モンテッソーリという教育をご存じでしょうか。オバマ元大統領やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツなど、数々の有名人が受けた教育法として、注目度が高い教育です。日本では、主に幼少期教育として、全国各地の保育園や幼稚園で取入れられています。気になる、教育内容と効果を紹介します。
ビル・ゲイツやラリー・ペイジも受けた「モンテッソーリ」教育とは
そもそも「モンテッソーリ」とは何でしょうか。これは、この教育法の考案者で20世紀初頭に活躍したイタリアの教育者、マリア・モンテッソーリの名前に由来しています。
当初障がい児教育に取り組んでいたモンテッソーリは、自分の教育方法が障がい児に限定されるものではないと感じ、この教育法を広く実践しました。そこでは「子どもは自ら育つ力が備わっている」という考えを軸に、子どもの自立性や他者への思いやり、学習する姿勢を育くむことが重視され、独特な教育メソッドや教具が開発されてきました。
また、教育の場では大人は子どもに知識を教え込むのではなく、子どもが自ら育つ力を発揮できるような環境を整理し、その環境とのかかわり方を示していくことが重要だと考えられています。
こうした教育を実現したのが「子どもの家」です。最初に子どもの家ができた1907年から、すでに100年以上が経過。今や欧米を中心に世界140ヵ国以上にモンテッソーリ教育は拡大しています。そしてビル・ゲイツやグーグル共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、オバマ元大統領など多くの著名人が幼少期にこの教育を受けていたことも明らかになっています。
5つの分野、「お仕事」、縦割りクラス
モンテッソーリ教育の具体的な中身を見ていきましょう。国際モンテッソーリ協会によると、一定の年齢層によって区分され、教師や教具、クラスの人数、教具に自由に取り組む時間などの条件が定められています。
世界では小学校以降の学校教育でもモンテッソーリ教育の導入が進んでいるところがあるようですが、参加人数が多く、日本でも幼少期教育で導入の進む3~6歳のクラスの内容に注目しましょう。
主な教育分野は、日常生活の練習、感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育の5つに分かれます。日常生活の練習は、はさみなどの日常の用具の使用や、掃除や洗濯、洋服のボタンかけなどを通じて体の動かし方を身につけ、実生活での自立性を育む内容となっています。
感覚教育は自分の周囲の情報を取得する感覚器官の発達に注目し、子どもの観察する能力や考える力をさらに伸ばしていきます。情報の整理の仕方として「対にする」「段階づける」「分類する」の3つを重視し、そうした力がつくように設計されたピンクタワーや色板、音感ベルなどの教具を使います。これらは言語や算数、文化の教育の基礎力になっていきます。
言語教育では文字カードや絵カードなどを通じて、語彙を増やしたり文章を学んだりしていきます。算数教育では、ビーズや算数棒などの教具を通じて、数量を触れられるものとして把握。数の概念から簡単な計算までできるように導きます。
文化教育では言語や算数以外の幅広い分野を学びます。具体的には歴史や地理、音楽、生物などの内容で、時計や世界地図のパズルといった教具を用いていきます。
こうした教具に自由に取り組む時間は「お仕事」の時間と呼ばれ、毎日その機会が確保されています。さらに教育内容を年齢別のクラスではなく、3~6歳の子どもたちが混じった「縦割りのクラス」で実践していくところも大きな特徴です。年上の子は年下の子の世話を見て、年下の子は年上の子から学んでいきます。そうした生活を通じて社会性を身につけていきます。
教育の効果は?自立性重視の反動も
モンテッソーリ教育を受けた効果は実際どのようなものでしょうか。子どもにこの教育法を実践する幼稚園や保育園に通わせた親からは、子どもが自ら学ぶ姿勢を見せるようになったり、周囲に流されずに何が正しいかを判断する力が身についているとの声が上がっています。
また、集中力や年齢を超えたコミュニケーション能力が高まる効果も指摘されています。
一方で、デメリットに言及する声もあります。自立性を重視し「お仕事」にも個人で取り組むのが基本となるため、一般の学校での集団行動になじめない場合があるとの指摘や、教具を用いた室内活動が中心のため運動が苦手になるとの意見です。
モンテッソーリ教育に取り組む先生からは、縦割りクラスの中で互いに助け合う中で社会性や協調性も育まれ、外での運動遊びも「粗大運動」の機会確保として実施されるので、そのような指摘は当たらないとの反論もあります。
子どもにとって何が最適の教育方法なのか、親は常に頭を悩ませます。どの子どもも全く同じ子というものは存在せず、それぞれ性格や感覚、考え方、周囲の人や環境に違いがあり、それらが発育に影響を及ぼします。その中で、自立性を重視する教育が我が子に合っているのかは、まさに親が判断していく事項となります。そしてそこに100%正しい回答はないのです。
ただ、共働きの夫婦が増える現代社会では、保育園や幼稚園での教育の重要性がますます高まっています。モンテッソーリ教育に対する関心の高まりは、共感する親が多いことを示しています。日本を取り巻く環境は今後さらに競争が激化し、子どもには生き抜く地力をつけさせたいと考える親も多いでしょう。その中で、自立性を重視したモンテッソーリ教育を選ぶという選択肢は、魅力的な一択であることは間違いありません。(提供:JPRIME)
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