経理に関する項目の中でも、特に扱いに悩まされやすい「貸倒損失」。金銭債権の状態によって貸し倒れの処理方法は変わってくるため、概要を正しく理解しておくことが重要です。そこで今回は、貸し倒れを損金算入できる3つのケースをわかりやすく紹介します。

1.法的な事由、または協議等によって切り捨て額が決められたとき

貸し倒れを損金算入できる3つのケース|初心者でもわかる貸倒損失の要件
(画像=PIXTA)

以下のように、法的な事由や第三者を含めた協議等によって金銭債権が切り捨てられた場合には、その全額が損金として算入されます。

【1】更正計画認可の決定、再生計画認可の決定又は特別清算に係る協定の認可の決定により切り捨てられた場合 【2】債権者集会の協議、または行政機関や金融機関などの斡旋による協議で、合理的な基準によって切り捨てられた場合 【3】債務超過の状態が相当期間継続し、かつ金銭債権の弁済を受けることができない場合に、債務者に対して書面で債務免除額を明らかにした場合

上記の【1】~【3】のケースでは、いずれも強制的に損金として算入されます。経理において損金処理をしなかった場合には、申告書の別表上で減算処理をしなければならないので注意しましょう。

なお、【3】のケースについては、債務超過が発生していない状態で債務免除を行うと「回収できない債権」としてはみなされません。この場合は債務者に対する「寄付金」として扱われ、その寄付金に対して課税される形になります。

2.金銭債権の全額の回収が、事実上不可能となったとき

債務者の資産状況・支払能力の面から、金銭債権の全額を回収できないことが判明した場合には、その全額を損金として算入できます。具体的には債務者の破綻や行方不明など、「事実上の貸し倒れ」がこのケースに該当します。 ただし、この金銭債権を損金として計上するにあたって、以下の2点に注意する必要があります。

・「貸倒損失」として経理処理をしなければ、損金の額に算入されない
・担保物がある場合は、原則としてその担保物を処分した後でなければ損金処理はできない

たとえば、債権者の土地に抵当権を設定する形で金銭債権が発生していた場合は、その土地を処分してからでないと「全額を回収できないかどうか」が判定できません。そのため、不動産などの担保物がある場合には、損金処理の前に処分しておく必要があります。

3.売掛債権について、形式上の貸し倒れが発生したとき

債務者に対する売掛債権について、以下のように「形式上の貸し倒れ」が発生した場合には、その一部を損金として算入できます。

【1】債務者の資産状況・支払能力が理由で継続的な取引を停止し、「取引停止・最後の弁済」のうち最も遅い日から1年以上経過したとき 【2】同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払いを督促しても弁済がないとき

上記の【1】に関しては、売掛債権に担保物が含まれる場合や、債権者との取引が一時的であった場合は該当しないため注意が必要です。また、【1】【2】はいずれも売掛債権が対象であり、貸付金や立替金は含まれない点も理解しておきましょう。

ちなみに前述の2つのケースとは違い、このケースでは債権の一部しか損金算入が認められません。具体的には「損金=売掛債権額-備忘価額」の式で算出され、損金の算入時には貸倒損失としてきちんと経理処理をしておく必要があります。

損金算入のタイミングは、「事実発生日を含む事業年度」が基本

上記では貸し倒れを損金算入できる3つのケースを解説しましたが、損金算入のタイミングも理解しておくことが重要です。基本的には「事実発生日」を基準として、その日を含む事業年度に経理処理をすれば問題ありません。

たとえば、債務者の行方不明によって債権回収が事実上不可能となったケースでは、「その事実が判明した事業年度」が損金算入のタイミングです。ただし、金銭債権に担保物が含まれており、その担保物の処理が翌期まで持ちこされる場合など、事実発生と同じ事業年度に損金算入できないケースも少なからず存在するので注意しておきましょう。

スムーズに経理処理をするために、金銭債権の状態は早めの確認を

貸倒損失の要件はやや複雑ですが、実際に直面しているシーンを想定しながら確認するとイメージしやすいはずです。貸し倒れの扱いに悩んだ場合には、まずはその債権や債務者の状況を明確にし、本記事を参考にしながら該当するケースを判断していきましょう。

特に債務者の状況に関しては、すぐに詳細を確認できない可能性もあるので、金銭債権の状態は早めに確認をしておくことが重要です。(提供:企業オーナーonline


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