トヨタ自動車が、今期(2020年4月1日~2021年3月31日)の業績見通しを発表した。営業利益は、前期比79.5%減の5,000億円に留まる見込みだという。「世界のトヨタ」とも言われる世界的な大企業に対しても、新型コロナウイルスは甚大なダメージを与えていることがわかる。
営業利益が前期比79.5%減の5,000億円まで落ち込む予想
今期の業績見通しは、2020年3月期(2019年4月1日~2020年3月31日)の決算発表で明らかになった。今年3月末までを決算期とする2020年3月期は、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、大きなダメージにはなっていなかったようだ。
売上高:29兆9,299億200万円(前期比1.0%減)
営業利益:2兆4,428億6,900万円(同1.0%減)
最終損益:2兆761億8,300万円(前期比10.3%増)
しかし、新型コロナウイルスの影響を全面的に受ける2021年3月期の業績見通しは暗い。営業利益は前期比79.5%減の5,000億円まで落ち込み、売上高も同19.8%減の24兆円に留まるという。純利益については「合理的に算定することが困難」という理由で「未定」としている。
2021年の前半に業績が前年並みに戻る見込み
トヨタの今期の業績見通しが厳しいのは、新型コロナウイルスの影響で自動車の生産面・販売面に甚大な影響が出るからだ。
同社は決算資料において、新型コロナウイルスによる世界の自動車市場の底は「4月から6月」と予想しながらも、「当面は弱い動きが続く」と見込んでいる。その上で、「2020年の年末から2021年の前半」に業績予想は前年並みに戻ると仮定して算出した。
しかし、新型コロナウイルスによる不確定要素は多い。第二波、第三波が発生して終息が長引けば、業績は見通しよりも悪化する可能性もある。世界経済が不安定な中、為替相場の行方も気がかりだ。
1兆円の資金を調達し、不測の事態に備えるトヨタ
これらを受けて、トヨタは手元資金を厚くし、不透明な事業環境に備えている。2020年3月には、三井住友銀行と三菱UFJ銀行に融資枠の設定を要請したことが報じられた。合わせて1兆円規模だという。4月には、最大3,000億円の社債発行枠の登録を行ったことも明らかになっている。
決算発表では、当面の資金については特段の問題がないことが強調された。潤沢なキャッシュがあれば、不測の事態に対応できる。
トヨタだけではなく、国内有名企業の資金調達の動きも顕著で、キャッシュフローの改善を試みている様子がうかがえる。「コロナによる経営破綻」を是が非でも避けたいのは、どの企業も同じだろう。
民間調査会社の東京商工リサーチの調べによれば、日産自動車やANAホールディングスなども資金調達に動いている。判明している分だけで、コロナによる資金調達の総額は4兆円規模になるという。
ちなみに、トヨタの2020年3月期の取締役賞与は、総額で17%増だったことが明らかになっている。純利益が増加したことが反映された形だが、2021年3月期の決算は間違いなく厳しいものになる。取締役賞与の金額も、大幅に減るかもしれない。
トヨタのアフターコロナを見据えた舵取りは?
厳しい環境ではあるが、トヨタは次世代モビリティ技術に対する投資は続けていくことを宣言した。静岡で来年着工予定のコネクティッドシティ「Woven City」についても、「やり抜く」「やり続ける」と説明している。
技能と技術を有した人材を守ることにも言及しており、事業と人材の両方を守りながらコロナ禍を乗り越える姿勢だ。
コロナ禍をどう乗り切るかで、各社の将来は大きく変わってくる。手元資金を厚くしつつ先行投資を続けることが、トヨタのアフターコロナを見据えた舵取りと言えそうだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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