面と向かっては気恥ずかしい言葉も、メールで積極的に使おう

コミュニケーション,藤山晴久
(画像=THE21オンライン)

新型コロナウイルス対策のため、テレワークを実施する企業がにわかに増えている。テレワークになると大きく変わるのが、これまでは顔を合わせていた部下とのコミュニケーションが、メールなどの文章中心になることだ。対面と文章では、同じことを伝えても、受け取る印象が大きく違う。軽く書いたつもりの言葉が、パワハラだと受け止められることも。そこで、コンプライアンスやハラスメント問題に特化した研修会社、〔株〕インプレッション・ラーニングの代表取締役である藤山晴久氏に、文章での部下とのコミュニケーションのポイントを聞いた。

「有事」のテレワークが、好かれる上司と嫌われる上司を2分化する

テレワークの問題として、意外な盲点になっているのが、孤独感と不安です。最近テレワークを導入した企業の方とお話をしたときも、50代の方なのですが、「寂しい」とおっしゃっていました。けれども、会社の人に「寂しい」とはなかなか言えないので、問題が表面化しにくいのでしょう。Zoomなどで画面越しに顔を合わせることはできても、やはり実際に対面するのとは違います。

この不安は、上司に心の余裕をなくさせて、部下指導に悪影響をおよぼします。マネジメントではなくコントロールをしようとしたり、「正しい」「間違っている」の2項対立で指摘をしてしまったり、思いやる心がなくなったりしますし、パソコンの接続がうまくいかないなど、環境の変化によるイライラから、感情的になりやすくなったりもします。

孤独で不安なのは部下も同じです。ですから、上司は部下に不安を和らげる言葉をかけなければなりません。新型コロナウイルスの流行という「有事」のときだからこそ、上司のちょっとした言葉が部下の心に刺さります。逆に、ここで感情的な言葉をかけてしまうと、上司としては大したことのない言葉だと思っていても、部下から嫌われたり、あるいは、パワハラだと思われたりしかねません。有事のテレワークをしている今は、好かれる上司と嫌われる上司が2分化する時期だと思います。

とりわけ新入社員や経験の浅い社員は、不安への対処になれていませんから、落ち込んだり、やる気をなくしたりしやすい。入社したら、そのまま自宅待機になった今年の新入社員は、なおさらです。若い部下とのコミュニケーションの際には、特に言葉に気をつけてください。

テレワークになると、コミュニケーションの中心がメールなどの文章になります。社会人になったばかりの人にとって、文章でのコミュニケーションといえばLINEですから、ビジネスメールの文章に慣れていません。メールの文章から受け取る印象が、上司の世代と新人の世代では違うことにも、注意が必要です。また、部下から届くメールの文面がおかしくても、成長には時間がかかるのだという前提で、急がずに指導してください。

ポイントは、感情ではなく、言葉の工夫から、コミュニケーションを始めること。この点で、テレワークの導入は、絶好の機会だと思います。面と向かって口で言うのは気恥ずかしい言葉でも、文章でなら書きやすいからです。

新型コロナウイルス対策としてテレワークをしている期間中に、部下に対して使う言葉を変えれば、部下からの印象が大きく変わり、流行が終息してオフィスで再び顔を合わせたとき、ニヤッとされるかもしれません。そのくらい信頼関係を強くしていただければと思います。有事の今、パワハラなどしている暇はないのです。