賃貸物件の売買を行うとき、同時に固定資産税の精算を行うのが通例です。そのため売主も買主も確定申告の際には固定資産税精算金も処理しなくてはなりません。今回は、固定資産税精算金の考え方をおさえたうえで、税金の処理について見ていきます。

固定資産税精算金は不動産売買当事者でやりとり

売買,固定資産税精算金
(画像=Tinnakorn jorruang/Shutterstock.com)

固定資産税や都市計画税は毎年1月1日時点で土地や建物を持っている人に対して課税される市区町村の税金です。納税した年内に不動産を手放しても、一度納付した固定資産税や都市計画税は戻ってきません。そのため不動産を売買したときは、売買の当事者間で固定資産税や都市計画税を精算するのが一般的です。

具体的には、不動産を譲渡した日からその年の12月31日までの間に対応する固定資産税・都市計画税相当額(以下「固定資産税精算金」)を不動産の売買価格とは別に買主が売主に支払います。これに伴い、不動産の売買とは別に固定資産税精算金についても売主・買主の双方において税務処理が必要です。

固定資産税精算金は「税金」ではなく「売買対価の一部」

固定資産税精算金を税務処理する際に一つ注意すべきことがあります。不動産購入時は、固定資産税精算金だけでなく不動産取得税や登録免許税も支払うということです。なぜなら固定資産税精算金は「税金そのものではない」からです。どちらも「税」という文字がつくため混同しやすいので明確に区別しなくてはなりません。

固定資産税精算金はあくまでも当事者間で取り決めたお金のやりとりに過ぎません。年の途中で不動産を購入した買主には固定資産税の納付義務はないのです。仮に売主が「固定資産税精算金を払ってくれなくても構わない」と言うならそれで不動産売買を行うこともできます。一方、不動産取得税と登録免許税は地方自治体から課せられる税金であるため、納付しないわけにはいきません。

またこれらは不動産の取得に伴う一種の経費ですが、どちらかというと事後的な処理であり不動産の取得原価とするには難しさが伴います。したがって以下のように区別する必要があります。

・固定資産税精算金
不動産売買の対価の一部を構成するもので売却対価や購入価額

・不動産取得税と登録免許税
不動産取引に伴う課税で必要経費

売主側の処理

売主側の固定資産税精算金の税務処理は以下のようになります。

譲渡所得

固定資産税精算金は譲渡対価です。そのため土地や建物の譲渡対価に加算したうえで譲渡所得を計算します。

不動産所得

原則として売却した年の1月1日に賦課決定した固定資産税は全額、不動産所得を計算する際の必要経費に算入します。各納期の開始日や納付日の属した年分の経費にすることも可能です。しかし納付義務が自分にあることや固定資産税精算金を売却時に受け取ることを考えると、賦課決定した年に全額納付して経費にしたほうが処理はしやすいでしょう。

消費税

不動産の売主が消費税の納税義務者ならば、固定資産税精算金を土地分と建物分に分けなくてはなりません。なぜなら消費税法上、土地の売却は非課税ですが建物の売却は課税対象になるからです。固定資産税精算金のうち土地対応分は消費税の非課税売上に、建物対応分は消費税の課税売上になります。

買主側の処理

買主側の固定資産税精算金の税務処理は次のようになります。

不動産所得

買主が支払った固定資産税精算金は固定資産税を納付せずに土地を利用できる対価があり、納税義務者として支払う固定資産税とは違います。そのため必要経費としては処理をしません。土地・建物それぞれに対応する金額に按分したうえで取得価額に算入します。

消費税

不動産の買主が消費税の納税義務者であれば売主と同様、固定資産税精算金を土地分と建物分に分けて消費税の処理を行います。固定資産税精算金のうち土地対応分は消費税の非課税仕入、建物対応分は消費税の課税仕入となります。

税務処理の際に迷ってしまうことのないよう、固定資産税精算金の考え方を事前にしっかりとおさえておくようにしましょう。(提供:YANUSY

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