和食はユネスコ無形文化遺産に選ばれる前から、世界各地で注目を集めていました。3月14日から6月14日に開催する「特別展 和食」では、卑弥呼の食卓の再現など標本をはじめとするリアルな展示と、4Kなどのデジタル技術を使っての体感的な演出も交えて、和食を解説しています。和食がたどった歴史を紐解いてみましょう。

和食の特徴とは?

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(画像=Jasminko Ibrakovic/Shutterstock.com)

ユネスコ無形文化遺産への登録を主導した農林水産省は、和食の特徴として4つの点を挙げます。多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重、健康的な食生活を支える栄養バランス、自然の美しさや季節の移ろいの表現、正月などの年中行事との密接な関わりの4点です。

長い日本食の歴史の中で、食材は米と魚を中心とし、調味料の「醤」も発展し、食材のうまみを「だし」で生かす調理法が展開されます。また、現在では一汁三菜を基本に理想的な栄養バランスを実現する形となっています。

2010年にはフランスやメキシコ、地中海の料理が無形文化遺産として登録されましたが、日本の和食は歴史の中で醸成されたこうした特徴が評価され、2013年12月に登録が決定されました。

和食の歴史をその起源からたどっていきます。

和食誕生の歴史

縄文時代はドングリなどの採集やシカやイノシシ、魚などの狩猟が中心でしたが、土器が製作されるようになると煮炊きの調理技術が容易となりました。これにより食料が食べやすくなり味覚的な発展も進むとともに、保存面でも大きな効果を発揮するようになりました。

その後、弥生時代には稲作が広がり、栄養価、保存面とも優れる米中心の文化が芽生え始めました。稲作は朝鮮半島経由で北九州付近に伝わり、その後現在の青森県から九州一帯へと海路を経て伝わったとみられています。古墳時代の巨大な墓の建造技術は水田造成での土木工事の技術が関係しているとも言われています。

奈良時代に入ると、天武天皇からは仏教の影響等で肉食禁止令が出され、肉は次第に上流階層から避けられる食材となっていきました。
一方、調味料も登場します。大膳職という部署には「醤院」というみそやしょうゆの原型となる「醤」を管理する職が置かれています。かなり古い時代に魚醤は入っていたようですが、この醤院で管理されていたのは穀醤でした。

和食の料理形式

その後さまざまな料理形式が登場していくことになります。

貴族が祝いの行事などで天皇の親族を招いてふるまわれた「大饗料理」が、現在その内容の詳細がわかる最古の料理となっています。生物や干物を切ってならべ、味付けは自分で塩や酢、醤を小さな皿に調合して、食材をつけて食べました。これらは中国の形式を真似したものでしたが、包丁で切って美しく提供する点に日本の独自性が見られるとの指摘もあります。

その後、鎌倉時代から南北朝時代にかけて禅宗の僧侶に端を発する「精進料理」が発展していきます。仏教の立場から肉食を避けるものの、味わいとして肉に近いものができるように材料や調理法に工夫がされました。小麦粉などに植物油やみそなどを使い、イノシシなどの鳥獣の肉に近い味を目指したのです。

室町時代に入ると、大饗料理と精進料理の要素を組み合わせた「本膳料理」が登場します。酒を中心とする献部と食事を中心とする膳部からなり、膳に並べる料理の数は七五三の奇数が基本とされました。大饗料理と同じく精進料理も事前に作られたものが提供され、元服などの祝い事の席でふるまわれました。現在でも皇室の宴で供される料理は本膳料理の流れに発すると言われています。

また、だしにはカツオや昆布が使われるようになりました。とくに昆布は三陸海岸以北のものが使われており、この当時に 産地から全国への流通網ができていたことになります。

その後、「茶懐石料理」が登場します。本膳料理の形式を重視し長時間続く料理から、料理を楽しむことに焦点があてられるようなりました。千利休の時代には当初の茶会にはあった酒宴の席が切り捨てられ、一期一会の精神である茶の湯の精神性を反映し、季節感を重視した素材や盛り付け、器が重視されるようになっていきました。

江戸時代に入ると、庶民文化が発展する中で食文化も進み、江戸では外食店が増え、すしやうなぎ、そばなどの店が増えていきました。

今後も発展を続ける和食

和食の歴史や形式を簡単に振り返ってきましたが、今我々が食べている「洋食」も西洋料理を日本流にアレンジを加えた部分が多分にあり、日本独自の食事と言うことができるでしょう。

さまざまな材料と調理法、外からもたらされる食文化を旺盛に消化しながら、新たな味覚を作り出していく。まだ誰も想像しない、新たな「和食」が生まれてくる日もそう遠くないのかもしれません。(提供:JPRIME


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