FXのスプレッドは、FXを行う際の実質的な取引コストである。スプレッドは、FX会社によって扱いや最小値が異なり、また大きく変動するタイミングなどがある。そのため、スプレッドの特徴や留意点について知らなければ大きな損失を被る可能性が高い。

今回はFXのスプレッドについて詳しく解説する。

FXのスプレッドとは?

FXのスプレッド
(画像=PIXTA)

まず、FXのスプレッドの概要を説明する。

FXのスプレッドは通貨ペアの「買値と売値の差」

FXのスプレッドは、ある時点でFX取引をする際の買値(ASK)と売値(BID)の差を意味する。

FXは通貨ペアごとに必ず買値と売値、2つのレートが提示されている。新規・決済ともに買いを行う場合は買値を、売りを行う場合は売値を見るのが基本である。

例えば、ドル円のレートであれば「買値1ドル=100.10円、売値1ドル=100円」のように、買値と売値のレートが別々に提示される。この場合、買値と売値の差(100.10円―100円=0.1円)がスプレッドとなる。

流通高の高い通貨ペアほどスプレッドが狭くなる傾向にある

FXでは、ドル円のみではなく、ユーロ円やユーロドルなどさまざまな通貨ペアで取引を行うことができる。

スプレッドは通貨ペアごとに異なり、一般的に流通数の少ない通貨が含まれる通貨ペアほどスプレッドが高くなる傾向にある。

世界でもっとも流通量の多い通貨は「アメリカドル」で、その次に「ユーロ」「日本円」と続く。そのため、通貨ペア「ドル円」や「ユーロ円」、「ユーロドル」などのスプレッドはほとんどのFX会社で比較的狭くなる傾向にある。

逆に「トルコリラ円」や「南アフリカランド円」のように、流通数が少ない通貨ペアはスプレッドが広くなる。

FXのスプレッドは取引にかかる「取引コスト」

FXの魅力の一つとして「株式などとは違い、基本的に取引手数料がかからない」というポイントがあるが、スプレッドが実質的な取引コストになる。

FX会社が提示する為替レートの決まり方

FX会社は、各社で採用している「カバー取引先銀行」がインターバンク市場の実勢外国為替レートをもとに提示している為替レートを参考に、各通貨ペアの買値と売値を決定して顧客に提示している。

FX会社が顧客へ為替レートを表示する際、単純にカバー取引先が提示したレートを表示するだけではなく、ある「一定の額」を加減して売値と買値を決めている。この「一定の額」によりスプレッドが生じ、FX会社は実質的な手数料として利益を得ているのだ。

スプレッドが「取引コスト」になる仕組みを解説

続いて、FXでトレーダーがスプレッドを取引コストとして負担する仕組みを解説する。

例えば、買値1ドル=100.10円で新規に買い注文が成立したとする。ここで、スプレッドが0.1円の場合は売値が1ドル=100円だ。

買いの新規注文をしたトレーダーは、売値で売り注文を行うことになるので、1ドル=100.10円でドル円を買った時点で、0.1円の含み損が建玉に発生していることになる。

この「含み損」が発生することが、トレーダーがスプレッドを取引コストとして負担していることを意味するのだ。

なお、スプレッドは「取引コスト」として考えるべきではあるが、建玉を決済する時点で確定した損益に含まれているため、税務申告をする際は特にスプレッドを考慮して申告する必要はない。

FXのスプレッドによる「取引コスト」の計算方法〜クロス円の場合〜

FX取引において、具体的にどのくらいスプレッドによる取引コストがかかるのか計算する方法について、通貨ペア「ドル円」を例に解説する。

なお、ここで紹介する計算方法は「ユーロ円」や「豪ドル円」などの、円が通貨ペアに含まれる「クロス円」であれば同様に利用できる。

「スプレッド0.3銭」の場合にかかる取引コストは?〜ドル円の場合〜

スプレッドによる取引コストは「通貨数×スプレッド」により算出できる。

例えば、スプレッドが0.3銭であるドル円を1万通貨取引したとする。0.3銭は0.003円なので、1万通貨取引した場合は、取引が成立した時点での含み損は「0.003円×1万通貨=30円」となる。

つまり、スプレッド0.3銭で1万通貨の取引をした場合のスプレッドにより生じる取引コストは30円と言える。

「スプレッド0.3銭」と「スプレッド0.3pips」の違い

ここで併せて覚えておきたいのが「pips」というワードだ。

FX会社によってはスプレッドを「0.3銭」ではなく「0.3pips」と表示する場合がある。「pips」はFX取引において使用される為替レートが動く際の最小単位だ。

「pips」を使用するメリットとしては、異なる通貨取引同士でも比較しやすいことや、通貨取引の利益が同額でも「pips」の数値で損益の大きさを見て取れることなどが挙げられる。

例えば「円」の場合は、「1pips=1銭」となり、「ドル」の場合は「1pips=0.01セント」となる。

FXのスプレッドによる「取引コスト」の計算方法〜クロス通貨の場合〜

次に、「ユーロドル」や「ユーロポンド」などの円を含まない通貨ペア「クロス通貨」について、スプレッドにより取引コストの計算方法を説明する。

「スプレッド1.5pips」の場合にかかる取引コスト〜ユーロドルの場合〜

クロス通貨の場合は、スプレッドは「銭」ではなく「pips」で表示される。

スプレッドによる取引コストの計算方法は「通貨数×スプレッド×任意の円レート」だ。基本的な考え方はクロス円と同じだが、取引コストを円換算する必要がある。

例えば、1ドル=100円の場合にスプレッド1.5pipsである通貨ペア「ユーロドル」を1万通貨取引したとする。

1pips=0.01なので、この場合のスプレッドによる取引コストは「0.015セント×1万通貨=150セント」となる。1ドルは100セントなので、1.5ドルと言い換えることもできる。

最後に、スプレッドによる取引コスト1.5ドルに1ドル=100円をかけ算することで、円換算の取引コスト「150円」が算出される。

クロス通貨のスプレッドによる取引コストは円レートに影響される

以上からも分かるとおり、クロス通貨のスプレッドによる取引コストは、円レートによってその大きさが変わる。

先に挙げた例ではスプレッド1.5pipsで1万通貨の取引を行った場合、1ドル=100円ならスプレッドによる取引コストは150円だった。

しかし、1ドル=90円になればスプレッドによる取引コストは135円に下がる。逆に1ドル=120円になるとスプレッドによる取引コストは180円に上がる。

FXのスプレッドに関する2つの留意点

FX取引をするにあたって、スプレッド関連で注意すべきポイントを2つ紹介する。

スプレッドは変動する

FX会社によっては「ドル円スプレッド原則固定0.3pips」のような広告を出しているケースもあるが、あくまでも原則固定であり、必ずスプレッドが0.3pipsであるという意味ではない。

スプレッドは取引コストと同義であるので、実質的な手数料が市場の状況によって変わるということなので、スプレッドが広がったタイミングで取引をしてしまうと、通常より多くの手数料を負担してしまうことになる。

そのため、スプレッドが広がりやすいタイミングには取引を控えたり、建玉をいったん決済したりすることを考える必要がある。

なお、スプレッドには広がりやすいタイミングがいくつかあるので、後半で詳細を紹介する。

スプレッドにより即ロスカットとなる可能性がある

スプレッドを考慮せずに、少ない証拠金に対して大きな金額の取引を行ってしまうと、新規注文が成立して即ロスカットとなる可能性がある。

FXのレバレッジは「建玉金額÷(証拠金±建玉の損益)」により算出される(未約定の新規注文がなく、スワップポイントを考慮しない場合)。

例えば、証拠金を4万5000円入金した状態で1ドル=100円で通貨ペアドル円1万通貨を買ったとする。この場合、建玉金額は100円×1万通貨=100万円となる。

この場合、建玉金額100万円÷証拠金4万5000円=22.22倍なのでぎりぎりロスカットにはならないように見える。

しかし、仮にスプレッドが0.5円だった場合、注文が成立した時点で含み損5000円が発生する。

すると、レバレッジは100万円÷(証拠金4万5000円-スプレッドによる含み損5000円)=25倍となるため、新規注文が成立した瞬間にロスカットとなってしまう。

以上のように即ロスカットとならなくとも、少ない証拠金に対して大きな金額の取引をすると、証拠金額に対するスプレッドによる取引コストの割合が増え、ロスカットとなりやすい状況になるので要注意である。

FXのスプレッドが大きく変動しやすい3つのタイミング

FXのスプレッドはマーケットの状況により広がることがある。ここでは、スプレッドが広がる主なタイミングを3つ紹介する。

FX会社のサービス開始・終了時間

スプレッドは各通貨ペアの売買数量により変動する。特に、FX会社のサービス開始時間、サービス終了時間など、マーケット参加者が少なく流動性が著しく低下した場合は、スプレッドが大きく広がる可能性が高い。

同様に、クリスマス休暇中など世界的にマーケットが休場している場合もスプレッドは広がりやすい。

雇用統計などの重要な経済指標発表・災害や大統領選などのビッグニュース

FXの為替レートが乱高下するタイミングもスプレッドが大きく広がりやすい。

雇用統計や各国のGDPなど、重要な経済指標が発表されるタイミングは、マーケット参加者が増加し取引が活発的に行われ、為替レートが乱高下するケースがある。

また、世界的な災害やテロ事件、アメリカ大統領選など大きなイベントによる相場急変時にもスプレッドが広がる傾向にある。

市場が乱高下するタイミングは、大きな利益を得るチャンスでもある。しかし前述したとおり、スプレッドが広がることは、トレーダーが負担する取引コストが増えるのと同義であることを考慮したうえでトレード判断を下すべきである。

「スプレッド」で考えるFX会社の比較ポイント

最後に、スプレッドで考えるFX会社の比較ポイントを紹介する。

広告として提示されているスプレッドの狭さ

スプレッド0.3銭と0.5銭では、1万通貨の取引をした場合を考えると、取引コストが前者は30円で後者は50円となる。

スプレッドは取引コストと同義であるので、できるだけ狭いスプレッドを提示しているFX会社を選ぶべきだ。

スプレッドが「原則固定スプレッド」か「変動スプレッド」なのかをチェック

FX会社によって、スプレッドの扱いが「原則固定スプレッド」と「変動スプレッド」というように異なる場合がある。

「原則固定スプレッド」と「変動スプレッド」との違いは、「広告として提示している最小値スプレッドの維持率」だ。

金融商品取引法の「広告等の規制」にあるスプレッド広告表示に関する自主規制ルールによると、「原則固定スプレッド」の広告表示が妥当であるとする基準は、「提示したスプレッドの95%以上が広告表示の最大値以下であること」とされている。

よって「原則固定スプレッド」のFX会社のほうが、「変動スプレッド」のFX会社よりも提示されている最小スプレッドが維持される可能性が高い。

スプレッドの拡大率が低いほうが好ましいのであれば、「原則固定スプレッド」を掲げるFX会社を選ぶべきだろう。

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※ファイナンス・マグネイト社調べ(2012年1月~2019年12月)