(本記事は、小島 拓氏の著書『融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ 不動産投資』幻冬舎の中から一部を抜粋・編集しています)
「負動産」放棄にもコツがある!「任意売却」と「競売」の違い
銀行の担保に入っている不動産(「大家業」の事業用不動産やマイホーム)の換金処理について、「任意売却」や「競売」といった専門用語をここで分かりやすく解説しておきましょう。
任意売却とは、「任意」とあるように、不動産所有者(債務)の意思で売却することを指します。その際には抵当権者(債権者・金融機関)の承諾が必要です。
これに対して競売は、徹頭徹尾、抵当権者(債権者・金融機関)主導。不動産所有者(債務)はまったく蚊帳(かや)の外です。
競売手続きという強制的な換金処理手続きを実際に行うのは、裁判所です。
抵当権者(債権者・金融機関)や債権者が、担保不動産(債務者や連帯保証人が所有する不動産も含む)のオークションを裁判所へ申し立て、それが正当と立証された場合に、裁判所が主導してオークションを実施し、強制的に売却・換金します。その際は入札方式となり一番高い金額で落札されることになりますが、実際には時価の4〜7割程度での売却となるケースが多いです。
収益不動産の場合、売ろうと思ってもローンは残っていることが大半です。
例えば、物件価格は1億2000万円で、ローンが2億円だったらマイナス8000万円です。このように、「不動産の時価」よりも「残ったローンの額」が大きいこと、すなわち不動産を売却してもなお、ローン全額が返済できずにローンが残ってしまう状態を、「オーバーローン」と呼びます。
債務者が自分で任意売却の不動産業者を探してきて、銀行員と交渉するケースもあるでしょう。それでも前のケースで考えると、不動産を売っても8000万円の借金が残ることになります。
超インフレなどが生じて不動産価格が大きく上がり、3億円で売れたということであればいいのですが、現実的ではありません。