中長期の資産形成を目的にNISA(少額投資非課税制度)を始めて数年が経った2020年、コロナショックを経験し、今後の運用について不安な気持ちが芽生えている方も多いのではないでしょうか? そんな今だからこそ当初の目的に立ち返り、投資方針や投資手法を見直す絶好のタイミングとも言えます。本連載では今後5年でリターンを狙うために必要な視点をお届けします。
第2回: 何となく投資を始めた人が知っておきたい「GBAアプローチ」のすすめ
連載第1回では資産形成をするにあたって投資を継続することの重要性について伝えました。そうはいっても、何となく始めた投資もそれなりの目的・目標がなければ継続するのは難しいでしょう。ここでは、投資の目的・目標を持つことの重要性と、達成するためのアプローチ「GBA(ゴールベースアプローチ)」について紹介します。
連載第2回となる今回は、NISAを何となく始めて利益が出てしまった人は今後5年でさらにステップアップするために、そして現在成果が出ていない人やこれからNISAを始めようとしている人にも役立つ「今やるべきこと」をご紹介します。
とりあえず投資を始めた人も投資の目的について考えてみよう
2019年6月に公表された金融庁の資料で話題となった「老後資金2,000万円問題」で、国民の投資に対する意識は高まりました。
19年10月にカルチュア・コンビニエンス・クラブとSBIネオモバイル証券が、20~69歳の男女10,032名に行った『投資に関するアンケート調査』では、「お金を増やしたいと思っている人」の割合は全体で85.2%にまで達しています。その理由として多い回答の1位が「老後の生活資金のため」の63.4%、2位が「いざという時に使えるお金を持っておくため」の62.8%、3位が「生活のレベルを上げたいから」の42.0%でした(複数選択)。
「興味のある投資方法」についても複数選択で聞いたところ、1位は「株式投資」の33.2%、2位は「NISA」の23.1%、3位は「投資信託」の18.8%、4位は「iDeCo」の14.2%、5位は「外貨預金」の13.8%でした。
「投資に興味をもっている人」の割合は50.8%であり、もっとも投資に興味が高いのは30代で、年代が上がるほど投資に対する興味は低下していきます。30代は投資に対する興味が一番高い年代であり、特に株やNISAに興味があるという平均像が見えてきます。だからこそ、若いうちに投資に関する習慣を身に付けておきたいのです。
「とりあえずNISAを始め、結果もまあまあ」だった人の中で、投資の目的・目標が明確になっていて、さらなる目標達成のために何をすべきかを把握している人は恐らく少ないでしょう。
投資の目的・目標、必要な資金は、年齢、結婚、子供、住居形態などのライフプランによって大きく変わります。以下の「投資のためにクリアにしておきたい4項目」を参考にご自身で考えてみましょう。
投資のためにクリアにしておきたい4項目
1.投資の目的・目標
2.投資の期間
3.投資の目標金額
4.投資に回せる金額
目的を実現する逆算の発想「GBAアプローチ」とは?
次に、目標から逆算してアプローチ方法を決定します。このようなアプローチをGBA(ゴールベースアプローチ)といいます。たとえば、カレーライスを初めて作ろうと思ったら、いきなり野菜を切り始めるよりも、ゴールであるカレーライスをまずイメージします。「キーマカレー」だとしたらイメージに近い完成形をネットの画像で確認するのも有効でしょう。次に、「キーマカレー」の材料と作り方を料理レシピサイトで調べます。専門家や先人の知恵を借りることで、初めての人でも、材料も時間もムダにせず効率的に「キーマカレー」を作ることができます。
GBAもそれと同じことです。ビジネスプランの立案などによく使われるGBAは資産運用でも有効で、資産運用の本場である米国でも広く取り入れられています。アプローチ手法を決めたら、年に1〜2回メンテンナスを実施し、ゴールに対する進捗度を確認します。目標と現状の差分を把握し、今のままで最終的なゴールを実現できるかどうかに注目しましょう。あるいは、目的や目標を途中で変更することも全く問題ありません。
その上で、「毎月の積立金額の増額」「運用リスクを上げてみる」「運用期間を当初よりも延長する」などの具体的な改善案を考えます。次にそれらの改善案を実現するために改善策を考えます。例えば、「毎月の積立金額の増額」という改善案なら、「節約をする」「副業をして収入を増やす」「キャリアアップを通じて年収を上げるためにスキルを磨く」など、具体的な改善策を決めます。他の改善案についても同様に洗い出し、最終的に「実行期間」「コスト(費用)」「実行ハードルの高さ」といった観点から優先順位を決めます。
何でもかんでもやろうとすると途中で挫折してしまうので、優先順位が高い3つ〜5つを決めて、着手してみるといいでしょう。このように、具体的な行動案まで整理にすることで、振り返りがしやすくなり、何よりもやるべきことが明確になるのでモチベーションが高まります。
目的が明確になることで、投資をより「自分ごと化」できる
ポイントは、「自分ごと化」することです。今30歳の方が、60歳までの30年で老後資金の2,000万円を貯めるという目的なら、逆算するとそれほど無理をしなくても可能です。元金がゼロだとしても、「つみたてNISA]で月に3万円ずつを想定利回り年率3.8%で運用できれば、30年後には元金が1,080万円、運用収益が複利で929万5,000円、トータルで2,009万5,000円になります(コストは含まず)。あえてリスクを取り過ぎる合理性はありません。
今40歳の方が、60歳までに3,000万円貯めたい場合は、20年で3,000万円の資産を作ることが目的となります。その場合、月に5万円ずつ積み立てたとしても、達成するためには年想定利回りが8.2%必要です。少しハードルが高くなります。ある程度リスクをとる合理性もあるわけです。
目的の設定とGBAはライフプランの変更で適宜見直しを
今回は「投資の目的」についてお伝えしました。資産形成は逆算思考でアプローチすることで目標達成までの道筋が明確になります。
GBAを通じて「投資する意味があるのか?」と疑問に思った方も中にはいるでしょう。次回は「投資の意義」についてお伝えします。(提供:Wealth Road)