自らを「投資会社」と呼ぶソフトバンクグループが、新型コロナウイルスで甚大な打撃を受けている。2020年3月期の通期決算では1兆円以上の営業赤字となり、オンラインで行われた決算説明会では孫正義会長が厳しい表情で現状を説明した。

営業利益が1兆3,646億円の赤字

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(画像=glen photo/Shutterstock.com)

5月18日に発表されたソフトバンクグループの2020年3月期の連結業績を見ると、売上高以外は大幅な赤字に陥っていることがわかる。

・売上高:6兆1,850億9,300万円(前期比1.5%増)
・営業利益:マイナス1兆3,646億3,300万円
・純利益:マイナス9,615億7,600万円

営業利益は前期の2兆736億3,600万円の黒字から一転、赤字に転落した。1兆3,646億3,300万円という営業赤字額は、同社としては過去最大。純利益も前期の1兆4,111億9,900万円の黒字から赤字となり、非常に厳しい状況がうかがえる。

近年は投資先が大赤字になったWeWork問題などでダメージを受けていたものの、飛ぶ鳥を落とす勢いで事業を拡大してきたソフトバンクグループ。今回は、なぜここまで厳しい決算となったのだろうか。

SBGの主力事業で1兆9,313億円のマイナス

孫会長は、決算説明会で新型コロナウイルスを「未曾有の危機」と表現しつつ、同社の主力事業の一つであるソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)事業が、大きなダメージを受けていることについて触れた。

SVF事業単体の営業利益は、前期は1兆2,566億円のプラスだったが、今期は1兆9,313億円のマイナスに転落。つまり、前期のプラスが吹き飛んだことになる。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド、投資損失1,000億円

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、世界の有望ベンチャーやスタートアップに投資する10兆円規模の独立ファンドである。AI(人工知能)やライドシェア、自動運転、先進医療など、先進技術を手掛ける企業に投資をしているのが特徴だ。今回の新型コロナウイルスによって、投資先企業の評価額は下落し、投資損失が膨らんだ。

決算発表会での説明によれば、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業で投資後に価値が増加した企業は26社で、計1.4兆円の増加。一方で価値が減少した企業は47社にのぼり、計1.5兆円のマイナスによって、1,000億円の投資損失を出している。

特に、ライドシェア世界最大手の米Uber Technologiesやシェアオフィス会社のWeWorkの公正価値が減少したことが響いた。決算発表会で孫会長は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先企業について「15社が倒産する」と言及している。

1兆2,500億円の資金調達でコロナ禍を乗り切る

ソフトバンクグループは新型コロナウイルスの影響を受け始めた後、資金調達に動いている。最初にその動きが伝えられたのは、今年3月のことだ。1年ほどかけて資産を最大4兆5,000億円分売却することで、負債削減などに取り組むことを発表している。

また5月18日の決算説明会では、中国のアリババグループの株式を活用することにより、1兆2,500億円の資金調達ができたことが説明された。手元資金を厚くすることで、現在の苦境を乗り越えようとしているのだろう。

新型コロナウイルスは日本では感染者数が減少傾向にあるが、新興国では増加傾向にある。場合によっては、ソフトバンクグループはさらなる資金調達に動く可能性もある。

アフターコロナで新産業の台頭を期待

過酷な状況にいるソフトバンクグループだが、孫会長はコロナ禍の先に光を見ている。孫会長は決算説明会で、1929年の世界恐慌を引き合いに出し、自動車などの新産業が世界恐慌後の世界経済の回復を牽引したことを説明した。そして、今回の新型コロナウイルスが終息した後、同じように新産業が台頭してくる可能性を語ったのだ。

前述のとおり、ソフトバンク・ビジョン・ファンドはAIや自動運転などの先進技術を手掛ける企業に投資している。新産業に参入した企業がアフターコロナで成長すれば、ソフトバンクグループにとっては大きなプラスとなるだろう。

四半期ごとの決算説明会で、毎回スピーチに立つ孫会長。次回の決算説明会は、例年どおりであれば8月に行われる。状況がどのように変わったか、孫会長が何を語るのか、注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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