「老後」が、いよいよ現実のものとして捉えられるようになる40代・50代。そろそろ本格的に、自分の老後について考える時期なのではないでしょうか。とはいえ、日々の支払いに追われて老後の準備どころではないという人もいるでしょう。そこで本記事では、40代・50代から始める老後資金の上手な貯め方をご紹介します。

老後資金、考え始めていますか?40代・50代のそれぞれ

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(画像=PIXTA)

40代の現状 老後を考え始める時期

40代は社会的責任が重くなる年代であるとともに、住宅ローンの返済や家賃の支払い、子どものいる世帯では教育資金や習い事などの支出が増える時期でもあります。

さらに両親の介護などが加わり、「自分たちの老後なんて考える余裕がない」という人が多いのも40代の特徴です。しかし、50代になると早期退職や役職定年による収入減少が考えられるため、40代は老後資金の準備を考え始める時期と言えます。

40代は老後生活まで約20年あるので、老後資金の準備が十分できます。忙しい日々の中でも、自身の老後について少し立ち止まって考えてみましょう。

2019年6月に発表された金融審議会 市場ワーキング・グループの「高齢社会における資産形成・管理」によると、主な収入が年金の夫65歳、妻60歳以上の夫婦では、85歳まで生きた場合は約1,300万円、95歳まで生きた場合は約2,000万円、月額にすると毎月約5万円の貯蓄の取崩しが必要になるそうです。

また、令和元年の「家計の金融行動による世論調査(二人以上世帯調査)」によると、40代の金融資産保有額の平均は694万円、実数に近いと言われている中央値は365万円でした。95歳まで生きるとして逆算すると、あと1,306万~1,635万円が必要になる計算です。老後までの20年でできることは、たくさんあります。じっくり計画を練って、行動に移しましょう。

50代の現状 貯金が苦しくなる人も

50代になると、老後がさらに身近になってきます。身体の衰えを感じつつ、老後について現実的に考えるようになるのが50代でしょう。子どもの教育資金や住宅ローンの出口が見えてくるなど、ゆとりを感じる人がいる一方で、早期退職や役職定年によって収入が減り始める人がいるなど、厳しい年代でもあります。

「家計の金融行動による世論調査(二人以上世帯調査)」によると、50代の貯蓄額の平均は1,194万円、中央値は600万円です。ご自身の貯蓄額と比べてみて、いかがでしょうか。ここから逆算すると、95歳まで生きるとすれば、あと806万~1,400万円の貯蓄が必要です。ラストスパートの10年で、必要と言われている2,000万円に到達できるでしょうか。

現在教育費を支払っている世帯では、子どもが社会人になればその負担はなくなりますし、夫婦2人暮らしになれば生活費も減るでしょう。生命保険を見直したり、車を安いものに買い換えたりすることも、生活費を減らすことにつながります。ぜひ、目標を持って貯蓄額アップを目指しましょう。

まずは老後の生活をイメージしよう

老後資金の準備で大切なのは、老後生活をイメージして目標額を決めることです。「いくらあれば足りるのか」「どれだけ節約すればいいのか」がわからない状態で老後資金を準備しても、不安は解消されません。どの年代であっても、「老後資金がいくら不足するのか」をきちんと把握することが最も大切です。

年金の支給見込額・退職金を把握する

老後資金の不足額を知るためには、まずは「ねんきん定期便」で自分が受け取れる年金額と支給開始年齢を確認します。

50歳以上の人の「ねんきん定期便」には年金開始年齢と見込年金額が記載されていますが、50歳未満の人は加入実績に応じた年金見込み額しか記載されていません。

そのため、50歳未満の人は「ねんきんネット」に登録することをおすすめします。ねんきんネットでは支給見込額が試算できるので、それを活用しましょう。退職金がある人は、勤務先で金額を確認しておきましょう。

前述の「高齢社会における資産形成・管理」のデータを元に、年金を含めた夫婦2人の平均実収入が毎月21万円、定年後の余命年数20年とすると、収入は5,040万円です。夫婦2人の老後の生活費は約26万円なので、必要な生活費は6,240万円。差し引き1,200万円が不足します。現在の預貯金と退職金を差し引いても赤字になるようなら、貯蓄の計画を立てて、老後生活を見直す必要があります。

老後の生活費を試算する

老後の生活費の不足額を把握したら、次に「年間の生活費×年数」を試算します。子どものいる世帯なら、子どもが独立した後の夫婦2人の生活を具体的にイメージします。

まずは、固定費の削減を図りましょう。たとえば、生命保険は現役の頃より必要保障額が減っているはずです。スマホをキャリア系から格安スマホに切り替えたり、自由化によって競争が生まれている電力会社を切り替えたりするなど、固定費の削減を検討します。

自動車やジムの会費など、必要だと思い込んでいるものを改めて見直してみると、なくても生活に困らないことが多いです。

このように試算していくと、老後生活に不要なものが明らかになり、毎月の預貯金を増やせる可能性が出てきます。この機会に、老後の生活費を見直してみましょう。

また、老後に楽しみたいと思っている趣味にかかる費用や医療費、家のリフォーム代など、想定される支出も併せて確認しておきましょう。

年代別:老後資金の貯め方

試算の結果老後資金が不足するなら、現役の間にコツコツ貯めていくしかありません。40代は老後まであと20年、50代はあと10年です。それぞれどのような方法があるのかを見ていきましょう。

40代 働き盛りの今からコツコツと

40代は老後生活まで20年あるので、コツコツ積み立てていくことでまとまった金額を準備できる最後のチャンスと言えます。

・コツコツ貯金
定年時点の目標貯蓄額を決めて、毎月コツコツ積み立てていきましょう。生活費の余りで貯蓄をしようと思っても、なかなか思うようには貯まりません。勤務先の財形貯蓄を利用するか、銀行の自動積立定期預金で、「先取り貯蓄」を実行しましょう。

・iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは毎月掛け金を積み立てて、自分で選んだ金融商品で運用し、60歳以降に掛金と運用益を受け取るものです。掛金は全額所得控除の対象になり、運用益や分配金も非課税、受取時の年金や一時金も一定額まで非課税です。60歳までは原則引き出しができないので、老後資金の準備には最も適していると言えます。

・NISA(少額投資非課税制度)
NISAは投資信託など、リスクの低い金融商品を毎年一定額購入して運用していく制度です。本来は運用益や分配金にかかる20%の税金が非課税になるというメリットがあります。特につみたてNISAは、毎月コツコツと最長20年間積み立てていくことができます。(ただし現在のところ、つみたてNISAが利用できるのは2037年までとなっています)

50代 老後に向けてラストスパート!

50代は、老後生活まで約10年。老後資金の準備のラストスパートと言えるでしょう。

・引き続き貯金
50代であっても、コツコツ積み立てていくことが大切であることは変わりありません。老後資金を準備するには、「コツコツ」が最も有効です。引き続き、財形貯蓄や自動積立定期預金で準備をしていきましょう。現在まったく預貯金がない50代は、iDeCoやNISAよりもまずは現金を貯めていくことを心がけてください。

・iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoで運用した年金資金を60歳で受け取るには、iDeCoの加入期間が10年以上である必要があります。加入期間が10年に満たない場合は、受給開始年齢が繰り下げられます。たとえば、加入期間が1ヵ月以上2年未満の場合、受給開始は65歳です。50代からiDeCoで積み立てる場合は、受給開始年齢を確認しておきましょう。

・NISA(少額投資非課税制度)
定期預金で現金を積み立てていく一方で、つみたてNISAなどを利用して長期運用し、老後の資産を作っていくことも必要でしょう。年率数%程度の運用でも、老後資金を増やしたり、長持ちさせたりする効果が期待できます。

・迫る老後に向けて節約モードに
老後資金準備のための計画を実行しながら、定期的に計画通りに進んでいるかチェックしましょう。計画通りに貯蓄額が増えていない場合は、その原因を明らかにする必要があります。

生命保険など見直せる固定費はないか、外食ばかりしていないかなど、生活を見直してみましょう。また、イメージした老後生活の水準を見直す必要があるかもしれません。

・老後も働くという選択
受給開始年齢になっても目標とする金額が貯まっていなければ、老後も働くことを検討する必要があります。

働いて収入を得ている間に年金受給開始年齢を繰り下げると、月0.7%ずつ年金額が増えていきます。たとえば、65歳で受給開始の人が70歳までの5年間繰り下げると、年金が42%も増えることになり、それが一生続きます。

目標としていた金額に到達しなければ、定年後もできるだけ長く働いて生活費を稼ぐという考え方が必要になります。65歳までの雇用が確保されている会社員は、2021年4月から70歳就業法が施行される予定です。人手不足の折、高齢者を積極的に雇用する企業も増えるでしょう。

一方で自営業やフリーランスには定年はありませんが、年金額は満額で年間約78万円、月々6万5,000円です。よって、できるだけ長く働いて収入を得ておく必要があります。

自分の力で老後資金の不安を解消しよう

40代・50代から老後資金を準備するには、ねんきんネットを利用したり、老後生活のシミュレーションをしたりして、どれだけ不足するのか把握し、目標に向かってコツコツ積み立てるしかありません。老後も働くことを視野に入れながら、年金受給開始年齢を繰り下げるなど、利用できるものはすべて利用して、老後資金の不安を解消していきましょう。

文・ことりえ( ファイナンシャルプランナー)/fuelle

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