誰よりも「間接業務」を早く習得した理由とは?

このように清明氏は、若手時代から「苦手意識を感じている相手にこそ、あえてポジティブに捉えて飛び込んでいく」ことを大切にしてきた。

そして清明氏には、メンタルの安定を保つために、もう一つこの頃から心がけてきたことがあるという。

「新人の頃って、周りは自分よりも仕事ができる人ばかりなので、自信を失いそうになりますよね。そこで私が取り組むことにしたのは、小さなことでいいから、周りの人から『これについては清明さんに聞こう』と思 ってもらえる得意なものを一つ作ることでした。

当時は色々な業務がパソコンに切り替わっているタイミングで、稟りん議ぎ や決裁についても電子化が始まろうとしていました。けれども先輩たちは昼間は営業活動、夕方以降は伝票の処理などで手いっぱい。とても電子化に対応するための知識を身につける余裕がありません。

そこで私は誰よりもマニュアルを一生懸命読み込んで知識やスキルを修得し、先輩から頼られる存在になることを目指しました。

正直、そのことによって組織の利益の向上にどれだけ貢献できたかといえば、微々たるものものだったと思います。でも『少なくともこのことについては、自分は周りから必要とされている』という実感を得ることは、失敗をして心が折れそうになったときに、自分を支える拠り所になります。

その後、私は企業再生などのファンドビジネスを手がける会社に転職。そして今はネット証券の仕事に携わっています。新しい世界に飛び込むと、当然自分よりもその分野に精通したプロフェッショナルに囲まれた中で仕事をすることになります。

自分はちゃんと組織に貢献できているのか、不安になるものです。そんなときには新人の頃と同じように、『これについては誰よりもできる』と言えるものを一つずつ作り、積み上げていくようにしてきました」