アパレル大手のオンワードが黒字経営から一転、2020年2月期は521億円の最終赤字となった。原因は消費増税や豪雨、台風、暖冬、新型コロナウイルス、そしてこれらの影響による多額の減損損失の計上だ。昨年からの連続的なネガティブ要因は、アパレル屈指の優良企業さえも苦境に追い込んでいる。

最終損益は521億越えの赤字に転落

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(画像=Qian Lin/Shutterstock.com)

オンワードホールディングスの2020年2月期(2019年3月1日~2020年2月29日)の連結業績が発表された。売上高は前期比3.2%増の2,482億3,300万円と伸びたが、営業利益と経常利益、最終損益はそれぞれ黒字から赤字に転落した。

・営業利益:30億6,100万円のマイナス(前期:44億6,100万円のプラス)
・経常利益:38億3,500万円のマイナス(前期:51億6,100万円のプラス)
・最終損益:521億3,500万円のマイナス(前期:49億4,800万円のプラス)

すでにスタートしている2021年2月期(2020年3月1日~2021年2月28日)については、新型コロナウイルスの感染拡大による影響によって算出しにくいことから「未定」としている。

特別退職金や減損損失計上が大きなインパクト

今回の多額の赤字計上は、売上高の変動が直接的な原因ではない。早期退職者に対する特別退職金や、不採算店舗の閉店などに伴う減損損失などが、業績に大きなインパクトを与えた形だ。2020年2月期の減損損失額は、計277億5,600万円に上る。

一方で売上高は結果的には伸びており、前期比3.2%増。オンワードホールディングスの中核事業会社に位置付けられる「オンワード樫山」などでのEC(電子商取引)事業が好調なのが主な要因だ。オンワードホールディングス全体でのECの売上高は、前期比30.6%増となった。

ただしECの売上高は、オンワードホールディングス全体からすれば、まだまだ割合が小さい。同社では、実店舗での売上の増減が依然として重視されているはずだ。

実店舗での売上は、消費増税や自然災害、暖冬によって当初の予定通りにいかず、国内事業全体ではアパレル関連事業は減収減益となった。

新型コロナの影響は甚大、700店舗閉鎖とEC部門強化で対応

オンワードホールディングスの2020年2月期決算は、2020年2月29日までのものだ。すでに新型コロナウイルスによる影響も出ているが、3月以降は日本を含む世界各国で渡航制限や外出自粛がさらに進んでいる。このような状況を踏まえると、現在の同社の業績はさらに苦しい状況になっていると考えられる。

新型コロナウイルスの終息が長引く可能性を考慮し、オンワードホールディングスは今年度に不採算店舗をさらに700店舗閉鎖する計画を明らかにしている。閉鎖店舗のスタッフはネット販売部門などに異動し、EC部門を強化することで収益構造の転換を図る考えのようだ。

アパレル業界はピンチをチャンスに変えることができるか

アパレル大手で苦しんでいる企業は、オンワードホールディングスだけではない。

2020年2月期決算のアパレル大手7社のうち、5社が減益もしくは赤字に転落している。新型コロナウイルスの感染拡大によって、次回発表される2021年2月期の第1四半期(2020年3~5月)決算は、さらに厳しいものになるだろう。どのアパレル企業にとっても、厳しい局面が続く。

ただし今回の新型コロナウイルスによる危機を契機にECへの転換を果たせば、今後の業績を安定化、もしくは向上させるチャンスになる。アパレル企業は今、ピンチをチャンスに変えるためのスピーディな対応が求められている。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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