商業施設や病院、オフィスビルの屋上、駐車場など様々な場所で、「変電設備」と書かれている金属製の箱体を見たことはないでしょうか。この箱は「キュービクル式高圧受変電設備(以降、キュービクルと記載)」と呼ばれ、「小規模な変電所」のような役割を担っています。「キュービクル」とはどんな設備なのか、ここで見ていきましょう。
1. キュービクル(高圧受電設備)とは
電気は発電所で作られ、変電所を経て電圧を下げながら私たちのもとに送られてきます。一般家庭などでは低圧電力契約となっていますが、施設によっては高電圧の電気を受けとり、施設内に設置した装置の中で低い電圧に変圧している場合があります。この仕組みを担う「キュービクル」について説明します。
1-1. キュービクルの概要と役割
発電所で作られた電気は、当初50万Vを越える高い電圧です。これが各地の変電所を通る間に徐々に低電圧に変換され、末端の各所まで送られていきます。通常の家屋では電信柱に設置された柱上変圧器(トランスと呼ばれるバケツ型のもの)で低電圧に変換され、各家庭に送電されます。
発電所で作られた電気は、当初50万Vを越える高い電圧です。これが各地の変電所を通る間に徐々に低電圧に変換され、末端の各所まで送られていきます。通常の家屋では電信柱に設置された柱上変圧器(トランスと呼ばれるバケツ型のもの)で低電圧に変換され、各家庭に送電されます。
これに対して、送られてきた電気を高圧6,600Vで受け取り、100V、200Vなどの低電圧に変圧して、施設や建物で利用できるようにするのが「キュービクル」の役割です。
かつては電圧を下げるための部屋(変電室などと呼ばれる)を施工することが一般的でしたが、安全性の向上と施工費用の削減、また部屋など広大なスペースを必要としないよう設備自体の縮小を図った結果、現在のような変圧に必要となる機器一式(変圧器、制御装置、計測機器、保護装置など)をひとつの「箱」の中に収容した形となりました。「箱=キュービック」に内蔵したことから「キュービクル」と呼ばれます。
キュービクルは「自社管理する小規模な変電所」ともいえます。
1-2. 高圧受電契約とは
電気を利用するための契約には「高圧受電契約」と「低圧受電契約」があります。高圧受電と低圧受電の違いは上記で説明したとおりです。
このうち、高圧受電契約をするためにはキュービクルが必要です(変電室なども可能ですが上記のとおりコストや手間がかかります)。
柱上変圧器(トランス)は電力会社が管理しているため、トランスを通して低圧受電すると電気単価がその分高くなります。高圧受電契約を行い自社管理しているキュービクルで変圧することができれば、電気をトランスを介さず直接引き込めるため、電気単価が安くなり、同じコストで大量の電気を利用できます。
2. キュービクルの4つのメリットと注意点
ここではキュービクルを設置することのメリットを見ていきましょう。なお、デメリットらしいデメリットが無いため注意点を見ていきます。
2-1. キュービクルのメリット
(1)電気料金が低く抑えられる
すでに見たように、キュービクルを利用することで高圧電力契約が可能になり、低圧電圧と比較して安い料金単価で電気が利用できます。多くの電気を利用する店舗や公共施設などではキュービクルを設置することで電気料金が安くなるメリットがあります。
(2)変電室などより設置スペースが少なく低コスト
かつて利用されていた電気室や変電室と比較すると、スペースを取らず、いちから機器を別々に設置するわけではなくワンセットのものを設置するだけなのでコストが削減できます。
(3)設置運用の工期が短く済む
工場であらかじめ組み立てたものを設置するだけのため、現地にキュービクルを運んだら配線工事を行う程度です。部屋の中に設備を作るより短い工期で完了します。
(4)安全性が高くメンテナンス性に優れる
最初から組みあがったものであり、また金属製の箱の中に一式が収納されていることから感電の危険は少ないでしょう。故障リスクもかつての変電室などより低いといえます。また工場で一貫生産されており、コンパクトながら必要十分な部品で構成されているためメンテナンス性にも優れています。保守点検にも手間取りません。
2-2. キュービクルの注意点
(1)コスト面について把握しておこう
変電室などよりはコストはかかりません。しかし一定の初期投資費用はかかります(修理・点検なども)。デメリットとはいえませんが、運用費用を把握しておくことは大切です。
なお、キュービクル設置にはおおむね200万円〜程度がかかります(基本料金のほか、保安管理費用や修繕費用も含む)。
(2)交換と増設には一定の準備が必要
部品交換などには一定の準備期間が必要となります。とはいえ、これはキュービクルでなくても一定の規模の機械製品であるならば同様のため、こちらもデメリットとはいえないでしょう。
(3)保安点検や電気主任技術者の選任が必要
保安点検の義務、電気主任技術者の選任(雇用)の義務などがあります。また耐用年数について把握しておく必要があります。これについては以降で説明します。
3. キュービクルの耐用年数と保安点検
キュービクルの耐用年数や保守点検について説明します。
キュービクルの耐用年数や保守点検について説明します。
キュービクルは償却資産となるため不動産などと同じく耐用年数が定められています。またキュービクルの法定耐用年数は、変圧器やヒューズなど、キュービクルの内部に設置される機器類ごとにも定められています。ほとんどの機器類は法定耐用年数15年となっています(外部設置されるヒューズのみ10年)。
償却資産としての法定耐用年数なので、15年経てばまったく使えなくなるというわけではありません。そのため実際の耐用年数はおおむね15年から20年程度とされるのが一般的です。設置には初期費用がかかり保守点検費用もかかりますが、一度設置してしまえば長期間安全に使用できることがわかります。
3-2. キュービクルの保安点検の必要性
キュービクルを設置すると、高圧の電気を直接受け取りキュービクルで減圧して自社設備に利用します。つまりキュービクルを配備する者は、電気を自分の元で管理運用することになるため、安全などに関して義務を負うことになります。
そのため電気事業法において、「キュービクルの保安点検」が法定点検として定められており、キュービクルを設置した者は、保安管理業務(定期的な巡視と点検、検査)を行う義務が生じます。
点検の頻度は保安規定を取り決め、それに基づいて実施することになります。この頻度の最低回数は経済産業省告示第249号において定められておりこれを下回ることはできません(月に1度または隔月。遠隔監視装置の有無により異なる。このほか年次点検も必要)。
なお、外部委託している場合は委託業者が保安点検を行わなければなりません。
4. キュービクル設置の際に必要な取り決めと届け出
キュービクルの設置には、電気事業法に基づいた国(産業保安監督部長または経済産業大臣)への手続き申請、承認が必要です。
4-1. 保安規定の制定と届け出
上記でも説明したとおり、キュービクルの設置者が電気事業法に従って保安規定を制定し届け出る義務があります。
4-2. 電気主任技術者の選任と届け出
キュービクルの設置や配電などの工事、稼働および運用、点検と維持、安全性の確保などのために、保安監督者たる「電気主任技術者」を選任します。
電気主任技術者を自社で雇えない場合は電気保安協会などの外部の管理業務請負業者に委託することも可能です。外部委託する場合も、国へ申請し承認を得なければなりません。
このほか、すでに決定した保安規定や電気主任技術者の変更についても、都度、国へ申請し承認を得る必要があります。
なお、キュービクルを設置し使用している者(ビルオーナーなど)が専任の電気主任技術者を雇うとなると人件費などのコストがかかるため、外部委託する場合が多い傾向があるようです。
5. まとめ
大規模な施設ほどではないが一般家庭や商店よりは規模が大きく、ある程度の電気を低コストで利用したい場合、キュービクルは非常に便利な設備といえるでしょう。
キュービクルを設置することでさまざまなメリットがあります。設置コストも比較的抑えられ、一度設置してしまえばメンテナンスを保安規定にのっとって適切に行うことで20年近い年数を使い続けられます。外部委託承認制度もあるため、難しいことを自社で必ず担う必要もありません。
ビルオーナーや商業施設を抱える企業の方は、キュービクルについて適切に理解し、上手に活用、運用することでさまざまな恩恵を得られるでしょう。(提供:ビルオーナーズアイ)
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