ファッション業界で世界NO.1の売上高を誇る「ZARA」を有するインディテックスは、これまでH&Mやファーストリテーリングと熾烈な戦いを繰り広げてきた。しかし、新型コロナの影響で売上高は70%以上落ち込み、1,000店舗超の閉店計画を発表。果たして、ZARAはこの苦境を乗り切れるのか?

「ZARA」で有名なインディテックスが約900億円の黒字から約500億円の赤字に

ZARA,閉鎖
(画像=rcfotostock/stock.adobe.com)

6月10日に発表された2020年2~4月期の決算報告によれば、同社の売上高は前年同期比で44%減となる33億300万ユーロ(約4,000億円)まで落ち込んだ。新型コロナウイルスの影響で、主力市場の欧州を含む各国での売上高が著しく減少したためだ。

最終損益は前年同期の7億3,400万ユーロ(約900億円)の黒字から一変、4億900万ユーロ(約500億円)の赤字に転落した。インディテックス社が赤字となるのは、2001年に同社が上場してから初めてである。

同社が展開するブランドの店舗の大量閉店計画も発表された。4月末時点の約7,400店舗のうち、1,000店舗以上を閉店するという。主力ブランドのZARAの閉店数は、250~300店舗になると見込まれている。

同社が展開する「プル&ベアー(PULL&BEAR)」と「ベルシュカ(Bershka)」も、それぞれ150店舗程度が閉店となる予定。閉店の対象は、不採算店舗や小型店舗などだ。

コロナウイルスで国内アパレル関連企業の倒産は35件に

新型コロナウイルスは、全世界のアパレル業界に深刻な影響を与えている。

6月に入って、インディテックス社の8割近くの店舗の営業が再開されているものの、客足がコロナショック以前の水準に回復するまで時間がかかるだろう。世界各国でコロナの第2波が起きる懸念もあり、依然として先行きは不透明だ。

日本国内でも、アパレル企業は苦しんでいる。民間調査会社の東京商工リサーチの調べによれば、6月26日時点の負債総額1,000万円以上の倒産件数は285件。そのうち「アパレル関連」は35件を占め、「飲食業」「宿泊業」に続いて多い。

特に老舗企業の「レナウン」の経営破綻は、消費者に大きな衝撃を与えた。新型コロナウイルスの感染が拡大する前から業績不振に陥っていたが、コロナ禍による売上減が決定打となった。

新型コロナウイルス感染症による死者が欧州よりも少ない日本でもこのような状況であり、主力市場が欧州であるインディテックス社の厳しさは容易に想像がつく。コロナ禍が同社の業績に与えるインパクトは、甚大と言えるレベルだろう。

10億ユーロを投じてEC売上比率を25%引き上げることを目指す

この苦境を乗り切るために、インディテックス社はEC部門のさらなる強化に乗り出している。2020年から3年間で約10億ユーロ(約1,200億円)を投じ、2022年には売上高における売上比率を全体の4分の1程度にまで引き上げたい考えだ。

インターネットで注文を受けた商品を、近隣の店舗から発送するという「ネット」と「実店舗」の融合を進めていくという。これまでもインディテックス社はEC部門のテコ入れに取り組んできたが、2019年のECの売上比率は全体の14%にとどまっていた。この数字を2022年に25%まで高めることができるか、注目したい。

EC部門の強化という観点では、今回のコロナ禍による不採算店舗や小型店舗の閉店は、ECシフトのきっかけになるかもしれない。平常時に事業構造を変えようとすると、社内の組織改革や意識改革に多大な手間と時間を要する。今後インディテックス社では、コロナ禍という外的要因によってECシフトがさらに加速するだろう。

新型コロナウイルスによるピンチをどう乗り越えるか?

企業の規模が大きければ大きいほど、消費者のニーズや事業環境の変化に対応しにくくなる。トップダウンで一気呵成に改革を進めることが難しくなるからだ。世界に展開するインディテックス社も、その難しさをよく知っているだろう。

ただし、前述のとおりコロナ禍による不採算店舗の閉店やECの強化は、半ば強制的に同社を改革に導くことになる。新型コロナウイルスによるピンチを克服し、さらなる成長への道筋を見出すことができるのか?インディテックス社の今後の事業展開に、引き続き注目したい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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