Salesforceの自社展開
―― 最先端のシステムを導入していくうえで、これらの知識を絶えずアップデートしていくような仕組みが必要だと思いますが、その辺の工夫はありますか?
そうですね、弊社は元々オーナーがアメリカ人ですので、シリコンバレーの情報が比較的入りやすい環境にはありました。グループには、コンカーやマルケトなどの海外で成功しているクラウドビジネスを日本に持ってくるチームもあり、そういったシステムのトレンドを掴むのはどこよりも早くできたと思います。
ただやはり日本は商環境が違いますよね。ですから、その商習慣に合わせて、ローカライズというか、メソッドを考えないといけないと。実は名刺管理ツールは、そういった経緯で生まれました。
米国ですと文字はアルファベットだけなので、名刺はOCRだけでも読み込めてしまいますし、そもそも名刺交換の文化がありません。反対に日本の法人営業は、やはり名刺交換が顧客管理に非常に重要な役割を果たしています。当時はまだウェブからの問い合わせで、何千もリードが来るという状況でもなかったですからね。
しかしその名刺データをSalesforce上でうまく活かそうと思っても、それに適した名刺管理ツールがありませんでした。お客さまからのご要望もあり、それならば自社で作って、正確に顧客情報を入力するためのツールとして、名刺管理ツールSmartViscaのサービス提供が始まりました。
―― 組織運営における新しい仕組みを、自社で効果検証的に取り組む場合、どのように進めたのでしょうか?
まず対策としては、自社のコンサルタントのエースを社内プロジェクトに登用しました。彼らは通常はお客様の対応を行っているので自社の対応はなかなかできませんが、優先順位を変えて社内の改革に手をつけられるように体制を変えたことがよかったと思います。トップセールスを、営業人材の育成のために専門の部署として機能してもらうみたいな感じです。
それは1つの大きなチャレンジだったと思いますね。それまではやっぱり、短期的なプロジェクト売上を稼ぐ方にどうしても目がいってしまいがちでしたから。
独自の人事で組織の拡大に対応
―― 組織を拡大するために新たに人を採用する場合、能力差が出てくると思いますが、その点御社での工夫などはありますか?
当社の場合は採用からある程度独自の視点で選んでいます。Salesforceを活用してのシステム構築では、コードを書かずに対応できる場合も多くあります。それよりも業務要件を把握できている事と、その業務要件をシステムにどう落とすかというトランスレーションができる事が必要になってくるので、文武両道というか、文系理系のど真ん中ということが、一つの採用基準になっていますね。
そして今回新型コロナの一連の動きのように、やっぱり世の中どう変わるか分からないので、変化に耐えられるかどうかも大切です。「強いものが勝つ」じゃなくて、「変われるものが勝つ」という発想ですね。
あとはそういった基準をクリアした人たちが、Salesforceの知識をつけたあと、それをどうお客さまの課題に提供していけそうかという部分です。だからスキルがあるかないかでは採用していません。オンボーディングまでの育成のところは力を入れていくというような体制を作ってきておりますので、それを前提としたポテンシャル採用です。
―― 社員が増えてくるなかで、1人1人の適性を見極めパフォーマンスを最大化してもらうために何か工夫はありますか?
経験というか、試す機会が無いと実際の適性はわかりません。例えばとある部門で入社した人材が充分なパフォーマンスを発揮できなかったとしても、他の部門に異動したら成功したなんてよくある話ですよね。だから人材のローテーションや、適材適所に配置することを意識しています。
異動はやっぱりそのときそのときタイミングもあるんですけど、キャリアを重ねるうちに考えも変わってきますし、個々人の意思もありますよね。うちではマネージャーとの1 on1を、隔週ぐらいのペースで全社員がしています。そこで現状の満足度であるとか、どれだけ納得してやっているかなど、そういったパフォーマンスを見ながら、異動についても考慮していきます。
そしてここ数年ですが、人事組織企画室という1つの独立した組織を作って、権限を持たせています。そこで研修であるとか、人材育成系をガチッとやってもらっています。人事に関してはなかなか緊急性がないので後回しにしがちなのですが、短期的な収益を稼ぐところだけに焦点当てているとやっぱり組織として強くなれないと感じます。