住宅ローンの仮審査では希望物件を買うときに住宅ローンが組めるかどうかがチェックされる。仮審査に通過すると本審査に進むが、住宅ローンの仮審査と本審査では確認するポイントが異なる。それぞれの違いや、仮審査に落ちてしまったときにすべきことも確認しよう。

目次
1.住宅ローンの仮審査とは
2.仮審査と本審査の違い
3.仮審査に落ちやすくなる3つの原因
4.仮審査に落ちたときにすべきこと

1.住宅ローンの仮審査(事前審査)とは

住宅ローン,仮審査
(画像=Brian A Jackson/Shutterstock.com)

住宅ローンを借りるためには、仮審査と本審査の2段階の審査がある。住宅ローンの仮審査は本審査を受けるための通過点のようなもので物件契約と同時並行で進めていく。住宅ローンの借り入れまでどのような流れになるのかを確認しておこう。

住宅ローンの仮審査(事前審査)から借り入れまでの流れ

住宅ローンの仮審査を申し込むにあたり、最低限の物件情報が必要になる。申し込んだ物件を必ず購入する必要はないが、住宅ローンの仮審査ではどの物件で審査するのかを決めておく必要がある。住宅ローンの仮審査を無事通過すれば、物件の売買契約や住宅ローンの本審査に申し込める。

住宅ローンの仮審査から借り入れまで 不動産販売会社との手続き
  購入物件の決定
住宅ローンの仮審査の申し込み  
  売買契約の手続き
住宅ローンの本審査の申し込み  
住宅ローンの借り入れ決定・契約手続き  
住宅ローンの借り入れ 物件の引き渡し
(※筆者作成)

住宅ローンの審査にかかる期間は銀行によって異なるが、一般的には仮審査が即日から1週間、本審査は1~2週間とされていることが多い。ただし書類に不備がなければ、本審査でも大半の銀行は3営業日以内に完了する(住宅金融支援機構『2019年度民間住宅ローンの貸出動向調査』より)。

住宅ローンの本審査を通過したら住宅ローンの契約を結び、物件の引き渡しと同時に借り入れする流れになる。

住宅ローンの仮審査(事前審査)に必要な書類

住宅ローンの審査には所定の書類提出が必要だ。仮審査では本審査ほど詳細な書類は求められない。必要な書類は本人確認資料、簡単な物件資料、収入に関する書類くらいだ。収入に関する必要書類は会社員や個人事業主などによって異なる。

共通で必要な書類は本人確認資料、借り入れのある人は償還予定表や残高証明書、借り換えの場合は借り入れ中の償還予定表や返済口座通帳などである。新築や借り換えでない限りは、物件のパンフレットやチラシなども求められる。

厳密にいうと購入物件や住宅ローンの借り入れをする銀行で多少異なるが、詳しくは以下の表を参考にしてほしい。

対象 仮審査の必要書類
共通 ・本人確認資料
(運転免許証、健康保険証、
パスポート、マイナンバーカード等)
・印鑑
・物件資料(パンフレット、チラシ、
物件概要書、価格表など)
給与所得者 ・源泉徴収票
個人事業主や確定申告をしている人 ・確定申告書
法人代表者 ・源泉徴収票
・確定申告書
・法人の決算報告書
他に借入がある人 ・借入中の償還予定表または残高証明書
借り換えの場合 ・借入中の償還予定表
・借入中の返済口座通帳
(※筆者作成)

2.住宅ローンの仮審査(事前審査)と本審査の違い

住宅ローンの仮審査と本審査では審査項目が重複する部分があるが、本審査のほうが仮審査よりしっかりチェックされる。そのためより詳細な書類を求められる。それぞれの審査内容について詳しく見てみよう。

住宅ローンの仮審査(事前審査)で契約者の返済能力を確認

住宅ローンの仮審査では物件そのものではなく、契約者本人が返済を続けていけそうかを確認している。そのため仮審査は本審査よりも簡易的なものであり、提出書類も決して多くない。

もちろん本審査でも返済能力は詳しく審査されるが、そもそも収入に比べて住宅ローンが過大ではないかなどが重点的にチェックされる。

住宅ローンの仮審査に通ったからといって、借り入れが必ずできるわけではない。ただし基本的な返済能力に問題ないと判断されることで、不動産会社も契約を進めやすくなる。

住宅ローンの本審査で重視される項目

住宅ローンの仮審査に通過したら購入希望物件の売買契約を結び、その後は本審査を申し込む。住宅ローンの本審査では本人の返済能力以外にも物件の担保価値や健康状態まで詳しく確認される。

そのため住宅ローンの仮審査を通過しても本審査で落ちてしまうこともある。以下の表は主な審査項目とそれをチェックしている銀行の割合だ。割合が高いほど、どの銀行でも重視している審査内容であることを意味する。

順位 審査項目 チェックする金融機関の割合
1 健康状態 98.6%
2 借入時年齢 98.3%
3 完済時年齢 97.7%
4 担保評価 97.2%
5 勤続年数 95.7%
6 年収 95.6%
7 連帯保証 94.9%
8 返済負担率 90.7%
9 金融機関の営業エリア 90.3%
10 購入時の融資可能額(融資率) 79.6%
11 雇用形態 75.7%
12 借り換え時の融資可能額(融資率) 73.1%
13 国籍 68.9%
14 カードローンなど、ほかの債務の状況や返済履歴 63.1%
15 申込人との取引状況 47.2%
16 業種 29.1%
17 家族構成 21.7%
18 雇用先の規模 20.0%
19 所有資産 18.9%
20 性別 15.1%
21 その他 3.9%
(※国土交通省『平成30年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書』より筆者作成)

住宅ローンの本審査でどの金融機関でも健康状態を重視している。健康状態以外にも重視される審査項目は色々とあるが、健康状態が悪いと住宅ローンを融資できない可能性があるからだ。それを避けるためにも銀行から住宅ローンを借りるときは、団体信用生命保険の加入が必須になっている。

団体信用生命保険とは不動産専門の生命保険で、契約者が返済不能になったときに保険金で住宅ローンの残債をすべて返済してくれる。銀行の融資リスクをカバーするための保険であり、保険料は金利に含まれる。

3.住宅ローンの仮審査に落ちやすくなる3つの原因

細かい審査基準は銀行によって異なるので、同じ条件でも住宅ローンの審査に通過したり落ちてしまったりすることはある。住宅ローンの審査に落ちても結果の詳細は教えてもらえない。

ただし住宅ローンの仮審査の段階から落ちやすくなる要因は、主に本人の返済能力に関することだと言えるだろう。本人の返済能力に疑問を持たれれば落ちる可能性は高くなる。住宅ローンの仮審査に落ちた時に考えられる3つのケースを紹介する。

ケース1……指定信用情報機関に「異動」の記載がある

指定信用機関とは、消費者のクレジットカードの支払状況や消費者ローンの契約情報など信用情報が登録されている機関であり、CIC(Credit Information Center)やJICC(日本信用情報機構)が運営している。

信用情報はクレジットカードの申し込みやローン契約のときに企業から照会されるが、過去の支払いなどに問題があるケースでは契約を断られることもある。

信用情報のなかでも最も契約に影響を与えるのが「異動」情報だ。異動は、61日以上または3ヵ月以上の長期にわたる支払いに遅れがある場合に記載される。

信用情報に異動の記載がある場合は、どこの住宅ローンも通らない。異動情報は5年が経過するまで記載されている。その期間の住宅ローンの借り入れは、たとえ公務員や上場企業の会社員であっても不可能だ。

ケース2……過去に消費者金融から借入をして返済が遅れたことがある

消費者金融から過去に借り入れをしていた人は、住宅ローンの審査で不利になることがある。消費者金融の借り入れも信用情報に記載され、仮に返済遅れがなかったとしても情報が残っている間は厳しく見る銀行もある。住宅ローンの借り入れができないわけではないので、仮審査に申し込んでみて通過すれば本審査にも通る可能性は十分にある。

ただし延滞や一部のみしか返済できていない記録があると、住宅ローンの審査は急に厳しくなる。返済遅れは消費者金融の借り入れがあったこと以上に審査に影響する。心配な人は自分の信用情報を開示請求し、情報が載っていれば銀行で相談したほうがいいかもしれない。

ケース3……返済負担率の限度いっぱいで住宅ローン審査の申し込みをしている

銀行は返済を継続して実行できる契約者に住宅ローンを融資する。その基準の1つになるのが住宅ローンの返済負担率だ。返済負担率とは年収に対する年間返済額の割合のことである。住宅ローンの返済負担率は一般的に35%以内が目安になっている。

住宅ローンの返済負担率が35%超はもちろんだが、ぎりぎりでも返済が難しいと見られてしまうことがある。銀行ごとに返済負担率の上限目安をどこまでにしているのかは異なるが、年収によって個人ごとでも判断基準が変わる。大事なのは過大な借り入れをしないことだ。

いくら理想的なマイホームだとしても、住宅ローンの仮審査に申し込むときは返済負担率が過大ではないかなどを確認してから申し込もう。

4.住宅ローンの仮審査に落ちたときにすべき2つのこと

住宅ローンの仮審査に落ちてしまっても二度と物件が購入できないわけではない。対策はいくつかあるので以下を試してほしい。

住宅ローンの仮審査に落ちた要因を考え、ほかの銀行に申し込む

住宅ローンの仮審査に落ちた理由は説明されないが、物件自体に問題がなさそうであれば返済能力に疑問を持たれたと予想できる。その要因を解消できれば新たな住宅ローンを借り入れできる可能性も上がる。

信用情報に返済遅れの履歴があれば記録が消えるまで待つ必要があるだろう。現在、ほかの借り入れがあるのなら、全額返済することで対処できるかもしれない。自分の返済能力を超える借り入れになりそうなら、夫婦の収入合算で申し込む方法もある。

このように住宅ローンの仮審査に落ちた要因をつぶし、ほかの銀行で再審査をしてみよう。

フラット35を利用して住宅ローンを借りてみる

どうしても銀行の住宅ローンが借りられない場合は、フラット35も検討しよう。フラット35は住宅金融支援機構が全国の金融機関と提携して提供する全期間固定金利の住宅ローンだ。銀行独自の住宅ローンより諸経費を抑えやすいといったメリットがあるほか、住宅ローンの審査にも通りやすいとされている。

もちろんフラット35でも本人の返済能力は審査される。ただ一定の要件を満たした物件が融資の対象であり、人物よりも物件重視で審査される。銀行の審査に通らなかった人でもフラット35なら借り入れできる可能性があるので、申し込む価値は十分にあるだろう。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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