アフターコロナの予測は役に立たない
コロナ・ショック後の時代を予測する声が喧しいです。「世界大恐慌に陥る」「人と接触できない社会になる」「リモートワークが常態化する」など・・・。しかし本当のところどうなるかなんて誰も分かりません。先を読み心の準備をしておくことは大事ですが、あやふやな未来予測に賭けるよりは「どんな時代になっても生き抜く強さ、しなやかさを身につける」ほうが現実的な戦略です。
考えてみれば、コロナ級の社会変化はまれではないですよね。IT革命・インターネットがそうでしたし、AI・5G・シンギュラリティも控えています。宇宙にも気軽に行ける時代になるかも知れません。大変化が訪れるペースは上がっているようです。そのたびに「今回は大丈夫か」「今度こそ淘汰されるのではないか」などと怯えて暮らしていては楽しくない。
「雨を予測するな。方舟をつくれ」
世界最高の投資家と言われるウォーレン・バフェットも「雨を予測することは重要じゃない。方舟を作ることが重要だ」と言っています。未来予測はPVを稼ぎたいブロガーさんにでも任せておいて、私たちは「方舟」をせっせと作っておきましょう。
では、どんな方舟を作ればいいのか?誰もが同じ方舟を作ることが正解なのでしょうか。つまり、誰もが同じスキル獲得を目指したり、同じ業界への転職や起業を目指すことが正しいのでしょうか。そうは思えません。私に合った方舟があなたにも合うわけではありません。アフターコロナの海を渡る方舟のデザインはひとりひとり違っていて当然なのです。
荒波をくぐり抜ける「ヘッジホッグ・コンセプト」とは?
では、あなたは一体どのような方舟をデザインすべきなのでしょうか?指針になるのが「ヘッジホッグ・コンセプト」です。
私たちが推進するEOS®(起業家のための経営システム)もヘッジホッグ・コンセプトを鍵になる概念としています。『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』を引用し、古代ギリシャの「ハリネズミとキツネ」の寓話「キツネはたくさんのことを知っているが、ハリネズミはたったひとつ、肝心要の点を知っている」というエピソードを紹介しています。
「冴えない」ハリネズミがいつも勝つ理由
キツネは「動作が俊敏で、毛並みが美しく、足が速く、頭が良」い。対してハリネズミは「何とも冴えない動物で(中略)短い足でちょこちょこ歩き、餌を探し、巣を守るだけの単純な生活をおくっている」と散々な言われようです。
さてあなたはキツネとハリネズミ、どちらが優れていると思いますか?当然キツネのほうでしょう。しかし「狐の方がはるかに知恵があるのに、勝つのはいつも針鼠」なのです。なぜか?「キツネは力を分散させ」てしまい、ハリネズミは「複雑な世界をひとつの系統だった考え(中略)によって単純化し、これですべてをまとめ、すべての行動を決定している」からです。集中の力です。
「コロナに対応」しようとするとキツネ型に陥る
コロナ・ショックのような大変化に直面すると、私たちは「今後はどのような能力を身につければいいか」「次の時代にマッチするスキルは何か」というように考えてしまいます。「自分という商品」にどんな新機能をプラスすればいいか?という思考法です。
しかしヘッジホッグ・コンセプトによるならば、このようなプラスオン思考は危険です。安易に「一見良さそう」な機能を追加していくと、使わない機能満載の日本家電のようになってしまいます。まさにキツネのように。では、どのようなアプローチを取ればハリネズミのようにシンプルな戦略を見つけられるのでしょうか。
3つの円
「世界最高の経営思想家」とも言われるジム・コリンズは『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』で「以下の3つの基準に合う仕事」を考えてみるといいと述べています。
1.情熱を持って取り組める(好き)
2.経済的原動力になる(儲かる)
3.世界一になれる(得意)
図のように得意・儲かる・好きの3つの円が重なる仕事ということです。「あなたにとって」これをすべて満たす仕事が見つかったならそれがあなたのヘッジホッグです。あとはそれをブレずに続けていくだけでコロナ・ショックや、それに続く世界的大変化にすら負けない人材になることができ、そんなビジネスすら生み出すことができるでしょう。
自負心・虚栄心・見栄は目を曇らせる
このとき、注意しなければならないのは「自負心」です。「虚栄心」「見栄」と言い換えてもいいかも知れません。「国際的」「デジタル」「5G」「AI」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」などのバズワードに引っ張られないようにすべきです。最先端を気取るのは心地いいですが、それがあなた自身のヘッジホッグ探しと関連しているかは分かりません。惑わされずにあなた自身の「得意」「好き」と向き合ってください。
アメリカのウェルズ・ファーゴという銀行は「世界的な銀行」という点ではシティコープに勝てないと悟り、アメリカ西部に事業地域を絞り込み大成功しました。時価総額でもシティグループを上回っています。自社にとってのヘッジホッグを見つければローカルビジネスでも世界的企業に勝てるという好例です。あなたにも参考になるではないでしょうか。(提供:THE OWNER)
文・久能克也(Opty.G.K.代表)