」は、自分の行動を評価する「モニタリング」と、行動を修正した「コントロール」の2つのプロセスから成り立っています。この2つのプロセスを循環させ続ける活動によって、行動はより洗練されていきます。

先ほどの「忘れ物」の例で考えるなら、
「過去に何度か重要な会議で書類を忘れた」
「小さいころから学校でも忘れ物が多かった」
などと、自分の行動を評価し(モニタリング)、
「書類を忘れないよう前日のうちに鞄にしまっておく」
「とくに重要なものはメモに書いておいて毎朝確認する」
というふうに、自分の行動や考え方を修正しています(コントロール)。
この「モニタリング」と「コントロール」は、どちらが欠けても機能しない、車の両輪のような関係にあるのです。

「メタ認知」を「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」とに区別し分析することは重要で、失敗をしたときに自分に何が足りていなかったのかを正しく評価することにつながります。
医療の現場では、ミスが起こると患者様の生命の危険に直結するため、医療従事者はミスを最小限にとどめるように行動する必要があります。
では、ミスを最小限にとどめるために最も重要なことはなんでしょうか?

それは「自分の能力を正しく認識すること」です。
人間は、自分一人でできることには限界があります。しかし一人ではできないことも、まわりからのサポートや適切な指導があればできることもあります。
状況を正しく評価したうえで、その後の行動を選択することが、ミスを減らすためにもっとも重要なのです。
自分にはまだ不可能なことが何なのかを正しく評価し(モニタリング)、自分一人でできそうになければサポートを依頼する(コントロール)という「メタ認知的活動」で行動を修正していく。この一連の流れを循環させ、車輪を回し続けることが、あらたなメタ認知的知識を生み、自分の能力を飛躍的に向上させることができるのです。

もちろん、多忙な現場ではこのようなプロセスを行うヒマもないと思うかもしれません。
しかし、そんな中でも、自分がまず何を学習すべきかを把握し(モニタリング)、限られたリソースの中から、本当に必要な情報を意識しながら学習する(コントロール)ことで、より実践的な知識を得ることができます。

他者との競争が求められる現代社会だからこそ、メンタルを安定させて自分の考え方や行動を効率化し、能力を向上させ続けられるメタ認知は重要なのです。

この節のまとめ

  • メタ認知は日常的に、無意識に行っている身近なもの
  • メタ認知のために必要な知識や経験を「メタ認知的知識」、メタ認知のための循環プロセスを「メタ認知的活動」と言う
  • 「メタ認知的活動」の2つのプロセス「モニタリング」と「コントロール」によって、能力は飛躍的にアップする
鋼のメンタルを手に入れる ゴリラ式メタ認知トレーニング
いっちー
(一林 大基)1987年生まれ。学生時代はいじめに遭い不登校を経験しながらも「メタ認知」と出会い克服。昭和大学にて重症例を含む様々な分野の診療を学びながら、うつ病に対する薬物治療、アルコール依存症への依存症プログラムや認知症サポート医として地域活動に貢献するなど幅広い疾患、ジャンルに対応する。現在は、とある都市で、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医として働きつつ、世界初のバーチャル精神科医として正しい精神疾患の知識を普及させることをライフワークとしている。一方で、全国各地からSNS上に寄せられる様々な相談に答え、不登校や心の病、自殺などの問題に関わっている。2018年よりツイッターを開始。1年でフォロワーが2万人を突破(2019年12月現在)。

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