特定複合観光施設区整備法(IR推進法)が2016年に成立後、政治家の汚職事件などもあり、あらためて注目を集めているのが統合型リゾート(IR)です。IRをカジノと同じものととらえるイメージもありますが、実態は異なります。IRの中にはもちろんカジノ用の施設も含まれますが、それ以外にも国際会議場や美術館、ホテル、レストランなどが一体となる複合施設で、人々の新たな流れを作り出す事業ともいえるでしょう。
シンガポールにある「マリーナベイ・サンズ」は代表例の1つといえるでしょうか。ともすればIRを核にして日本のライフスタイルを変える可能性もありそうです。
カジノは一部、MICEや娯楽、商業などの施設も
IR推進法は2016年に公布・施行されました。会議場や展示場といったMICE施設やホテルなどの宿泊施設、さらには美術館や博物館、劇場などの娯楽施設、レストランやショッピングモールといった商業施設とカジノ施設が一体となったIR(Integrated Resort:統合型リゾート)の整備を目指しています。日本では禁じられていたカジノが解禁されるとあって、「カジノ解禁法」などの呼び方も出ていますが、施設全体に占めるカジノの面積の割合は3%にとどまります。
ただし、収益の面で見た場合、カジノの存在は大きく、マリーナベイ・サンズでは、カジノによる売上が全体の7割程度を占めているといわれています。IR推進法でも、カジノの収益を通じて大規模な投資を伴う施設の採算性を担保することを目指しています。IRの中にカジノを取り込むことで、巨大施設群の整備・運用に向けた安定的な収益源の確保につなげるといったイメージでしょうか。
シンガポールはIR整備で巨額な民間投資、観光客や観光収入にも波及効果
日本もお手本にしているマリーナベイ・サンズがあるシンガポールでは2005年にカジノ解禁の決定が下され、2010年に2つのIR施設「マリーナベイ・サンズ」と「リゾート・ワールド・セントーサ」が誕生しました。マリーナベイ・サンズといえば、3つの高層ホテルが屋上にある「空中に浮かぶ船」でつながった「サンズ・スカイパーク」が有名です。屋上にあるインフィニティプールに入れば、記念撮影をせずにはいられないでしょう。マリーナベイ・サンズはこのスカイパークのほか、カジノや会議場、劇場などを配置しており、階下の美術館や博物館、ショッピングモールなどにもすぐ足を運べるつくりになっています。
シンガポールのもう一つのIR「リゾート・ワールド・セントーサ」はセントーサ島にあります。セントーサ島は2018年の米朝首脳会談の開催場所となったことでも注目を集めましたが、島にはカジノのほかにも、「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」などのエンターテインメント施設や水族館、博物館、ホテル、コンベンションセンターなどがそろっています。
日本政府の試算によれば、シンガポールでは2つのIR施設を開発したことで約1兆円の民間投資があったといいます。また、IR施設の開設だけが影響しているわけではないでしょうが、開業から4年で国全体の観光客が6割増加したほか、観光関連の収入も9割増えたそうです。
しかし、IRの導入によりこバラ色の未来だけが待ち受けているわけではありません。カジノの解禁に伴ってギャンブル依存症の人の増加や治安の悪化といった負の側面の表出に警鐘が鳴らされています。こうした懸念事項については、国・政府が主体となって取り組みを進める必要があり、法整備がなされているわけです。
IRの申請は2021年1月から、最大3ヵ所で整備へ
現在のところ、実際にIRが整備される場所はまだ決まっていません。報道によれば、日本でIRが作られるのは最大3ヵ所になる見通しのようです。国土交通省はIRの誘致を目指す自治体が国に整備計画を申請する期間を2021年1月から7月とする案を示しています。今後は、この申請に向けて、各自治体においてさまざまな議論がなされるところです。
娯楽や宿泊、ビジネスなどさまざまな施設を一体的に整備するリゾート施設の誕生は、「観光立国」を掲げる日本の観光振興や地域の活性化を後押しし、日本経済の新たな起爆剤となるかもしれません。新たな人の流れを作り出すことから、私たちのオン・オフにおけるライフスタイルも変わる可能性があります。投資、ビジネス、レジャーとIRのさまざまな可能性について、正負両面からあらためて考えてみてはいかがでしょうか。(提供:JPRIME)
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