(本記事は、小島 拓氏の著書『融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資』幻冬舎の中から一部を抜粋・編集しています)

インカムゲインが不足している

融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資
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早い話、家賃収入よりも出て行くお金のほうが大きく、給料からの持ち出しになってしまうような物件です。あえてレバレッジを利かせないで融資期間を短くするスタイルもありますが、老後の支えとして長期(30年など)ローンで購入したにもかかわらず、毎月のキャッシュフローがマイナスになっているのなら、それは失敗物件といえるでしょう。

こうした物件を所有していると、急な修繕が発生したとき、キャッシュフローのプールがないので、出費に耐え切れなくなる可能性が高いものです。

例えば、入居中に配管から水漏れが発生したら至急の対応が必要です。業者を派遣するにもコストがかかりますし、修繕箇所が配管だとすれば、まとまった金額がかかります。

緊急対応が迫られるものには、電気・ガス・水道などインフラの故障、雨漏り・キッチン・トイレ・洗面所など水まわりの故障、エアコンの故障などが挙げられます。緊急対応となれば相見積りを取って業者を選ぶことなどできませんから、工事の費用は高くつきがちです。

こうした事態を想定し、あらかじめ修繕計画を立て、その費用を積み立てておければよいのですが、それができない場合はキャッシュフローから捻出することになります。しかし、空室が続いてインカムゲインがない物件であれば、必然的に給与からの持ち出しとなるのです。

ほかにも、10年以上同じ入居者が住んでいたファミリータイプの部屋が退去になったりすると、原状回復工事(部屋を元の状態に戻す工事)に数百万円かかることもあります。

もし、所有物件がRC造のファミリータイプで、各部屋50㎡を超えるようであれば、まとめて複数戸の退去が発生することが大きなリスクとなります。この場合も、かなりの出費を覚悟しなくてはなりません。

資産状況のエビデンスが偽装されているような場合、自己資金がまったくないのに物件を買ってしまった人は多くいるはずです。これが新築区分マンションなら購入直後に大きなトラブルが発生するリスクは低いのですが、地方のRC造物件、中古アパートだと、直後でも予想外の出費で天国から地獄へ一気に落ちてしまう危険があるのです。

スルガ銀行から融資を受けて1億円程度の物件を買った場合、ファミリータイプで利回り10%ほどであれば、金利は高くても毎月20万円程度のキャッシュフローは出ます。しかし、ファミリータイプだと退去の際の出費が大きく、実はほとんどお金が残っていないケースも珍しくありません。

そもそも地方と都心では競争する相手の属性が違います。都心では投資家がライバルになることが圧倒的に多いのですが、地方では主に地主がライバルです。相続税対策のためにハウスメーカーで物件を建てているため収益率は高くないものの、土地代がかかっていないわけですから、投資家よりも価格競争の面では強いといえます。

昨今は物件の供給過剰により、ただでさえ少ない入居者の奪い合いになっています。このままの状況が続けば、投資家のほうがついていけなくなる可能性はより高くなります。

融資地獄 「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資
小島 拓
1983年、東京都生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、不動産投資会社勤務を経て、2012年に独立し起業。2018年1月には業界の健全化を図る目的で、一般社団法人首都圏小規模住宅協会を発足。代表理事に就任。『「融資地獄」行き予防サロン』を設置して投資家の無料相談を受け付けるなど、あくまで公平・中立な立場から各方面に提言を行い、業界の健全化にむけて活動している。主な著書に『不動産会社が書けない「有名大家」の裏話』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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