住宅ローンは金額が大きいだけに、その負担額は借り入れ条件や利用する金融機関の違いによって、百万円単位で変わってくる。住宅ローン選びで失敗しないために、どのようなポイントを押さえておけばよいのか。

住宅ローンを選ぶときの4つ注意点

住宅ローン,おすすめ
(画像=Elle Aon/Shutterstock.com)

住宅ローンを選ぶときに注意しておきたいポイントとして次の4つがある。

(1)低金利の住宅ローンほど審査は厳しい

いくら条件のよい住宅ローンがあっても審査に通らなければ利用できない。低金利の住宅ローンほど審査は厳しく、地銀や信金に比べてネット銀行やメガバンクのほうが住宅ローン審査は厳しいとされる。住宅ローン審査では主に次のような項目がチェックされる。

【属性に関する項目】
・返済時の年齢……80歳未満であることを条件とする金融機関が多い
・勤務先/雇用形態……一般的に、公務員>大企業の社員>中小企業の社員>パート・アルバイトの順で評価される。医師や弁護士、公認会計士などの有力資格があれば有利に働く
・勤続年数……一般的に勤続年数が長いほうが有利。勤続1~3年以上が目安
・年収
・他の借入残高/返済状況
・個人信用情報
・健康状態……民間金融機関の住宅ローンでは一般的に団体信用生命保険に加入できることが条件となっている

【借入条件・物件に関する項目】
・借入金額……フラット35の場合は100万円以上8,000万円以下
・自己資金(頭金)の割合……自己資金が多いほうが有利
・返済比率(税込年収に対する年間返済額の割合)……金融機関や年収にもよるが、一般的に30~40%未満であることが条件
・担保評価…物件(土地・建物)の担保評価額が借入金額以下であるかが目安
・住宅要件(フラット35の場合)……一戸建ての場合70㎡以上、マンションの場合30㎡以上。

住宅ローン「フラット35」の審査では、勤務先(勤務形態)や勤続年数、団体信用生命保険への加入といった要件がない。自営業や勤続年数の短い人、健康状態に不安のある人など民間金融機関の住宅ローンでは審査に通りにくい人でも、収入要件などを満たしていれば比較的審査に通りやすい。

(2)住宅ローンの変動金利は金利が安いが資金に余裕がある人に向いている

住宅ローンの金利タイプは大きく「変動金利型」「固定期間選択型」「全期間固定金利型」の3つがある。それぞれのメリット・デメリットをふまえて、適切な金利タイプを選ぶ必要がある。

【変動金利型のメリット】
・固定金利よりも金利が低い(利息が少なく元金の減るペースが早い)
・市場金利が下がると返済額が減る
・いつでもほかの金利タイプへ変更できる

【変動金利型のデメリット】
・市場金利が上がると返済額が増える
・借入時点で返済額が確定しないため、返済計画が立てにくい

【固定期間選択型のメリット】
・全期間固定金利よりも金利が低い
・固定期間中は返済額が一定

【固定期間選択型のデメリット】
・固定期間終了後に金利引き下げ幅が縮小し、金利が上がるケースがある

【全期間固定金利型のメリット】
・借入時点で返済額が確定するため、返済計画が立てやすい
・市場金利が上がっても返済額が変わらない

【全期間固定金利型のデメリット】
・変動金利よりも金利が高い(利息が多く元金の減るペースが遅い)
・市場金利が下がっても返済額は下がらない
・金利タイプの変更ができない

一般に「変動金利型」は資金に余裕がある人(返済余力の大きい人・リスク許容度の高い人)、借入期間が短い人、将来繰り上げ返済を予定している人などに向いている。

「全期間固定金利型」は借入時点で返済計画を確定させておきたい人などに向いている。

(3)住宅ローンは金利の安さではなく金利と諸費用を加味した総返済額で比較する

住宅ローンを利用する場合、金利(利息)負担以外に「保証料」や「事務手数料」、「登記費用」、「団体信用保険料」などの諸費用がかかる。「保証料」や「事務手数料」、「団体信用保険料」は金融機関によって差がつきやすい。

特に住宅ローンの金利に費用が上乗せされるタイプは負担が大きくなりやすいため要注意だ。以下に注意しなければならない手数料について解説する。

・事務手数料
金融機関に支払う手数料の事務手数料には「定率型」と「定額型」がある。「定率型」の手数料は借入金額に応じて借入金額の2%というように決まる。一方の「定額型」の手数料は借入金額によらず一律に決まっている。

住宅ローンの借入金額が大きくなるほど定率型の手数料は割高になる。定率型と定額型を選択できる住宅ローンの場合、金利は定率型のほうが低く設定されていることが多い。そのためどちらが有利かは、金利負担と手数料の合計額で比較して判断しなければならない。

・保証料
保証会社を利用する住宅ローンでは保証会社に支払う保証料がかかる。保証料の支払い方式には、借り入れ時に一括で支払う「外枠方式」と金利に上乗せして分割して支払う「内枠方式」がある。ネット銀行やネット専用住宅ローンでは、保証料を不要とする代わりに、事務手数料を割高に設定しているケースが多い。

住宅ローンの繰り上げ返済をして返済期間が短縮されたり、借り換えのため住宅ローンを一括返済したりした場合、保証料は短縮された期間に応じて戻ってくる。ただし事務手数料は戻ってこない。

たとえば保証料が50万円(うち保証会社事務手数料3万円)と保証料不要・金融機関事務手数料50万円の住宅ローンの場合で考えてみよう。前者では繰り上げ返済や借り換え時に未経過期間分の保証料が戻ってくるが、後者では何も戻ってこない。この違いは知っておいたほうがいいだろう。

(4)団体信用生命保険の内容は金融機関や商品で異なるため比較検討を

団体信用生命保険(以下、団信)とは、住宅ローンの契約者に万一があった場合、生命保険会社が住宅ローン残高に相当する保険金を金融機関に支払いローンを完済する保険のことだ。

最近では死亡・高度障害状態となった場合だけでなく、所定の就業不能状態となった場合やがんと診断された場合なども保障される団信も増えている。

保障内容や金利が上乗せされるタイプの商品かはよく比較したいポイントだ。また金利を比較するときには団信保険料を含む金利なのかも注意したい。

変動金利型の住宅ローンにおすすめの金融機関3選

変動金利型の住宅ローンは金利の競争が激しく、各金融機関は団信の保障内容で差別化を図っている。(※金利はすべて2020年3月適用金利、ほかデータすべて2020年3月時点)

(1)auじぶん銀行……金利0.41%、がん50%団信が無料付帯、セット割の適用も

auじぶん銀行は、三菱UFJ銀行とKDDIが共同出資して設立したインターネット専業銀行だ。業界最低水準の金利と、無料で付帯するがん50%団信が魅力だ。

変動金利は、年0.41%(2020年3月適用キャンペーン金利)。KDDIが運営する「じぶんでんき」とセットで契約した場合、金利がさらに0.03%引き下げられる。30年ローンで3,000万円を借り入れた場合、毎月の返済額は約400円下がる。auじぶん銀行を利用するなら、併せて検討したい。

借入金額3,000万円、借入期間30年、元利均等返済・ボーナス返済なしでの場合の毎月の返済額は以下のようになる。

・セット割適用なし(年0.41%)……毎月の返済額8万8,577円
・セット割適用あり(年0.38%)……毎月の返済額8万8,186円(▲391円)
※筆者試算

auじぶん銀行の住宅ローンには、死亡・高度障害状態を保障する一般団信に加え、がんと診断された場合に住宅ローン残高の50%が免除される「がん50%保障団信」が無料で付帯する。

金利を上乗せして、「がん100%保障団信」(金利+年0.2%)や「11疾病保障団信」(金利+年0.3%)を付けて、保障を手厚くすることもできる。

団信の内容はジャパンネット銀行と同じだが、ジャパンネット銀行では「がん50%保障団信」を付けるためにも金利の上乗せ(+年0.1%)が必要になる点が異なる。

借入時の保証料は不要、借入金額の2.2%(税込)の融資事務手数料がかかる。繰上返済手数料は無料だ(固定金利特約適用中の全額繰上返済のみ3万3,000円)。

(2)住信SBIネット銀行……金利0.415%、全疾病保障の団信が無料付帯、対面相談もできる

住信SBIネット銀行は、三井住友信託銀行とSBIホールディングスが共同出資して設立したインターネット専業銀行だ。

変動金利は、年0.415%(通期引き下げプラン・2020年3月適用キャンペーン金利)。金利の上乗せなしで全疾病保障や団信の保障内容が充実している。

全疾病保障団信とは、精神障害を除く病気やケガで所定の就労不能状態となった場合、月々の返済が保障されるもの。就業不能状態(※)が12ヵ月以上継続した場合は、住宅ローン返済が免除される。

※8疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)以外の場合は、入院による就業不能の場合に限る。

ネット銀行でありながら、住宅ローン店舗の「ローンプラザ」やSBIグループの総合相談窓口の「SBIマネープラザ」で対面相談ができるのも特徴だ。ネットと対面のどちらで契約しても商品内容や金利は同じだ。なるべく金利が低い住宅ローンを、対面で相談しながら契約したい人にはおすすめだ。ただし、対面相談できる店舗は主に都市部にあることと、書面契約の場合は印紙代が必要になることに注意したい。

対面での相談が難しい場合でも、専用アプリで手続きをサポートする仕組みがあるので安心だ。アプリではチャット形式でいつでも問い合わせができ、融資実行まで手続き状況を把握した担当者によるサポートが受けられる。

借入時の保証料は不要、借入金額の2.2%(税込)の融資事務手数料がかかる。繰上返済手数料は無料だ(固定金利特約適用中の全額繰上返済のみ3万3,000円)。

(3)ジャパンネット銀行……金利は業界最低水準の0.399%

ジャパンネット銀行は、三井住友銀行とZホールディングス(旧ヤフー)などが出資して設立したインターネット専業銀行だ。

住宅ローンの取り扱いを始めたのは2019年7月と遅く、顧客を獲得するため変動金利では業界最低の年0.399%を打ち出している。

団信の保障内容はauじぶん銀行と同じだが、一般団信以外の保障を追加するには金利の上乗せが必要になる。じぶんでんきセット割を利用しない場合や、一般団信のみの場合、あるいは「がん100%保障団信」(金利+年0.2%)や「11疾病保障団信」(金利+年0.3%)を付ける場合は、金利面ではジャパンネット銀行が有利だ。

全期間固定金利型の住宅ローンにおすすめの金融機関3選

全期間固定金利型住宅ローンは大きく分けて、住宅金融支援機構の提供する「フラット35」と各金融機関が提供する住宅ローンがある。フラット35の利用には、取得する住宅が一定の技術基準を満たしている必要があるが、全期間固定金利型の住宅ローンとしては比較的金利が低いため、優先的に検討したい商品だ。(※金利はすべて2020年3月適用金利、ほかデータすべて2020年3月時点)

⑴住信SBIネット銀行……低金利で全疾病保障無料付帯のフラット35「保証型」と融資手数料の割安なフラット35「買取型」

住信SBIネット銀行は保証型のフラット35を取り扱う数少ない金融機関のひとつだ。住信SBIネット銀行のフラット35「保証型」は、「買取型」よりも金利が低く設定されており、全疾病保障の団信が無料で付帯する。より低金利でフラット35を利用した人には、保証型がおすすめだ。

フラット35では借入時の融資手数料を2.2%(税込)としている金融機関が多いが、住信SBIネット銀行の買取型では1.1%(税込)と低いのが特徴だ。

保証型の融資事務手数料は2.2%(税込)だが、総返済額は金利の低い保証型のほうが少ないケースが多い。3,000万円の30年ローン(自己資金20%・フラット35S適用なし・元利均等返済・ボーナス返済なし)という条件で比較すると、総返済額は保証型のほうが約50万円少ない。

フラット35の「保証型」と「買取型」のどちらが有利かは、実際の借入条件で試算して判断してほしい。金利は自己資金割合でも変わり、保証型は自己資金が10%以上でないと利用できないので注意したい。以下の表に、フラット35の「保証型」と「買取型」の違いをまとめた。

フラット35買取型と保証型(住信SBIネット銀行)の違い

  買取型 保証型
金利(新規借入) 借入期間21~35年の場合
(自己資金10%以上)
年1.24%
(自己資金10%未満) 
年1.50%
借入期間15~35年の場合
(自己資金20%以上)
年1.08%
(自己資金10%以上)
年1.16%
金利
(フラット35Sによる
金利引き下げ期間中)
借入期間21~35年の場合
(自己資金10%以上)
年0.99%
(自己資金10%未満)
年1.25%
借入期間15~35年の場合
(自己資金20%以上)
年0.83%
(自己資金10%以上)
年0.91%
仕組み 貸し手は金融機関
※融資後に住宅金融支援機構が
住宅ローンを買い取る。
貸し手は金融機関
※金融機関が提供する
住宅ローンを
住宅金融支援機構が保証する
自己資金 購入価額または建築費に対し、
自己資金10%未満でも
借入を申込める。
購入価額または
建築費に対し、自己資金
10%以上であることが
借入条件。
事務手数料 新規借入:借入金額の1.1%
(税込)
借換:借入金額の0.99%
(税込)
※最低11万円(税込)
 借入金額の2.2%
(税込)
※最低11万円
(税込)
保証料 不要 不要
一部繰上返済手数料 無料 無料
全部繰上返済手数料 無料 3万3,000円
団信 原則住宅金融支援機構の
提供する新機構団信に加入。
借入金額の0.55%(税込)を
事務手数料に上乗せして
全疾病保障に
加入することもできる。
保険料の負担なく団信・
全疾病保障が基本付帯。
取扱金融機関数
(2020年3月2日
時点)
326機関 10機関
(新規受付を行っているのは
6機関)
抵当権者 住宅金融支援機構 金融機関

※住信SBIネット銀行HPおよび住宅金融支援機構HPをもとに筆者作成、2020年3月時点

⑵ARUHI……自己資金(頭金)の多い人に有利なフラット35「ARUHIスーパーフラット」

住宅ローン専門金融機関であるARUHIでは、買取型と保証型のフラット35を取り扱っている。保証型である「ARUHIスーパーフラット」は、自己資金の割合に応じた金利設定が変わるため、自己資金の多い人(借入割合が少ない人)におすすめのフラット35と言える。

【ARUHI スーパーフラット・借入期間15~35年・ARUHI一般団信加入・新規(2020年3月適用金利)】
自己資金割合10%以上(スーパーフラット9)……年1.23%
自己資金割合20%以上(スーパーフラット8)……年1.18%
自己資金割合30%以上(スーパーフラット7)……年1.13%
自己資金割合40%以上(スーパーフラット6)……年1.08%

事前審査から融資実行まで最短5営業日という審査スピードにも強みがある。

⑶ソニー銀行……金利1.348%、融資手数料が4万4,000円と格安

フラット35以外の全期間固定型住宅ローンでは、ソニー銀行がおすすめだ。借入期間20年超・自己資金10%以上の場合の金利は1.348%と、民間の全期間固定型住宅ローンの中では比較的低い。

借入時の保証料は不要で、融資手数料は借入金額によらず4万4,000円(税込)だ。一般的なネット銀行の融資事務手数料である借入金額の2.2%(税込)と比べてもかなり安く、優位性がある。

がんと診断確定された場合に住宅ローン残高の50%が免除される「がん団信50」は、金利の上乗せなしで付帯するほか、金利を上乗せすれば保障を手厚くすることもできる。

複数の住宅ローンの内容を比較、検討して判断するのがおすすめ

雑誌やネットなどには、多くの住宅ローンのおすすめ記事やランキングがある。確かに上位は条件の良い金融機関や商品だが、それらが必ずしも住宅ローンを借りる人に合うとは限らない。ランキングなどを参考にしながら実際の条件を当てはめて試算し、複数の金融機関や商品を比較して判断することが大切だ。今回紹介したおすすめ金融機関の住宅ローンは、その際の参考にしてほしい。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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