企業経営や事業推進では戦略が重要である。経営資源を効率的に配分し、攻める分野を決める。現状を正しく分析して立案しないと誤った方向に企業全体を導きかねない。今回は、正しい現状認識や戦略立案に役立つ3CとSWOT分析を紹介する。経営や事業の運営にぜひ役立ててほしい。

経営戦略の立案に分析が必要な理由

3c分析
(画像=everything possible/Shutterstock.com)

3C分析とSWOT分析の説明をする前に、まずは経営戦略の立案に分析が必要な理由を解説していく。

現状把握によって問題点を明らかに

経営戦略のアプローチはさまざまだろう。有名な経営者の方法論を真似てみたり、今までの経験を活かしたりするパターンなどがある。場合によっては思いつきや感覚で決めることもあるかもしれない。

他社の方法論を真似ても、他社との前提条件が異なると有効利用できない。また、思いつきで考えると、戦略に漏れが生じる可能性もある。

経営戦略が誤っていると、企業が間違った方向に進みかねない。それを避けるために、正しく現状を認識することが重要である。

フレームワークが有効

自社の現状を把握するには、フレームワークが有効である。フレームワークとは、思考の枠組みや体系を指す。過去の賢人達が試行錯誤し、洗練させてきたエッセンスだといえる。

有用でないものは淘汰されると考えれば、長く使用され続けるフレームワークは、有用であるに違いない。フレームワークを通して網羅的に考えることで、適切な課題を設定でき、経営戦略を効率的かつ効果的に立案できる。

しかし、フレームワークの数は多く、それぞれ分析する視点や内容が異なる。たとえば、「起承転結」はストーリー構成におけるフレームワークであるが、経営戦略を立案する際には向いていないだろう。

結論として適切なフレームワークを用いるのが重要である。さまざまなフレームワークを知り、独自のフレームワークをつくるとよい。

フレームワークについての理解をさらに深めるために、ここからは、ビジネスの現状を分析する基本的なフレームワークとして3C分析とSWOT分析を紹介する。

3C分析とは?

まずは3C分析から説明していこう。

3C分析の内容

3C分析は、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)について分析するフレームワークである。分析の対象を事業環境におき、その中のプレイヤーを顧客・競合・自社に細分化して分析する。分析の視点は下記のとおりだ。

分析事項1.顧客(Customer)

現在の市場規模や成長性、顧客像、顧客の需要、顧客の意思決定方法などを理解する。たとえば下記の項目である。

・関連法令による後押しや制約
・世界や自国の現在及び今後の経済成長率
・為替や金利の変動による影響
・市場規模
・市場の成長性
・人口動態による影響
・技術革新の有無
・対象顧客
・顧客による消費行動の変化

分析事項2.競合(Competitor)

市場と顧客を競合と自社で分け合うので、競合相手について市場内の立ち位置や経営資源を理解しなければならない。たとえば下記の項目である。

・競合のシェア
・競合のターゲット
・競合が目指すポジション
・競合の販売組織や生産組織
・競合の強みと弱み
・新規事業者参入の有無

分析事項3. 自社(Company)

競合と同様に自社の立ち位置や経営資源を理解する。たとえば以下の項目である。

・自社のシェア
・自社のミッションやビジョン
・自社が実施した競争戦略の成否
・自社の経営資源(社員・設備・資金)
・自社の強みと弱み

3C分析の目的

3C分析の目的は、事業環境を把握し、競争戦略や販促活動に関する課題を抽出することだ。

顧客や顧客をとりまく経済環境などを理解することで下記の要素を把握できる。

・狙える年商
・提供すべき商品やサービス
・顧客ターゲット
・提供価格
・販売方法
・自社に不足している点

競合の動きを理解することで下記の要素を把握できる。

・商品開発における差別化
・価格決定
・参入すべき市場
・参入すべきでない市場

自社を理解することで下記の要素を把握できる。

・獲得すべき資源
・資源を投下すべきポイント
・目標とするシェア

孫氏でいう、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」である。現状を正しく把握することが、勝つための近道である。

3C分析の方法

3つのCについて上記に挙げた項目を検討していく。まず市場を把握し、その中で競合の動きや立ち位置を理解する。それを踏まえた自社分析をするとやりやすい。

分析を始めると情報の量と質が問題となるはずだ。たとえば、市場や顧客について、関連法令による後押しや制約の有無を考えたときは、当然法令を把握しなければならない。

法人であれば会社法、個人事業であれば所得税法、人材派遣事業を営んでいれば労働者派遣法などと、関係する法令を網羅したうえで、影響や法改正の見込みを考慮していく。

外部の専門家に情報をもらうのも良い。仮に予測や意見の域を超えない場合、統計などで事実確認したい。事実を集める方法は主に下記のとおりだ。

・顧客に直接話を聞く
・市場調査をする
・人の流れを調べる
・自治体のデータを確認する
・従業員にインタビューする

ただし、売上が1億円の企業が1兆円市場で事業をおこなうときなど、統計や市場全体を重視すると狙える市場や顧客の志向を読み誤る場合もある。情報収集にはコストがかかるため、事前に仮説をたてて自社に合う情報量を見極めることが大切だ。

SWOT分析とは?

次はSWOT分析についてご紹介しよう。

SWOT分析の内容

SWOTはスウォットと読み、自社の内部及び外部の環境についてプラス面とマイナス面をマトリックスにする分析方法だ。3C分析と別ものではなく、内容に重複する部分がある。

3C分析の際に、自社や競合の強みや弱みをSWOT分析で把握するなど、並行して使ってもよい。

分析事項1.強み(Strength)

自社内のプラス面を分析する。目標の達成に貢献する企業内部の性質が対象だ。たとえば、経営資源の量や質、卓越したオペレーション、独特のポジショニング、消費者から認知されたブランド、低いコストで資金調達ができることなどが挙げられる。

分析事項2.弱み(Weakness)

自社内のマイナス面を分析する。目標の達成を阻害する企業内部の性質が対象だ。たとえば、投下できる資金の不足、偏った顧客、高コスト構造、ワンマン社長の後継者不在などが挙げられる。

分析事項3.機会(Opportunity)

外部環境のプラス面を分析する。目標の達成に役立つ企業外部の性質が対象だ。たとえば、有給休暇取得の推進による余暇の増加、テレワークの普及、高性能スマートフォンの保有率の増加、助成金・補助金の拡充などをイメージするとよい。

分析事項4.脅威(Threat)

外部環境のマイナス面を分析する。目標の達成を阻害する企業外部の性質が対象だ。たとえば、労働人口の不足、消費税増税、円安、大手企業による新規参入などをイメージするとよい。

SWOT分析の目的

SWOT分析はでは、競争戦略の立案や販促活動をおこなうために、自社の内部および外部の環境を把握し、自社が注力すべき点や課題を抽出することを目的としている。ただし、競合他社を理解するためや、他社をベンチマークするためにも用いることができる。

SWOT分析のやり方

機会と脅威を分析してから強みと弱みを分析する。というのも、強みや弱みは相対的な関係であり、環境によって異なるからだ。

たとえば、労働集約的な業種で事業機会が多い外部環境では社員が多いほど強みとなるが、資本集約的な斜陽産業では人件費が高く弱みとなることがある。

SWOTでは、いずれの分析でも事実を集めることから始める。事実を自社の環境と照らし合わせて解釈する流れだ。その際は、意見の羅列になりがちだが、裏付けとなる情報を基準とすべきである。

ただし、自社の役に立たないデータまで集めるとコストがかかったり、分析に支障をきたしたりする可能性がある。たとえば、日本の東京近郊で事業をおこなう場合に、日本全国の人口動態を気にしてもあまり参考にならない。

また、機会における強み、機会における弱み、脅威における強み、脅威における弱みを考えることも有効である。

3C分析とSWOT分析の注意点

フレームワークを利用するのは、あくまで課題を解決するためである。既定の表を埋めて分析したつもりになったり、3C分析やSWOT分析が目的になったりすると課題の解決につながらない。

また、アイデアを発散させる企画の場合は、枠組みが思考を狭めてしまうこともある。フレームワークの必要性を事前に精査すべきである。

フレームワークを活用すれば効果的・効率的に戦略立案できる

戦略立案に役立つフレームワークとして3C分析とSWOT分析を紹介してきた。フレームワークを活用すれば、散発的に考えるよりも効果的・効率的に思考を深められる。

一方で、フレームワークが必要ない場合や、分析自体が目的となるケースもあり、使い方や注意点を正しく理解することが重要だ。3CとSWOT分析を有効な戦略立案に役立てたい。(提供:THE OWNER

文・新井良平(スタートアップ企業経理・内部監査責任者)