(本記事は、小島 拓氏の著書『融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資』幻冬舎の中から一部を抜粋・編集しています)

高利回りの中古アパート

融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資
(画像=hyejin-kang/stock.adobe.com)

地方や郊外にある中古の木造アパートは、安価で高利回りということもあり人気を集めています。しかし、ここでも「買ってはみたものの、想定していた儲けが出ない」というサラリーマン大家があとを絶ちません。

具体的には、地方で利回り15%の中古アパートを買ったものの、不良入居者に家賃を滞納されているため、想定どおりの収入が得られないのです。いくら高利回りでも、家賃が入らなければ絵に描いた餅です。

また、古い入居者のなかには賃貸借契約書がないような人もいますし、家賃滞納をした入居者が夜逃げをする、ゴミ集積所が荒れ果てるなど、購入時点で解決の難しいトラブルが発生していることもあります。

普通に考えて、安く売られているということは、その物件に何らかのリスクがある可能性が高いわけです。順調に運営できていれば、わざわざ売る必要はないからです。目の前の利回りだけにつられて購入するのはとても危険です。

そもそも築古のアパートは融資付けが難しいものです。2〜3年前であれば、政府系金融機関である日本政策金融公庫が融資を出していましたが、最近はその門戸も固く閉ざされています。

もちろん、こうした物件に融資を付けるノンバンクなどもありますが、一般の銀行に比べて高金利ですから、収益を圧迫する可能性が高いのです。見せかけの高利回りに騙されて、実際には自転車操業状態になっているサラリーマン大家も珍しくないのが現実です。

郊外の新築アパート

地方高利回りはいわゆる「ボロ物件投資」ですが、新築アパート投資は千葉・埼玉・神奈川県など、東京都の近隣で行います。とくに神奈川県の横浜市を中心に多くの物件が新築されています。

新築の良いところといえば、建物はもちろん設備も新品ですから入居者にとって魅力ですし、オーナーからしても10年程度は修繕する必要がないことです。加えて木造アパートは法定耐用年数が22年ですが、新築に限っては30年の長期間融資が組める銀行も珍しくありません。

こうして書き出すと良いところばかりのようにも思えますが、もともと地主が相続対策で新築アパートを建てているエリアに投資家向けの新築アパートを建てているわけですから、需給バランスは完全に崩れています。

また、少しでも収益性を上げるために狭小ワンルームが多く、「狭くて住みにくい部屋」が大量供給されています。立地も住所だけは「横浜市」と聞こえが良いのですが、実際に駅から歩いてみると急坂の上にあったり、駅から10分以上もかかったりと競争力はないのが実情です。

こうした物件は新築時になんとか満室になったとしても、二巡目からの客付けに大変苦労をするケースが多いものです。空室が多ければ当然、月々の支払いは給与から持ち出しになりますし、家賃を下げて入居を付ければ利回りも下がりますから、売却のときのネックとなります。

融資地獄 「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資
小島 拓
1983年、東京都生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、不動産投資会社勤務を経て、2012年に独立し起業。2018年1月には業界の健全化を図る目的で、一般社団法人首都圏小規模住宅協会を発足。代表理事に就任。『「融資地獄」行き予防サロン』を設置して投資家の無料相談を受け付けるなど、あくまで公平・中立な立場から各方面に提言を行い、業界の健全化にむけて活動している。主な著書に『不動産会社が書けない「有名大家」の裏話』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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