世界No.1の顧客管理ツールであるSalesforceの導入・開発・活用支援を中心としたビジネスを展開し、バラバラだった会社を成長路線に乗せたCEOの小野 裕之氏。業務をブラッシュアップするなかで見えてくる課題とその対応策、今後のビジョンをうかがった。(インタビュワー ZUU 熊田)
サンブリッジへの参画
―― 御社とその事業について教えてください。
弊社は現在Salesforceというクラウドツールをビジネスの基軸として、その利活用を通してお客様企業の働き方を変えていくお手伝いをしています。
私は2009年にサンブリッジグループに参画しましたが、当時サンブリッジは投資会社で、私が入ったのはその子会社であるサンブリッジソリューションズという事業会社です。Salesforceの事業は、その会社の1事業部でした。その後、グループの再編があり、サンブリッジソリューションズがサンブリッジと統合しました。
―― 最初にサンブリッジにジョインされたときのミッションはどんなものでしたか?
入社当初は2つのミッションがあり、一つはサンブリッジの他の子会社から継承していたマーケティングコンサル事業をどう再生していくのかというテーマ。またもう1つは新規にHRテック事業の立ち上げが検討されており、そちらの新サービスの企画開発に参画することでした。
1年ぐらいそれを続けておりましたが、HRテック事業が外資企業とのジョイントベンチャーとして分社独立することになり、結果としてこの新規事業からは離れて、前述のマーケティング事業の再建を中心にサンブリッジの既存事業全体に関わっていくことになりました。
バラバラだった会社を一つにまとめる
―― その立て直しをするうえで大きく感じられた課題は何でしたか?
当時従業員が60人ぐらいおりましたが、それぞれがバラバラに事業をやっている状態で、1つの会社になりきっていませんでした。これだと、やはり経営リソースの状態もバラバラで、どこに事業をフォーカスしていくのか見えませんでした。
当時の主要事業は、実はクラウドではなくSI事業でした。それ以外にもデータマイニング、セキュリティ、オンラインパブリッシング等の事業が展開されておりましたが、これらがまったく相互シナジーのない形で動いていました。その中の1つが今の主力事業であるSalesforceを軸としたクラウド事業でしたが、結果そこにリソースをフォーカスさせることにしました。
―― 勝ち筋というか、ここに資本を投下すると決断したときの、ポイントはありましたか?
まさに、セールスフォース・ドットコム社は世界トップクラスのクラウドビジネスを生み出した企業であり、今であれば誰もが「ウチもやりたい」と思うようになっておりますが、当時はまだそこまでクラウドが一般化している状況ではありませんでした。しかし2009年のリーマンショックと、それから2011年の東日本大震災、2つの大きな社会的ショックによって逆にビジネスがスケールしたと感じております。
当時は多くの企業が経済的にダメージを受けたので、新しく仕組みを作りたくても作るコストも無ければ時間も無いということで、選択肢はもうクラウドでやるしかないというような状況が結果として生まれていたと思います。
あとはBCP(事業継続計画)ですね。今も言われていますが、まさに当時、東日本大震災では、弊社も自社のサーバがやられて大打撃を受けました。そのときもうこれをメインでやるしかないと痛感して、サンブリッジが事業会社になった12年以降からはSalesforceのビジネスに注力していきました。
自社でのSalesforce活用をとおして見えた業務の統合と分業の重要性
―― ビジネスラインを広げていくうえで、工夫された部分はありますか?
冒頭で申し上げましたが、最初にこの会社で取り組んだマーケティングのコンサルティング事業の立て直しがキーになったかと思います。当時弊社のSalesforceのビジネスは営業支援(SFA)や顧客管理(CRM)の構築が中心で、マーケティング領域との接点は少なかったのですが、今後はこのマーケティング機能とSalesforceのSFA/CRMとの連携が必要になっていくのではと考えるようになり、そしてこれが現在のマーケティングオートメーション事業を始めるきっかけになりました。
あとは2011年の末からSmartVisca(スマートビスカ)という名刺管理のソリューションを始めていたのですが、これもSalesforceに正確なデータ投入をするための道具として連携させて、すべて顧客接点をつなげて1つのソリューションという形で提供しようと考えました。
―― クラウドツールは特に移り変わりが激しいですが、そういったもののビジネス展開において意識していることは何ですか?
はい、弊社はドッグフーディング、まずは自社での利活用を重視しております。というのも、2012年に事業会社として分社独立したときというのは、やはり弊社自身もSalesforceを使用していましたが、プロジェクト管理で使っていただけで、本来の使い方ができておりませんでした。
つまり社内のデータを一元化するために導入していたものの、名刺管理と、メールマーケティングのツールを統合することなく、各部署バラバラの状態で使われていたんです。しかしこの状態では生産性を向上させることは難しく、Salesforceを導入している意味がなくなってしまいます。
そこで、自社内での顧客データ統合を推進することになりました。まずは、社内にタスクフォースプロジェクトを作り、各部署からSalesforceの活用を進めていきました。
最終的にはお客様のステータスや、定義をキチっと一元化し、運用できるように組織に変えてデータを統合しました。今これをやるためのノウハウ本が流行っていますが、我々は2015年からそういった取り組みにチャレンジしておりました。