里山の集落で、自然と共存し人々が暮らす日本の原風景。大自然が生活のベースとなっている田舎には、まだまだ色濃く残っています。それを感じられるツーリズムとして、田舎での暮らしと禅体験が注目されています。

禅とは、辞書によれば「精神を集中して無我の境地に入ること」とあります。雑音の多い都会では「無我の境地」を体感することは困難です。しかし、田舎での禅は、日本の原風景の中にそのまま入り込み、そこに同化してしまうような貴重な体験なのです。

自然とともに生きる。生を実感できる田舎の暮らし

近年の田舎のイメージと言えば、過疎化、人口減少、仕事がないなど、都会と比べるといかにも「取り残された場所」といったものになっています。しかし、インターネットが普及し、誰もがスマートフォンを使うようになったいま、必要に応じてテクノロジーを使いこなすことで、どこででも十分に仕事に就き、暮らしていける時代になってきました。田舎と都会の間の環境格差は小さくなっており、むしろ大自然と共に自然を活用して暮らせるという田舎のメリットが存在感を増しているのです。

以前、田舎を旅行する外国人に聞いたところ「東京のように、どこにでもある都会での滞在は1日で十分。日本の原風景が残された場所を体感したい」と話していました。原風景が残る田舎で、現地の人とざっくばらんに交流しながら時間を過すことに魅力を感じるのは、都会で生活するすべての人に共通するものでしょう。

都会では店やエンターテインメント施設など、お金を出せば楽しませてくれる環境はありますが、自然とともに生きるという選択肢は多くありません。田舎には半自給自足的な暮らしをするという選択肢が残っているので、「生きる」という本能を体感できるのです。

海外の富裕層の集う田舎体験と禅寺

石川県は能登半島にある穴水町の移住者が、要望に応じて田舎体験を企画、運営しています。日本各地はもちろん、欧米を含めた外国人の富裕層が参加しています。この田舎体験の1つとして、向かう先は禅寺です。

敷地内にある5軒の家には計15人が居住します。住人は畑や田んぼ、薪づくりを行い、冬には餅つき、味噌づくりなどをして、協力して半自給自足暮らしをしています。風呂は薪がベースで、敷地内で共用しています。

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石川県穴水町での田舎体験、現地での様子(著者撮影)

稲作のための種籾の確保や飼育する鶏からいただく卵など、食材の多くがこの禅寺で作られ、育てられています。毎日の暮らしからも禅を体感できますが、本堂では座禅をすることもでき、静かな空間で「自分の時間」に集中することができます。

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座禅の時。本堂にて、それぞれに向かい合う貴重な時間

忙しい日々の中で、自分と向き合う時間を持つことは、いまやぜいたくとも言えます。そのような空間を探すのも大変です。この空間で聞こえるのは、鳥のさえずりや風に揺られる草木の音などのみです。

「欲しいものは手に入れた。その後の人生をどのように過ごすべきか……」この能登の禅寺にやってくる富裕層の問いかけに、この田舎暮らしと禅体験がひとつの解を提示しています。

足ることを知る田舎で体験する禅のこころえ

この田舎体験企画は、まず海外の富裕層が気づき、積極的に体験しようと現地を訪れています。日本在住の富裕層であれば、もっと手軽に実感できることでしょう。都会の喧騒からしばし離れたいという日常的なニーズを満たすにはもってこいの選択肢です。

田舎の多くでは、人口減少と高齢化を背景とする過疎化が進んでいます。一方、それは手つかずの自然が残され、日本の原風景が残存している貴重な場所と言えます。一切の我欲を捨て、無我の境地を目指す禅は、物質にあふれる都会よりも、足ることを知る田舎でこそ、深い体験となります。この深い体験こそが、富裕層を惹きつける理由となっているようです。(提供:JPRIME


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