親が高齢の場合、「万が一」が急に訪れる可能性はゼロではない。その時になって慌てたり、後悔したりしないように今からできることは何か。想定される事例をもとに事前の対策を考えよう。
(1) 要介護認定の申請 医者や介護サービスの確認もしっかり
親が寝たきりや認知症、あるいは日常生活が不自由になり介護が必要になった場合、「要介護認定」を受けることで介護サービスを受けられる。申請から認定までには1~2ヶ月ほどかかるため、申請は早めに行いたい。
要介護認定を受けるためには、まず、親が住民登録をしている市区役所・町村役場に申請書を提出する。申請が受理されると、認定調査員の訪問調査があり、この調査結果と主治医の意見書を元に、要介護度が判定され、介護保険被保険者証が交付される。要介護1~5に認定された場合は、居宅介護支援事業所と相談して、利用したいサービスを受けられる。
介護サービスを利用すると、その利用料金の1~3割を負担することになる。要介護度に応じて介護保険の支給限度額は異なり、一定範囲を超えた分の利用料は全額自己負担だ。どの医者を主治医とするのか、またどの介護サービスが適しているのかなども確認しておきたい。
(2) 入院手続きで覚えておきたいのは「高額療養費制度」と「限度額適用認定証」
親が入院して高額な請求があった場合、加入している公的医療保険 (健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など) に申請すれば、自己負担限度額を超えた額が後から払い戻される「高額療養費制度」を利用することができる。しかし高額療養費制度だと一時的には全額を支払わなければならないため出費がかさむ。そこで利用したいのが「限度額適用認定証」だ。入院が事前にわかっている場合には加入の医療保険に申請して交付を受け、認定証を病院に提示することで、窓口での支払いを自己負担限度額におさえることができる。
親が70~74歳で課税所得690万円以上か145万円未満の場合は、高齢受給者証を提示すればよい。高齢受給者証は70歳になると、加入している健康保険から交付される。75歳以上で住民税非課税世帯の場合には、限度額適用・標準負担額減額認定証を申請し提示することで、自己負担限度額までにできる。
75歳以上で認定証がない場合は、後期高齢者医療広域連合から高額療養費支給申請書が届く。この書類で一度申請すれば、次回以降の申請は不要だ。
(3) 葬儀手続きのトラブル回避 ! 事前の相見積もりや複数人で業者選びを
親が亡くなると、動揺する気持ちのなか、葬儀業者を選び、葬儀の内容を打ち合わせなければならない。病院で亡くなった場合は、遺体の搬送も葬儀業者が行うため時間も限られてくる。そのため希望した内容と違う、想定以上にお金がかかってしまったというトラブルも少なくない。
トラブルを避けるためには、事前に何社か見積もりを取ったり、複数人で打ち合わせに臨むことで金額や内容の見落としを防いだり、生前から親の希望を聞いておいたり、共済への加入有無を確認しておいたりするのが良いだろう。
(4) 自筆の遺言書を発見した場合には家裁の検認が必要
遺言書は、築き上げた財産を誰に引き継ぎたいかを記した、故人の最後の意思表示となる。遺産分割が決まった後に遺言書が見つかると、分割をやり直さなければならないこともある。遺言書の所在を前もって聞いておこう。もし自筆の遺言書を発見した場合は、自分では開封せずに家庭裁判所で検認してもらう必要があることも覚えておきたい。
(5) 銀行預金は凍結されるが一部は引き出せるようになっている
銀行は口座の契約者が亡くなった事実を知ると、口座を凍結する。しかし、一部の預金は相続人全員の同意なしでも引き出せるようになっている。引き出せる額は、「預金額×1/3×法定相続分」だ。仮に、故人の預金が600万円で、法定相続人が故人の配偶者、長男、長女である場合、長男が引き出せるのは、600万円×1/3×1/4=50万円となる。
故人が複数の銀行に預金を開設している場合は、それぞれの口座の預金に対し、上記の式で出した金額まで引き出せる (ただし、払い出し上限金額は1つの金融機関につき150万円まで) 。通帳や印鑑、保険証書などの所在も確認しておきたい。
親に聞きづらい ? 目的を伝え、少しずつ聞いていくのがポイント
万が一の時にどのようにすべきか、親からは聞き出しにくいものだ。しかし、親の意向がわかっているとその後の方針を決めやすくなり、親本人を含めた家族全員のためにもなる。そういった目的や意図をしっかりと伝えることもポイントだ。まとめて聞き出すのは、時間も体力も使い、お互いの心理的負担になるので、機会をみて少しずつ聞いていきたいものだ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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