バブル崩壊から今に至るまで、日本企業は「選択と集中」と「持たざる経営」を進めてきた。だが新たな事業創造ができず、成長軌道に乗れずにいる。

そこで、『持たざる経営の虚実』(日本経済新聞出版社)を出版したフロンティア・マネジメント代表取締役の松岡真宏氏に、日本企業が目指すべき道について4回に渡って寄稿してもらった。

2回目は、「コングロマリット経営の勧め」だ。

松岡真宏(まつおか・まさひろ)氏
東京大学経済学部卒。バークレイズ証券、UBS証券などで流通業界の証券アナリストとして活動。2003年に産業再生機構に入社し、カネボウとダイエーの再生計画を担当する。2007年よりフロンティア・マネジメント代表取締役。近著に『時間資本主義の時代 あなたの時間価値はどこまで高められるか?』(日本経済新聞出版社)がある。

中国・インドで年率23%、韓国で11%成長

成長企業のための「多角化経営」のすすめ#2
(画像=IM_photo/Shutterstock, ZUU online)

90年代後半以降の日本において、「選択と集中」の礼賛とともに語られたのは、コングロマリットに対する否定だった。

米国のコングロマリットが1980年代後半から勢いを失くしたことをきっかけに、欧米ではコングロマリットが“時代遅れの恐竜”扱いされ、日本でも10年遅れて90年代後半からいわれるようになった。

しかし、本当にコングロマリットは誤りなのか。

アジアや中南米では、依然としてコングロマリット企業が中心的な存在として経済が発展している。ある論文によれば、過去10年間、コングロマリット企業の売上高は、中国とインドが年率23%以上、韓国が年率11%の成長となるなど、特に新興国で急増している。また、売上高上位50位(除く国営企業)のうち、コングロマリットが占める企業数は、インドでは45社、中国では40社、韓国では20社となっている。

好例は、中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる、同国を代表するインターネット系新興企業だ。BATは、今や「投資家」としてグループの業容を拡大している。リサーチ会社のデータによると、2017年以来アリババは既に60件の投資をし、テンセントはこの6年で600社を超える企業を買収した。また、BATは既に直接または間接的に、中国における124社の「ユニコーン企業(時価総額1000億円以上の未上場会社の呼称)」の半数に投資している。

特徴的なのは、コングロマリットの多角化度合いが、近年さらに増していることだ。主要コングロマリットでは、平均すると18ヵ月ごとに新しい会社が設立され、ほとんどの場合、既存事業と無関係の分野だという。

地域によって異なる事業多角化の方向性

ただし、コングロマリット戦略と一言でいっても、事業と地域という違いがあるし、マザーマーケットの大小によっても方向性が異なる影響を受ける。自社の置かれた環境を踏まえて、冷静に可能性を判断する必要がある。一般的に言えば、各社の出自の国の市場、つまり母国市場(マザーマーケット)の規模の大小によって、企業の多角化の方向性は影響を受けてくる。

事業多角化の方向性
(画像=『持たざる経営の虚実』より)

例えば、母国市場が大きい国では、まず母国で十分なシェアを握り、母国で利潤を得てから同じビジネスを海外展開することでさらに成長しようというインセンティブが生じやすい。母国市場での十分な利潤を確保することができるからだ。図中のL1→L2の動き、米国や中国がこれに当たる。