社会全体がモノからコトへの消費にシフトする中、苦戦を強いられているアパレル企業の動向はどうなっているだろうか。アパレル企業の売上高や時価総額、店舗数などのランキングから、業界の現状を確認しよう。

目次
1,「売上高」ランキングTOP10
2,「経常利益」ランキングTOP10
3,「時価総額」ランキングTOP10
4,「総資産」ランキングTOP10
5,「店舗数」ランキング」TOP10
6,「従業員数ランキング」TOP10
7,「年収」ランキングTOP10
8,アパレル企業の全体概要

1,「売上高ランキング」――アパレル業界のシェアがわかる

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(画像=Sorbis/Shutterstock.com)

まずは、アパレル企業の売上高ランキングと、市場シェアを見てみよう。なお、すべてのランキング表の数値は、各社の直近の有価証券報告書または決算短信を参照している。

売上高ランキング

順位 コード 会社名 売上高 市場シェア 決算期
1 9983 ファースト
リテイリング
(※売上収益)
2兆2,905億4,800万円 47.7% 2020年8月
2 8227 しまむら 5,459億9,600万円 11.4% 2020年2月20日
3 7453 良品計画
(※営業収益)
4,387億1,300万円 9.1% 2020年2月
4 8219 青山商事 2,503億円 5.2% 2019年3月
5 3612 ワールド
(※売上収益)
2,498億6,100万円 5.2% 2019年3月
6 8016 オンワード
ホールディングス
2,482億3,300万円 5.2% 2020年2月
7 2685 アダストリア 2,223億7,600万円 4.6% 2020年2月
8 3591 ワコール
ホールディングス
1,942億100万円 4.0% 2019年3月
9 8214 AOKI
ホールディングス
1,931億9,800万円 4.0% 2019年3月
10 3608 TSI
ホールディングス
1,700億6,800万円 3.5% 2020年2月
10社合計 4兆8,034億9,400万円 100.0%  
※ファーストリテイリングとワールドは「売上収益」の数値、良品計画については「営業収益」の数値を「売上高」と見なして、ランキング表を作成した

第1位、ファーストリテイリング――国内1位、世界でも2位の実力

売上高第1位は、2019年8月期に過去最高の業績を叩き出した「ファーストリテイリング」である。その売上高は、第2位「しまむら」の実に4倍以上だ。国内のアパレルメーカーの中では、独走状態と言っていいだろう。

2019年8月期の売上高ベースでは、「ファーストリテイリング」は世界のアパレル企業の中でも堂々の第2位。ファストファッションブランドのZARAを運営する「インディテックス」(2019年1月期)に次ぐ売上規模を誇る。第3位は、僅差で「H&M」(2018年11月期)となっている。

第2位、しまむら――リーズナブルな衣料品で健闘

売上高第2位は、郊外型店舗が中心の「しまむら」である。

金額は「ファーストリテイリング」に遠く及ばないが、国内ではプチプラ(価格が安い)衣料品ブランドとして認知度が高く、一定の支持を得ていることがわかる。

第3位、良品計画――シンプルなモノづくりで高評価

売上高ランキング第3位の「良品計画」のビジョンは、「「良品」には、あらかじめ用意された正解はない。しかし、自ら問いかければ、無限の可能性が見えてくる」だ。このような企業ビジョンは、アパレル業界ではユニークである。ランキングは、「無印良品」ブランドがコアなファンに支えられていることを表している。

2020年2月期は、国内の直営店とオンラインストアの両方で、衣料品や雑貨、食品など、年間通して全体的に売上が堅調だった。

2,「経常利益ランキング」――会社の純粋な儲けを示す指標でもファーストリテイリングが首位

売上高から売上原価や販売費及び一般管理費を除いた経常利益を見れば、効率的に利益を上げているかどうかがわかる。

アパレル企業の経常利益ランキングと、売上高ランキングに違いが見られるのかどうか、確かめてみよう。

経常利益ランキング

順位 コード 会社名 経常利益
1 9983 ファーストリテイリング
(※税引前当期純利益)
2,524億4,700万円
2 7453 良品計画 363億7,700万円
3 8227 しまむら 262億4,500万円
4 8219 青山商事 156億1,100万円
5 3612 ワールド
(※税引前当期純利益)
135億9,600万円
6 2685 アダストリア 128億4,300万円
7 8214 AOKIホールディングス 118億9,000万円
8 3591 ワコールホールディングス
(※税引前当期純利益)
22億300万円
9 3608 TSIホールディングス 18億5,100万円
10 8016 オンワードホールディングス △38億3,500万円

第1位、ファーストリテイリング――経常利益にも好業績が垣間見える

経常利益ランキング第1位は、「ファーストリテイリング」だった。このランキングでは、開示書類で確認できる税引前当期純利益を使用している。

「ファーストリテイリング」では、2019年8月期に円高による為替差損が131億円発生しており、この金額が金融損益として計上されている。この金融損益が差し引かれた税引前当期純利益でも、第2位とは大きな差がある。

第2位、良品計画――経常利益は前年比減だがランキングでは好調

売上高ランキングで第3位の「良品計画」は、経常利益ランキングでは第2位だった。

2020年2月期決算は売上好調によって17期連続増収となったが、2期連続で経常利益減となった。物流コストの上昇や店舗大型化のための改装費用、システム開発に関わる費用が増加したことなどが原因だ。

アパレル業界全体の業績悪化により、同業他社の多くは業績回復の見通しが立っていない。その中での経常利益ランキング第2位は、「良品計画」の好調な販売によるところが大きい。

第3位、しまむら――積極的な店舗改装やレイアウト変更などでアイテム数増加に対応

2020年2月20日期は、「規模の拡大と基盤の整備」をテーマに店舗改装を積極的に進めるなど、業績最大化に向けたさまざまな取り組みを行った。

「しまむら」が減収減益ながらも経常利益ランキングで第3位となっているのは、同業他社の業績回復が、同社と比較して進んでいないことを表している。

3,「時価総額ランキング」――株式市場での評価もファーストリテイリングが首位!

時価総額の大きさは、株式市場での評価や期待を反映している。

「ファーストリテイリング」は、時価総額ランキング上位に入る銘柄としても知られている。その他の企業はどうだろうか。

時価総額ランキング

順位 コード 会社名 2020年4月17日
終値基準 時価総額
2020年4月17日
終値 株価
1 9983 ファーストリテイリング 5兆3,970億2,800万円 5万880円
2 7453 良品計画 3,310億4,000万円 1,179円
3 8227 しまむら 2,462億1,200万円 6,670円
4 3591 ワコールホールディングス 1,514億4,500万円 2,208円
5 2685 アダストリア 662億2,200万円 1,357円
6 8214 AOKIホールディングス 608億2,600万円 671円
7 8016 オンワードホールディングス 593億7,900万円 376円
8 3612 ワールド 442億,6,100万円 1,287円
9 8219 青山商事 433億3,900万円 860円
10 3608 TSIホールディングス 398億8,000万円 377円

第1位、ファーストリテイリング――株式市場でも高い評価

「ファーストリテイリング」の時価総額(2020年4月17日終値基準)は5兆3,970億2,800万円であり、アパレル業界の中では桁外れに大きい。2020年3月31日現在3,712社ある東証上場会社のうち、時価総額が5兆円を超える企業は、「ファーストリテイリング」を含めて15社前後である。

アパレル業界はもちろんのこと、株式市場においても「ファーストリテイリング」に対する評価と期待が高いことが、時価総額に表れている。

第2位、良品計画――アパレル企業としての将来性を評価

時価総額は、会社の規模だけでなく株式市場における価値を示す指標でもある。

「良品計画」は、アパレル企業時価総額ランキング第2位だ。アパレル業界においては「ファーストリテイリング」に次いで価値のある企業、あるいは今後も成長が期待される企業であると評価されていることになる。

第3位、しまむら――株式市場もしまむらブランドの復活に期待

2020年2月20日期は業績が振るわなかった「しまむら」だが、アパレル業界の時価総額ランキングでは第3位だった。

「しまむら」の基本政策は、日常生活で使用する衣料品を提供すること。他のアパレルブランドにはない気楽さが、「しまむら」のウリだ。時価総額ランキング第3位という順位は、株式市場がしまむらブランド復活を期待していることを表している。

4,「総資産ランキング」――負債も含む会社のすべての資産で会社の規模を示す

資本と負債からなる総資産の大きさは、会社の規模を表す。総資産ランキングからアパレル企業各社の規模を確認しよう。

総資産ランキング

順位 コード 会社名 総資産額
1 9983 ファーストリテイリング 2兆105億5,800万円
2 8227 しまむら 3,974億2,500万円
3 8219 青山商事 3,903億4,000万円
4 7453 良品計画 3,065億1,300万円
5 3591 ワコールホールディングス 2,817億6,700万円
6 8016 オンワードホールディングス 2,343億1,600万円
7 8214 AOKIホールディングス 2,320億5,600万円
8 3612 ワールド 2,135億4,600万円
9 3608 TSIホールディングス 1603億2,800万円
10 2685 アダストリア 979億2,400万円

第1位、ファーストリテイリング――売上規模も資産規模もアパレル業界圧巻のNo.1

アパレル企業の総資産ランキングでも、ファーストリテイリングの圧倒的第1位の座は揺るがない。

企業規模からいっても、アパレル企業における「ファーストリテイリング」の総資産ランキング第1位は必然だろう。2019年8月期のROA(総資産利益率)は8.1%であり、資産を効率的に使って利益を出している優良企業であることがわかる。

第2位、しまむら――アパレル業界では総資産でも安定の第2位

売上高ランキング第2位の「しまむら」が、総資産ランキングでも第2位にランクインしている。総資産ランキング第1位の「ファーストリテイリング」との差は大きいが、アパレル業界においては、資産規模においても「しまむら」の優位性が認められる。

第3位、青山商事――資産規模で第2位を追随

紳士服販売最大手「青山商事」が、総資産ランキングの第3位だ。

第2位の「しまむら」と同じく、郊外型大型店舗が主体だ。2社の総資産額の差は、直近決算では70億円程度。客層こそ異なるが、資産規模から見ると「青山商事」は「しまむら」に最も近いアパレル企業と言えるだろう。

5,「店舗数ランキング」――消費者にリーチする販売拠点を多く持っているのは?

実店舗から得られる売上高が減少傾向にあるとはいえ、消費者が商品に直接触れて確認できる実店舗の数は、その役割と重要性を考えるとチェックしておきたい。

店舗数ランキング

順位 コード 会社名 店舗数(店) 基準日
1 9983 ファーストリテイリング 3,589 2019年8月31日
2 8227 しまむら 2,214 2020年2月20日
3 3612 ワールド 2,162 2019年3月31日
4 2685 アダストリア 1,392 2020年2月29日
5 8219 青山商事 892 2020年3月16日
6 8214 AOKIホールディングス
(※ファッション事業のみ)
697 2019年3月31日
7 7453 良品計画 362 2020年3月16日
8016 オンワードホールディングス 不明  
3591 ワコールホールディングス 不明  
3608 TSIホールディングス 不明  
※「オンワードホールディングス」、「ワコールホールディングス」、「TSIホールディングス」の3社は、直近の有価証券報告書や決算短信、四季報、ホームページで正確な店舗数を確認できなかったため、ランキングから除外した

第1位、ファーストリテイリング――店舗数でも第1位、1店舗あたりの売上にも注目

店舗数ランキングでも「ファーストリテイリング」が第1位だ。第2位の「しまむら」との差は、売上高や総資産額ほど、大きく開いていない。

これは第2位の「しまむら」に比べて、「ファーストリテイリング」の売上効率がはるかに高いことを表している。

1平方メートルあたりの期間売上高を見てみよう。第1位の「ファーストリテイリング」の1平方メートルあたりの期間売上収益は78万4,000円、第2位の「しまむら」は26万6,000円だ。つまり、「ファーストリテイリング」の売上効率は「しまむら」の約3倍ということになる。

第2位、しまむら――既存店の底上げで客数アップを狙う

店舗数ランキング第2位は、既存店をテコ入れすることで客数改善や業績回復に取り組んでいる「しまむら」だ。

直近決算期末の店舗数を見ると、第2位の「しまむら」と第3位の「ワールド」の差は52店しかなく、2社は拮抗している。しかし利益率まで掘り下げると、スケールメリットを活かした大量発注が特徴の「しまむら」のほうが、コストを抑えられるので有利だ。

第3位、ワールド――ファーストリテイリングやしまむらとは異なる戦略

ワールドの戦略は「多業態・多ブランド」であり、「1ブランド1ショップ」で店舗展開しているため、必然的に店舗数が多くなっていると考えられる。

6,「従業員数ランキング」――企業を支える人的資源の多さ

商品の企画から販売までを一貫して行う企業にとって、従業員は事業を支える生命線と言える。アパレル企業で、より多くの従業員が事業に関わっているのはどの企業だろうか。

従業員数ランキング

順位 コード 会社名 連結従業員
(名)
臨時従業員
(名)
基準日
1 9983 ファーストリテイリング 5万6,523 8万758 2019/8/31
2 3591 ワコールホールディングス 2万662 739 2019/3/31
3 3612 ワールド 1万88 2,924 2019/3/31
4 7453 良品計画 9,137 1万233 2019/2/28
5 8219 青山商事 8,101 4,539 2019/3/31
6 3608 TSIホールディングス 5,884 1,480 2019/2/28
7 2685 アダストリア 5,665 6,363 2019/2/28
8 8016 オンワードホールディングス 4,643 8,846 2019/2/28
9 8214 AOKIホールディングス 4,175 5,794 2019/3/31
10 8227 しまむら 3,174 12,803 2020/2/20
※従業員ランキングの対象は、連結対象の会社すべてと各セグメントに属する全従業員
※臨時従業員の数は、基準日を最終日とする事業年度中の平均値

第1位、ファーストリテイリング――ここでも首位を獲得

「ファーストリテイリング」の業界一の売上を支えているのは、やはり業界一多い従業員であることがわかる。正規雇用従業員数もさることながら、臨時従業員数も群を抜いている。

第2位、ワコールホールディングス――商品企画から製造まで自社で

従業員ランキングの第2位は、ランキング上位に初登場の「ワコールホールディングス」である。「ワコールホールディングス」では、すべての工程を自社で行っているため、人材を重要な経営資源と考えている。正規雇用従業員の多さは、それを表している。

時価総額ランキングや総資産額ランキングではアパレル業界の準大手に位置しており、従業員の多さも相まって安定感のある会社という印象を受ける。

第3位、ワールド――さまざまなブランド展開により従業員数も多い

従業員ランキング第3位の「ワールド」では、“多業態・多ブランド”と“1ブランド1ショップ”の2つの戦略を推進するために、多くの正規雇用従業員を必要とすると考えられる。

7,「年収ランキング」――転職を考える際は参考にしたい指標

従業員の給与は、会社の利益から拠出される。多くの利益を出している会社であれば、従業員の年間平均給与も高くなりやすいはずだ。転職や就職の際に確認しておきたい年収ランキングを確認してみよう。

年収ランキング

順位 コード 会社名 平均年間給与 基準日
1 8016 オンワードホールディングス 982万6,000円 2019/2/28
2 9983 ファーストリテイリング 900万4,000円 2019/8/31
3 8214 AOKIホールディングス 749万9,000円 2019/3/31
4 3612 ワールド 634万1,453円 2019/3/31
5 8227 しまむら 596万3,000円 2020/2/20
6 3591 ワコールホールディングス 591万9,069円 2019/3/31
7 7453 良品計画 557万1,139円 2019/2/28
8 3608 TSIホールディングス 546万8000円 2019/2/28
9 8219 青山商事 490万1,000円 2019/3/31
10 2685 アダストリア 413万8,568円 2019/2/28
※年収ランキングで使われている数値は、各社の有価証券報告書で確認できる、単体の正規雇用従業員の平均年間給与である
※年収の対象期間は、基準日を最終日とする事業年度の1年間

第1位、オンワードホールディングス――ファーストリテイリングを押さえトップに

経常利益ランキングと時価総額ランキングで第10位の「オンワードホールディングス」が、年収ランキングの第1位となった。

年収算定対象のグループ持株会社従業員51人は、アパレル関連事業とライフスタイル関連事業に属さない管理部門の従業員であり、現場の従業員の年収とは若干の乖離があると考えられる。

第2位、ファーストリテイリング――好調な業績を受け年収も2位に

年収ランキング第2位の「ファーストリテイリング」も、グループの持株会社に属する従業員(執行役員やアルバイトなどを除く)1,389人が対象となっている。

持株会社である「ファーストリテイリングの従業員は好業績にふさわしい、高い年収を得ていることがわかる。

第3位、AOKIホールディングス――アパレルのみならずカラオケやカフェ事業も対象

年収ランキングの第3位は、「AOKIホールディングス」だ。対象はファッション事業、ブライダル事業、カラオケルーム運営事業、複合カフェ運営事業の主要4事業に携わっていない持株会社の従業員102人。

売上高、経常利益などのランキング上位には「AOKIホールディングス」が入っていなかったため、持株会社の従業員の年収が高い可能性があることに留意したい。

8,アパレルメーカー各社の特徴、それぞれの強みと今後の戦略は?

ランキングを見ると、アパレル業界ではファーストリテイリングが首位を独走していることがわかる。それ以外の会社は、それぞれの強みや独自性を全面的に打ち出して、他社との差別化を図っている。

ここからは、ランキングに登場したアパレル企業10社の特徴や強みを見てみよう。

ファーストリテイリング<9983>――独自路線でアパレル市場を完全制覇

1949年に前身であるメンズショップ「小郡商事」が創業し、1984年に「ユニクロ」1号店が広島市でオープンした。その後はロードサイト店を中心に店舗網を拡大し、現在はユニクロ、ジーユー、セオリーなど複数のブランドを世界中で展開している。

1998年に首都圏初の都心型店舗を出店、2000年にはインターネット通信販売を開始、2001年以降は世界各国へのグローバル旗艦店出店強化など、スピード感のある事業展開を特徴としている。

2007年に発売した「ヒートテック」のヒット以降は、高機能性インナー商品の開発に力を入れている。リーズナブルで高品質な商品を提供するファーストリテイリングの売上規模は、世界のアパレル製造小売業でも第2位となっている。

しまむら<8227>――郊外型プチプラ衣料品店チェーンの元祖

呉服販売の個人商店だった「島村呉服店」は、1953年に取扱品目に既製服と生地、仕立てを加えて事業を拡大した。その後総合衣料の量販店に業態転換し、現在は商品の企画と販売を主たる事業としている。店舗は日本全国と台湾、中国にある。

しまむらの中核事業は、「ファッションセンターしまむら」の運営だ。20代から50代の主婦とその家族を対象としており、日常的に使用できる衣料品を提供することを基本戦略としている。

高品質、高機能、低価格を謳ったPB商品の生産は外部委託だが、公的検査機関による品質管理に加えて、自社で現場確認と改善指導を行っている。ローコストオペレーションにも積極的に取り組んでおり、この仕組みを全工程に取り入れることで、安心価格を実現している。

良品計画<7453>――実質本位の商品づくりで、世界に広がる無印良品ブランド

無印良品は1980年に西友のプライベートブランドとして誕生し、1990年に「良品計画」がその営業権を譲り受けた。現在は衣料品、家庭用品、食品など、7,000品目もの商品群を取り扱う世界的なブランドへと成長。「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」を商品開発の基本として、実質本位の商品づくりに徹している。

グローバル企業として、日本を含む29の国と地域で975店舗(2019年2月末現在)を展開。「感じ良いくらし」を提案しながら、地域コミュニティーとの共生や、社会貢献を実践している。

青山商事<8219>――働く人を応援し、働く人に愛される商品とサービスを提供する

青山商事は、ビジネススーツ市場の最大手。1974年に業界で初めて郊外立地の紳士服専門店を出店し、それ以降郊外型店舗を中心に店舗を拡大してきた。近年は、生産年齢人口の減少やオフィスウェアのカジュアル化などによってスーツ市場が縮小し、コア事業であるビジネスウェア事業に大きな影響を及ぼしている。

中期経営計画のもと、ビジネスウェア事業の大幅な改革を進めているが、他業種からビジネスウェア市場への参入が相次ぎ、状況は厳しい。このような環境変化に対応するために、抜本的改革とビジネスモデルの再構築に取り組んでいる。「働く人のために働こう」を行動原則として、ビジネスパーソン支持率No.1を目指す。

ワールド<3612>――「イッツデモ」など時代に合わせた新業態事業の拡大に積極的

「ワールド」は、1959年に婦人セーターの卸売業として創業した。1993年からは、SPA業態(アパレルメーカーが自社開発から販売までを一貫して手掛ける業態)に進出。多業種・多ブランドを基本戦略としている。

2018年には、ファッションレンタルサービスを提供する「オムニス」と資本業務提携を締結した。2019年には高級バッグのシェアリングサービスを行う「ラクサス・テクノロジーズ」を傘下に収めるなど、シェアード・リユース事業の強化を進めている。

2019年3月期は、変革期と位置づけられている。今後は非アパレル分野への事業領域の拡大によって、総合アパレル企業グループから総合サービス企業グループへの進化を図る。

オンワードホールディングス<8016>――人気ブランド「J.PRESS」などのECが伸長

「J.PRESS」や「ジルサンダー」、「ポールスミス」、「カルバンクライン」などの海外有名ブランドを多数運営している。国内でも「組曲」や「五大陸」、「23区」といったオリジナルブランドを提供しているが、実店舗での販売は苦戦している。

一方で法人向けユニフォーム販売や、人気ブランドのEコマース販売は堅調に推移。バレエ、ダンス、フィットネスの用品販売や、スタジオ運営を行っているライフスタイル関連事業も増収増益。デジタル、カスタマイズ、ライフスタイルは、成長戦略3本柱に位置付けられている。

2020年2月期は、グローバル事業改革の一環として国内外の不採算店舗の大量閉鎖や、2期連続での希望退職者募集などを実施した結果、赤字決算となった。

アダストリア<2685>――「ローリーズファーム」「ハレ」「グローバルワーク」などを展開

紳士服小売店として創業以来60年以上、市場ニーズの変化に合わせてビジネスモデルの変革を実行してきた。2010年には、それまでのOEM/ODM(自社企画による委託生産商品を販売する)からSPAへの業態変革を宣言し、2015年秋にSPA業態の本格稼働を実現した。

現在は、ファミリー層を対象とした「グローバルワーク」から生活雑貨とアパレルを融合した提案型ブランド「スタディオクリップ」まで、さまざまなコンセプトのファッションカジュアル専門店を展開している。

2020年2月期は、グローバルワーク、ローリーズファームなどの基幹ブランドの売上が回復。自社ECサイト会員数増加や販管費の圧縮によって、当期純利益が大幅に改善した。

ワコールホールディングス<3591>――「人」を重視し、健康経営銘柄にも選定

1949年の創立から70年以上にわたって、「世界のワコール」を経営目標に掲げている。現在では、国内市場はもちろんのこと、アジア圏やアメリカなどで、現地に根差した独自の海外事業を展開。

商品の企画から販売までを自社で行うため、最大の経営資源は「人」。働く人の働きがいや働きやすさを実現する環境整備や、仕入先・取引先との緊密な連携関係の構築に積極的に取り組んでいる。

ワコールホールディングスは、経済産業省と東京証券取引所で取り組む「健康経営銘柄」に、2020年まで5年連続で選ばれている。また、経済産業省と日本健康会議が実施する「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも4年連続で選ばれている。

消費者の節約志向は強く、インナーウェアの消費回復は見られず、2019年3月期の業績は大幅な減収減益となった。2019年10月の消費税増税や、2020年初春以降の新型コロナウイルス感染拡大による営業自粛などの影響は甚大だ。

AOKIホールディングス<8214>――ブライダル事業も手掛けるアパレルメーカー

企画から販売までを一貫して行うVMD(バーティカル・マーチャンダイジング)システムを活かした、さまざまな用途に合わせた新商品の開発が強み。洗濯機で丸洗いできてシワにならない機能性ビジネススーツや、厳選素材で国内最高峰の技術で作り上げる最上級ブランドスーツ「アニヴェルセル」、ビジカジスタイルで幅広く着回せる「CAFÉ SOFO」など、AOKIオリジナルのブランド展開が特徴。

ブライダル事業にも力を入れており、ゲストハウススタイルの結婚式や披露宴を提供するウェディング施設「アニヴェルセル」は、全国に13施設を展開している。

TSIホールディングス<3608>――店舗と自社ECのオムニチャネル会員が拡大

「TSIホールディングス」は、婦人既製服製造卸売業の東京スタイルと衣料品商社の「サンエーインターナショナル」の共同持株会社である。セレクトショップ「ナノ・ユニバース」は有名だ。寝具の西川とのコラボ商品「西川ダウン」や「毛玉レスニット」なども取り揃え、「パーリーゲイツ」や「ニューバランスゴルフ」、「PINGアパレル」などのゴルフウェアブランドも人気だ。

2020年2月期は既存事業が利益を大きく落としていたところに、新型コロナウイルス感染拡大による店舗休業の影響が加わって、売上が大幅に落ち込んだ。しか、自社ECサイトやサードパーティーの通販サイトの売上は堅調。今後は将来性のあるECサイト販売にさらに注力し、事業構造の抜本的改革を目指す。

9,アパレル業界全体が消費の落ち込みに悩む中、ユニクロが圧倒的な強さを見せる

長引くデフレ、消費者のファッションへの興味減退、2019年10月の消費税増税など、さまざまな要因によってアパレル業界は実店舗の売上減少に歯止めがかからず、苦戦を強いられている。

中でも販売チャネルの多様化や、新業態の参入インパクトは大きい。インターネット取引やスマートフォンの普及、ZOZOやAmazonといった通販サイト、メルカリなどのフリマアプリ、さらには中古衣料品販売、シェア型またはサブスクリプション型衣料品レンタルなど、さまざまな新業態の参入が続く。

このような環境変化に対してアパレル企業は、成長性のある事業への集中投資や抜本的な事業改革が早急に求められている。現在各社は、自社ECサイトでの販売強化や通販サイトへの出店、海外市場の拡大などを試行錯誤している。

そんなアパレル業界の中で圧倒的な存在感を放っているのが、「ファーストリテイリング」だ。世界のアパレル企業の中でも、トップクラスの強さを誇っている。購買意欲の弱い消費者を惹きつけるブランドを引っ提げて、ファーストリテイリングを脅かすアパレル企業が登場することに期待したい。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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