転職時の年収交渉は採用担当者の心証を悪くないかと不安を覚えるケースもあるだろう。今回は40代の転職で年収の交渉タイミングや交渉を成功させるポイントについて解説していこう。
転職活動で給与交渉できる?タイミングは面接の終盤に
求職者にとって、転職先企業の年収は転職を決めるための大きな条件の1つである。厚労省の調査でも、40代男性の転職者が前職を辞めた理由の1つに「給与等の収入が少なかった」という意見が見られる。
企業も転職者を採用するにあたり、給与(人件費)に見合った働きを企業にもたらす人材かどうかを転職時に見極めなければならない。転職で年収を交渉する際、採用面接のプロセスは非常に重要なのだ。
年収を交渉するタイミングは面接の終盤の質問時間で
転職活動の面接時に給与交渉をすることで、面接結果のマイナス評価につながったり、面接官の心証を悪くしてしまわないかと不安や疑問をもったりする人もいるかもしれない。
転職時の面接で給与交渉は可能だ。ただし、給与交渉のタイミングには気をつける必要があるだろう。
給与交渉のタイミングは面接の終盤、質問があるかを聞かれた際に尋ねるのがよいだろう。最初の質問で給与交渉を切り出すと、仕事の内容ではなく給与ばかりを重視しているように見え、面接官にマイナス評価を受ける可能性があるためだ。最初は業務に関する質問を1、2個しておくとよいだろう。
内定後の給与交渉は困難なため気をつけよう
転職時においては、内定前に給与の確認は必ず行わなければならない。これは、労働契約法でも決められており、求職者と企業は労働内容について確認しなければならず、企業が求職者に必ず明示しなければならない内容の1つに給与も入っている。
さらに内定後の給与交渉は一般的には困難なため注意しておきたい。内定者から給与アップを求められた場合、企業は再度その年収に見合う人材かどうかを評価し直す必要がある。場合によっては再度面接を求められる可能性もあるため覚えておこう。
転職の給与・年収交渉を成功させる2つのポイント 希望金額は前職の待遇を元に正確に伝えよう
それでは40代の転職者が転職の給与・年収交渉を成功させるためにはどうしたらよいのだろうか。交渉時には次の2つのポイントに気をつけたい。
(1)希望金額は正確に伝える
給与・年収交渉時には、希望金額を正確に具体的に伝えたほうがよいだろう。例えば、「20%アップの600万円を希望」「100万円アップの800万円を希望」といったように採用担当者には具体的な数値を伝えておきたい。「年収を上げてほしい」ということしか伝えていないと、自分が想定しているより低い金額を提示されてしまい交渉が難航する可能性もある。
給与・年収アップの交渉では、それを裏付けるようなキャリアの実績を示すことも重要だ。自分自身が価値のあるキャリアだと考えていても、企業が求める経験やスキルと合致していなければ給与アップは難しい。企業が求めている人材をしっかり把握した上で妥当な希望金額を伝えよう。
(2)前職での給与・年収を正確に把握しておく
転職時の給与・年収交渉では、前職の給与・年収は、参考基準の1つになるケースが多いため、正確に把握しておきたい。例えば、「基本給30万円、残業代20万円、ボーナス100万円、合計年収700万円」といった具合である。
給与アップしたいからといって前職の給与を実態より多く伝えるのは禁物だ。前職の源泉徴収票などを提出すれば簡単に把握できるため、後々問題になる場合もある。
転職先の会社によっては基本給が高額でも、残業代が一部みなし残業代として固定されていたり、ボーナスが出なかったりする場合もある。前職の給与の内訳を正確に把握しておくと転職先の企業の給与条件と比較しやすいため、総合的に見れば思ったよりも給与が低かったという事態を防げるだろう。
給与・年収交渉ができない人にありがちな3つの失敗 能力、業界の水準からかけはなれているとマイナス評価に
給与・年収交渉ができない人には、失敗してしまう3つのパターンがある。
(1)自身の能力に見合わない給与を求める
給与・年収交渉に失敗する人のパターンの1つに、自分の能力とスキルを過大評価していることがある。実際に経験してきた職務や実績があっても、企業がその能力を評価していない、求めていない場合は、年収を上げる交渉は難航するだろう。
もちろん裏付けのない能力やスキルは評価されない。目立った実績や経験を示せる根拠がないにもかかわらず、能力をアピールして給与アップを求めてしまうと、かえって自己分析能力や市場価値の把握ができない未熟な人物と評価される可能性が高まる。「やる気」や「意欲」は給与を上げる根拠にはならないので注意だ。
(2)業界の給与水準からかけ離れた給与を求める
業界にはある程度の給与水準がある。以下に求人サイト大手のマイナビの調査から業種別のモデル年収の上位10種を挙げたので参考にしてほしい。
順位 | 業種名 | モデル年収(平均) |
1 | 外資系金融 | 1,315万円 |
2 | 不動産 | 751万円 |
3 | 専門コンサルタント | 716万円 |
4 | 生命保険・損害保険 | 699万円 |
5 | 証券・投資銀行 | 696万円 |
6 | 住宅・建材・エクステリア | 669万円 |
7 | 環境関連設備 | 646万円 |
8 | 精密機器 | 638万円 |
9 | 金融総合グループ | 621万円 |
10 | その他金融 | 610万円 |
10 | リフォーム・内装工事 | 610万円 |
※「マイナビ転職2019年版モデル年収平均ランキング」より筆者作成
同じ金融業界でも1位の「外資系金融」と4位の「生命保険・損害保険」では給与に約600万円の差がある。各業界の給与水準からかけ離れた給与を求める求職者は、転職に向けての業界研究や企業分析をしていない人物とみられる可能性がある。前職の給与水準のみを基準にして給与交渉をしないよう、業界の給与水準は常にチェックしておこう。
(3)年収アップにこだわりすぎて面接でマイナス評価を受ける
面接で年収アップの交渉をする場合、面接の終盤に質問の有無を聞かれた際に行うべきとしたが、質問の際に給与や待遇についてばかり質問するのも失敗のよくあるケースだ。給与を重視しているとはいえ、関連する質問は1〜2個にとどめておこう。
複数の面接が行われる場合には、面接官から給与・年収についての質問や交渉の機会を複数回与えられるケースもある。各面接で話す内容が異なったり、矛盾点があったりする場合、不信感が生まれ面接官のマイナス評価につながる可能性がある。給与・年収については一貫性を持って話すようにしよう。
給与・年収交渉において転職エージェントを使用する2つのメリット 交渉の手間が省け市場価値も客観的に把握できる
ここまで年収を上げる交渉をする際のコツをお伝えしてきたが、給与・年収交渉は案外手間やストレスがかかるものだ。これらの手間を省きたいと思った場合、転職エージェントを利用するのも良いであろう。転職エージェントを使用するメリットには以下の2つがあげられる。
(1)自分で年収アップの交渉する必要がない
転職エージェントは給与・年収交渉を求職者に代わって行ってくれるため、自分で面接の際に採用担当者と交渉する必要がない。転職エージェントは転職に関する交渉のプロであるため、企業の採用担当者に対し求職者の印象を悪くすることもないだろう。自身で交渉することに不安がある場合は有効だ。
(2)自身の市場価値を判断してくれる
転職エージェントは求職者の市場価値についても客観的な視点で判断し、適切な給与・年収などを提示してくれる。自身が想定するよりも年収が上がったり、逆に下がったりすることもある。転職エージェントは多くの企業へ求職者を紹介しているため、市場分析や自己分析についても1人で行うより詳しく適切な分析ができるだろう。
40代の転職におすすめのエージェント4選
では40代が転職する際、どのような転職エージェントを選べばよいのだろうか。今回は40代の転職に強いエージェントを4社紹介しよう。
(1)JAC Recruitment……30〜50代の転職実績あり
JAC Recruitmentは、30代から50代の転職に実績があるエージェントだ。管理職・技術職・専門職を得意としており、高年収、ハイクラスの案件を多く持っている。外資系企業、海外進出企業などグローバルに展開する企業との取引が多いのも特徴である。
(2)リクルートエージェント……グループの総合力活かして情報量豊富
リクルートエージェントは、採用や転職サービスの最大手といわれるリクルートグループが運営するエージェントで業界最大手といわれる。グループの総合力を活かした情報量の多さは大きな魅力で非公開の求人数が多いエージェントだ。
(3)type転職エージェント……関東首都圏に強い
type転職エージェントは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県など関東圏の転職に強みを持ったエージェントだ。業界としてはIT業界やメーカーに強く、職種としては営業職、販売・サービス業に力を入れている。関東圏での転職を検討している人には向いているエージェントだろう。
(4)ビズリーチ……ハイクラス転職に特化
ビズリーチは、ハイクラス、ミドル層に特化したエージェントだ。年収1,000万円以上の求人が全体の3分の1を占める。非公開求人が多く、一流のヘッドハンターや企業からスカウトを受ける形で転職活動を行う。ビズリーチには無料会員と有料会員があり、一部のスカウトには有料会員のみしか応答できないなど制約もある。
転職の年収交渉はポイントを守って進めよう
給与・年収の交渉となると企業が提示した金額のみの採用で、求職者からの交渉は受け付けない企業もある。給与・年収の交渉の機会がある場合は、ポイントを押さえて進めることが大切だ。交渉に不安がある場合は、転職エージェントの活用を考えるのも得策だろう。
文・小塚信夫(ビジネスライター)/MONEY TIMES
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